ハリウッド級の芸能人権利擁護を:佐藤大和弁護士に聞く(後編)

2017年10月28日 06:05

近年、SMAPのジャニーズ退所騒動や、能年玲奈さんの芸名問題(現在は「のん」で活動)などで注目される日本の芸能界のトラブル。芸能界での法的ルール整備を提言して活動中の佐藤大和弁護士に迫ったインタビュー企画の後編では、新法制定を見据えた提言やアイドル・タレントの社会的役割について考えます(前編はこちら)。(企画制作・株式会社InStyle、編集協力・アゴラ編集部)

ハリウッド型の権利保護とは?

鈴鹿:公取委が適切に動くことも大切ですが、行政を動かすためには、このことにピンポイントでフォーカスした法律がないと難しいと思います。

佐藤:そうなんです。やはり僕は新しい法律が必要だと思っています。日本の法律では、書面がなく口頭だけでも契約は成立します。しかし、芸能界における契約書を作る際の判断基準となる法律があり、無効となる契約を作成させなければ、もっと事前に被害の多くは防げます。だからこそ、トラブルを未然に防ぐこと、事後じゃなくて事前の予防策として「立法」が必要だと考えているのです。この参考となるのが労働契約法や消費者契約法などです。欧米では俳優組合があったりエージェントやっていたりして、タレントさん一人一人がマネジメントをしてくれる人やエージェントを雇って自分を売り出すんです。

鈴鹿:なるほど、自分のマネジメントをしてくれる人やエージェントを雇うという契約をするわけですね?

それで、働きの悪かった契約を切れば良いと。スポーツ選手の例で聞いたことがあります。力のあるタレントさんや俳優さんは海外にも進出してどんどん活躍して頂けないものかと思うことがあります。エンターテインメントの海外への発信というのは、経済産業省もずいぶん前からしっかりと取り組んでいますし。SMAPが解散した時に、当時経済産業省の大臣だった世耕さんが「アジアでも非常に人気があり、今日もショックを受けたという報道が(現地で)ある。コンテンツのアジア展開にとって今回の解散は決してプラスにはならない」と仰いましたが、日本にとって大きな損失だと。

佐藤:ハリウッドでは芸能人のための労働組合が出来ていて、個人としてみんな自分の力を発揮する場として頑張っているのに。日本は事務所の力で成り立っている。法律家も国もファンもメディアも皆でしっかり手を組めば日本のエンタメは世界を席巻すると思っています。

鈴鹿:なるほど、ファンも成長しなければならない。今の形だと芸能事務所があって、そこにマネジメントする人たちがいて、タレントさんも来て、育てて、その人たちに一人のマネージャーさんをあてがって活動させているのですよね。

佐藤:僕は、今後は今の芸能事務所はハリウッドのようにマネージャーを派遣するマネジメント会社に発展し、マネージャーを育成する機関に発展するのではないかと考えています。そして弁護士はタレントさんのエージェントとなり、中と外をしっかり守ることができれば、実力の発揮できるチームができるかと。

佐藤 大和(さとう やまと):1983年生まれ。宮城県石巻市出身。レイ法律事務所代表弁護士。三重大学卒業後、司法試験に合格し、2011年に弁護士登録(東京弁護士会所属)。企業法務のほか、芸能・エンタメトラブル(多くの顧問先芸能事務所、タレント・アイドルを抱える)を担当。2017年5月、「芸能人の権利を守る 日本エンターテイナーライツ協会」(ERA)を発足。著書に『ずるい暗記術 偏差値30から司法試験に一発合格できた勉強法』(ダイヤモンド社)など。

震災で最注目:アイドルやタレントの果たす社会的役割

鈴鹿:佐藤さんのお話を伺っていると、想像を超えたスケールの未来が待っているようでワクワクします。

佐藤:夢や希望、笑顔、人生を励ますエネルギーを与えてくれるのがこのタレント・アイドルですから。

鈴鹿:私はSMAPが大好きで、何があっても彼らを思い出すと頑張ってこられました。SMAPに顔向けできないことはしない。誰かを恨んだり罵ったり心を汚すことは止めようと。佐藤さんはAKBのファンですよね。

佐藤:公言してもいいです。僕はAKBを愛してやまないです。AKBがいたから、今の僕があります。

東日本大震災で、津波で家流されて、祖母とか叔母を亡くして落ち込んでいた時、たまたまテレビをつけたら出ていたのがAKBでした。あんなに若い女の子たちがこんなに頑張っている。応援してくれている。涙が出るくらいうれしかったんです。

鈴鹿:この話しをAKBの方々が聞かれたら喜んでくださるんじゃないでしょうか。

佐藤:人生を支えてくれるのがタレント・アイドルだと。曲も音楽家もそうですし。SMAPさんもそうですけれども、人間の心を動かすんですよ。すごい影響力です。

鈴鹿:苦しい選挙でもSMAPの曲を聴いて励まされて。

佐藤:それで当選した?

