憲法7条の解散権は制約すべきだ

2017年10月28日 16:30

立民党の枝野代表が「憲法9条を議論してもいいが7条の解散権も議論すべきだ」と、テレビで表明した。彼の意見に共感することはめったにないが、これは正論である。世界的にみて、日本の国会議員は異常に短命だ。その原因は政権の都合のいいとき解散できる7条解散のおかげで、平均1年半に1回(衆議院は2年半に1回)も国政選挙が行われるためだ。

ところが野党は今まで、解散風が吹いても「常在戦場」などといって反対しなかった。それは自分たちが政権を取ったら都合のいいとき解散したいからだが、1994年の羽田内閣(総辞職)も2012年の野田内閣(追い込まれ解散)も、その特権を行使できなかった。

そもそも第7条の解釈には、昔から疑問が強い。これは次のように「天皇の国事行為」を定める規定であり、解散はその10項目のうちの一つとして列挙されているだけだ。

第7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。

  1. 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
  2. 国会を召集すること。
  3. 衆議院を解散すること。(以下略)

解散の決定については第69条で「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」と規定されているが、「解散は重要案件が否決されたときなどに限られると解すべきで、党利党略で行われる解散は不当である」(芦部信喜『憲法』)というのが通説だ。

問題は憲法で解散権を制約するメリットとデメリットのどっちが大きいかである。メリットは、国会が安定することだ。内閣不信任がない限り衆議院議員は4年の任期が保証されるので、選挙区を走り回るより政策立案にエネルギーを注ぐようになろう。今のように1期で1/3の議員が落選するハイリスクの職業には、まともな人材は集まらない。

デメリットは政権の都合のいいとき解散できないことだ。今回の総選挙も、希望の党の準備が整わないうちに解散する安倍首相の戦術が結果的には功を奏したが、憲法で解散権を制約すると、こういう解散はできなくなる。それは自民党政権にとってはデメリットだが、野党のハンディキャップを軽減し、政権交代を容易にするメリットもある。

要するに7条解散は自民党政権を安定させる選挙戦術であり、民意を正確に反映する機能も政治主導を保証する機能もない。ただ憲法改正が必要かどうかには議論があり、単に「憲法69条で定めるとき以外は解散できない」と国会法で定めてもよい。参議院とのねじれをなくすには、衆参同日選挙を慣行とする手もある。

しかし今まで与野党ともにそういう動きはなかったので、憲法を改正して第69条に(たとえば)「解散には衆議院の2/3以上の同意が必要だ」と定めることも一案だろう。少なくとも第9条のような感情論にはならないので、憲法論議は第7条から始めてもいいのではないか。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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