麻薬様物質の社会問題化と米国路線、保安検査の厳格化

2017年10月27日 13:00

疲労困憊で羽田から飛行機に乗り込み、機内で熟睡したためか、全く時差ぼけがない。風邪薬の影響もあるのだろうが、食事後に一気に眠りに落ち、目覚めた時には到着まで2時間を切っていた。約束していた論文の見直しが機内ではできなかったが、時差ぼけがないので、昨日、今日と快調な生活を送っている。シカゴの天候はようやく平年並みとなり、最低気温はゼロ度が間近に迫っている。しかし、10月中には氷点下を切りそうにはなく、かなり温暖な秋が続いている。これまでならば、10月中に木の葉が飛び散り、緑も少なくなっているのだが、今年は、紅葉・黄葉に混じって、かなりの木々に緑の葉が残っている。

今日、トランプ大統領がオピオイド(麻薬様物質)依存症が危機的な社会的問題になっており、それに対する国家的な取り組みをすると宣言した。NIH(国立衛生研究所)長官のフランシス・コリンズ氏に、依存性の生じない効果的な鎮痛薬の開発と、すでに依存症になっている人たちに対する対策を講じるように指示したと言っていた。オピオイド依存症は犯罪にもつながり、社会的に大きな損失となっている。また、オピオイドの売り上げを伸ばすために、医師に裏金を渡していたのではという情報も流されている。困ったものだ。

そして、トランプ大統領関連で憂鬱になったのが、本日付けで、米国発着便の保安検査が強化されるという記事だ。荷物検査もかなり厳しくなり、すでに、一部の国からの便では、機内へのパソコンの持込みが禁止されているが、果たして、どのように強化されるのか?日本でも、米国内同様に、靴を脱いだり、ベルトをはずさなければならないのだろうか?

かつて、パソコンを立ち上げて作動することを示すように求められたことがあるが、こんなことをすれば更なる混乱は確実だし、出発時刻の3時間前に空港に行く必要があるかもしれない。段々と厳しくなり、今は全身のX線検査となり、それでも不十分で強化されるという。テロとのいたちごっこの戦いは果てしなく続いていくのだろうかと、いささかうんざりしてくる。

いたちごっこと言えば、がんと抗がん剤の闘いは、まさにいたちごっこだ。薬剤が効いたと一安心した瞬間、がんは進化して、再び、患者さんに牙を向いてくる。ひとたび、がんに罹患すると、手術をしても、抗がん剤が効果があっても、患者さんや家族は、数年にわたって心に鉛を抱えたようになってしまう。ましてや、治療法が限られ、命も限られていると宣告された患者さんや家族の心は凍てついたままとなってしまう。そんな凍りついた心に、暖かい言葉を囁きかけ、心を解きほぐすふりをして、騙し、お金をぼったくろうとする輩がいるのだから、世も末だ。

まともな形で希望を提供しようとしても、今の社会は、翼を失くした状況で、飛び立つことさえできないでいる。まるで、どこかの政党のようだ。そして、患者さんや家族のSOSの声が聞こえても、何もできないでいる自分が歯痒くもある。今週も、SOSが届いた。しかし、自分の責任であればできるかもしれないが、遠くから見ず知らずの方に、勝手なことを伝えるのも不見識だと思い、一歩が踏み出せなかった。

研究は個人や小さな集団で進めることができるが、医療の現場を本当に変革し、新しい医療を届けるために、そして、医療保険制度を維持させていくためには、いくつもの歯車をうまくかみあわさなければならない。もちろん、国としての取り組みが必須だが、個人レベルでの努力も不可欠だ。私も、一歩ずつ推し進めようとしているが、歯車が勝手に動いたり、錆付いたりして、思うように動かないのが現状だ。海外にいて、日本を変えようとするのが限界に来ているに違いない。


編集部より:この記事は、シカゴ大学医学部内科教授・外科教授、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のシカゴ便り」2017年10月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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中村 祐輔
シカゴ大学医学部 内科教授、外科教授

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