鈴鹿:はい!当選した議員、数知れず(一同爆笑)。人知れずSMAPに守られて当選した人が何人も。震災の時には、SMAPだけでなく沢山のタレントさんが被災地に入って応援メッセージを届けていましたよね。

鈴鹿 久美子(すずか くみこ):株式会社InStyle代表取締役。政策秘書として6人の国会議員に仕え、様々なタイプの選挙実務を経験。2012年の総選挙を前に政策秘書を辞職し、秘書と議員のマッチングを図る日本で唯一の議員秘書専門人材紹介会社「議員秘書ドットコム」を創立。議員秘書の人材紹介、議員秘書養成、国会議員や立候補者のコンサルティングに従事する。

佐藤:熊本の時もですよね。

鈴鹿:熊本もです。「SMAP×SMAP」という番組の一番最後数十秒で、東日本大震災への募金を5人で「宜しくお願いします」って頭を下げるのです。私たちファンは、あの東日本大震災に対する彼らの思いを今もリレーのバトンのように預かっています。月曜日の午後11時5分前になると、「お願いします」と、Twitterとかインスタとかでもみんな流しているんですよ。折に触れ募金も続けています。

佐藤:アイドルの方々・タレントの方々の発信することは重要ですね。世の中の道しるべになっているじゃないですか。人を動かし、社会を動かし、国を動かしていく暖かなエネルギーになっている。だからこそ、彼らが頑張れるより良い環境をつくるってことが重要になってくるんです。

鈴鹿:「スマノミクス」ってご存じですか?

佐藤:もちろん、知っています。SMAPさんは、もの凄い経済効果を生み出し続けていますよね。「アベノミクスよりスマノミクス」と言われるほどです(笑)。でも、それはファンの方々が声を上げたから売れているんです。買うことでそのコマーシャルに出演しているタレントを応援しているのです。正に「購買運動」です。

鈴鹿:ファンの活動としては、番組のスポンサー宛に「SMAPのメンバーを起用してありがとうございます!御社の商品は必ず購入します」等と葉書を書いて投函したりホームページからメッセージを投稿したり。

佐藤:鈴鹿さん、さすが詳しいですね(笑)

鈴鹿:商品を買うことでタレントを起用したことが精巧だったとメーカーに知って頂くのはその起用されたタレントにとって次の仕事を左右する重要なことです。ですから、私の会社のPCは、私用のものも含めて全て富士通さんなのですが、それはかつてある方をコマーシャルで起用してくださっていたからなんです。

佐藤:木村拓哉さんじゃないですか。分かり易すぎます(一同爆笑)

鈴鹿:ですから、購入するたびに企業のHPから「かつて木村さんを起用してくださってありがとうございました。これからも機会がありましたら木村さんを宜しくお願いします。」とコメント入れます。

佐藤:(笑)。

「国民の声」が芸能界を変える近道!

佐藤:いま笑ってしまいましたが、ファンが声をだして行動する、その企業を応援することが、本当に芸能界を変える一番の近道だと僕は思っています。SMAPさんたちを守ってくれる素晴らしい企業じゃないかと。こういう活動そのものが日本の現状を改善していくために必要なのだと思います。

鈴鹿:なるほど。では、SMAPファンたちは大々的な国民運動をしている、ということですね。

佐藤:その通りです。企業にとっては大切なお客様、消費者です。国民の声でしか変わりませんから。僕は、タレントの垣根を超えた「芸能人のファン団体」を作ってゆくべきだと思っているんですよ。

鈴鹿:ファンの団体?

佐藤:例えば移籍をしようとしたタレントが次々と契約中のコマーシャルを下ろされるとか、視聴率も良く続いていた番組が急に終了になるとか、そういう時に声を上げるのは、視聴者、国民、ファンなんですよ。これが正に数の力です。ファンが、「ひとりのアイドルのファン」という垣根を越えて一致団結すれば、スポンサーは消費者である国民を無視することはできませんから。

鈴鹿:そうですね。いまのお話は「政治」が動く場面と構造が似ています。何かの問題を解決したいとき、有権者は立場や世代を超えて連携し、「世論」と言ううねりとなって永田町に意見を伝える。政治家は「1票」を持っている有権者を無視することはできず、その世論を有権者の望む形に近づけるべく働く。この国を動かすのは私たちである、という「国民主権」の実現ですね。

佐藤:そうなんです、主権在民。だから有権者、つまりファンを敵に回しちゃいけない、ということをスポンサーは改めて認識されるのでしょう。

鈴鹿:そうですね。タレントさん、スポーツ選手、個で活動している人たちのファンの人たちが、垣根を越えて手をつなぐ。そういう団体があると良いですね。

佐藤:ファンが一致団結する。「芸能」は、挫けそうなときのエネルギーであり、立派な文化なのです。

鈴鹿:9月22日に「新しい地図」の活動が発表され、ファンが一気に元気を取り戻しましたが、それまでの1年半に、地域で活動を続けてきたファンがいるのです。例えば、電車を貸し切ってSMAPって書いてみたりとか、メンバーの誕生日に楽しいイベントを企画したり、こういう活動は有効だということでしょうか。

佐藤:ファンたちが発信し続けることがとても大事かなと思います。そういう場をつくるというのが、ファンたちが守るような権利団体。何かトラブルがあった時にファンの立場からの意見表明が出せるような団体です。

鈴鹿:芸能やスポーツ選手のファンの方たちが手をつないで、彼ら彼女らが持っている素晴らしい魅力をもっと輝かせて、国民に生きる勇気と希望を与えることができる活動を続けて頂くために、ファンはみんな手をつないで支えていこうという、そういう団体が必要だと。本当にそれができると素敵ですね。

佐藤:これが僕たちのやるべきことだと思ってます。

鈴鹿:いま時代の流れが早くなっているので、もしかしたらオリンピックの頃にはできているかも?

佐藤:2020年までには動かしたいですよね。やはり、運命でしょうか(笑)。話しているだけで心が温かくなる。僕達のすべき仕事の一つなのかもしれないと、心から思います。一つずつ、着実に進めてゆけたらと思っています。

鈴鹿:はい。私まで暖かな気持ちになっていて嬉しいです。三方良しのwin-win-winとなるような未来が描けたら素敵です。まだ誰も見たことのないエンターテイメントができるのではないかと。今日はありがとうございました。またお話伺わせてください。

佐藤:ぜひ!こちらこそ、ありがとうございました。

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