野党はなぜ「再結集」できないのか

池田 信夫

総選挙で野党は細分化されたが、立憲民主党の枝野代表は「再結集」に消極的だ。これを「筋を通すのはすばらしい」と賞賛するワイドショーのナイーブなコメンテーターもいるが、その原因は資金的な問題だ。枝野氏も含めて、現在の立民党所属の前議員は、法的には民進党員のままなので、政党交付金の支給対象は民進党である。

彼らが来年1月1日の段階で交付金を受け取るためには、分派を結成したのではだめで、民進党が正式に分党しなければならない。枝野氏が野党を再結集しても、民進党の執行部が同意しないと、いったん民進党を解党する必要があり、それができないと分派には1円も分配されない。枝野氏には100億円といわれる民進党の資金を分配する権限がないので、彼が再結集を呼びかけても意味がないのだ。

これは1994年に政党助成法ができたとき、分派の乱立を防ぐためにできた規定で、1997年末に新進党が解党した原因もこれだった。当時は新進党から「公明」が分党する予定だったが、話し合いが紛糾し、小沢一郎党首が唐突に解党を宣言した。これは当時、彼が自由党に「純化」するためと説明されたが、平野貞夫氏によると「カネの問題だった」という。

公明が分派になると政党交付金が受けられないので、新進党がいったん解党してふたたび新進党を結成し、公明は別の政党として年内に届け出る予定だった。ところがその話し合いの最中に新進党の内紛が起こり、これについて小沢氏が説明しなかったため、新進党は解党したままになってしまった。彼はその直後に自由党を結成し、大部分の議員は自分についてくるだろうと思ったようだが、結果的には分党が相次ぎ、自由党は54人の小政党になった。

民進党は解党するしかないだろうが、立民党も希望の党も「選挙互助会」だったので、選挙後に再結集する意味はない。むしろ国政選挙は2019年までないので、立民・希望・無所属の3グループが分党し、1997年末のようにバラバラのミニ政党が乱立するのではないか。

それもいいかもしれない。今まともな野党は存在しないので、この機会に「リセット」し、国防や社会保障などのコアの問題で一致できる議員だけでミニ政党をつくり、徹底的に(国会の外で)政策論争をしてはどうだろうか。安倍政権が安定している限り、野党が離合集散しても大した影響はない。