薬剤師の不労所得論に殺到した抗議に反論

2017年11月03日 06:00

無名の筆者に異常な数のコメント

ブログで「医療費を食う薬剤師の不労所得」(10月30日)を取り上げたところ、アクセス件数もコメント数も、普段の何十倍という異常な数にのぼりました。感情的な批判論が過半数で、批判されたことに怒り、既得権を守りたいという気持ちがありありです。一方、正攻法で問題点を指摘するコメントもあり、傾聴に値します。

高齢になるほど関心を持つ調剤薬局(医師の処方箋向け)、薬剤師については、これまでも何度か、疑問に思う点に言及してきました。その時はほとんど反応がなかったのに、今回は違いました。財務省、厚労省が18年度予算編成で、調剤報酬などの診療報酬の大幅削減に踏み切るようで、情勢がひっ迫してきたためでしょう。

ブログのコメントは実名、所属組織を明らかにしていません。どこの誰かが分からなくても、反論の論調が似ているところを見ると、多くが薬剤師関係者であり、組織的に動員をかけているのだろと想像されます。ブログの世界では無名に近い私にそこまでやるのは、既得権益が崩される強い危機感を抱いているからでしょう。

感情的な茶化したコメント目立つ

「さすが素人さん、ろくに取材もせずに、いい加減なことを書いたものだ」、「このような記事で筆者は報酬を得ているのか。それこそ不労所得ではないか」(ブログは無報酬です)、「記者というのは、自宅のパソコンで調べた程度の知識をもとに、実態も知らず書くのか」。感情的なコメントが全体の3分の2でしょうか。

私は毎月、循環器内科に通院しており、医師や調剤薬局の働きぶりをじっと、観察してきました。何年か前には、硬膜下血腫を発症し、頭部に穴を開け、血を抜き取り手術を受けました。その時の経験からも、患者の多くが接触する調剤薬局の仕事ぶりに大きな疑問を抱いてきました。

私には不整脈の持病があり、心臓病のベテランである大病院の院長にはお世話になり、医療行政についてよくご意見を聞いていました。製薬メーカーのトップだった経営者も友人です。医療機器を病院に搬入する会社経営者とは古い付き合いです。家系が医者一族という友人は医療関係に詳しく、参考になる話をしてくれます。

調剤していないのに調剤とは何か

先日、掲載したブログの主旨は、「薬局で支払う医療費のうち、薬剤師の調剤報酬、薬学管理料は3割程度に上る」、「医師の処方箋に従って、棚から取り出し、薬を患者に売る。薬も梱包され、調剤行為はしていない」、「手渡す際に、ご加減はどうですか、寒くなりましたから風邪に注意して下さいなど、話かける。患者の相談に乗っている形をとるためだろう」、などなどです。これは私の感想です。

知人の製薬メーカー関係者は、辛口の批評をしています。「調剤薬局で薬を手渡される時、その作用効果、副作用の説明など聞いたことがない」、「医薬分業になってから、病院、医院の近所に開設する門前薬局ともいうべき存在になった」、「この業態は薬業ではなく、立地条件で優劣が決まる不動産業になった」、「自民党に対する政界工作費も巨額である」、などなど。

医院に詳しい友人の話はこうです。「将来は、薬剤師の仕事はロボットが済ませてしまうことになろう。仕事の内容によるにせよ、6年制にしている意味はない」。

私は抗凝固剤のワーファリンを服用しています。医師の薦めで当初はバイアスピリンも併用していました。定期的に受けている別の医院の内視鏡検査で、「胃にびらん(潰瘍状のただれ)がある。この二つを併用すると、こうした症状がでがちだ」と指摘され、以後、バイアスピリンの服用はやめました。そうしたリスクについて薬剤師から注意を受けたことありません。医師の処方に従っているだけのようでした。

そもそもは薬剤師の職場確保

コメントの中には参考になる指摘もありました。元医療従事者と名乗る人のコメントです。「医薬分業が始まる当時、全国に4万人もの未就業の薬剤師がいて、かれらの救済策を含め、薬剤師会が総会決議をもって政府と交渉した。医薬分業は大義名分であり、実際は、一般国民向けでなく、業界向けの施策だった。かれらの職場確保につながる反面、患者は高い医療費負担を強いられることになった」。なるほど。

こんなコメントもあります。「薬学部を6年制にしたのは、看護学部を4年制にしたころだった。薬剤師の報酬は医師以下でも看護師以上というポジションを死守するのが薬剤師連盟の考え方だった。厚労族の橋本政権も動いた」と、いいます。

薬剤師本来の仕事の中には、「処方箋には恐ろしい間違いもある。何千もある薬のことや、他科のことまで把握している医師は少ない。多種類の薬の服用による相互作用もチェックする」などといいます。実態として、医師が上位、薬剤師は下働きの関係になっています。「医師の処方が適正化どうかチェックする権限をもっと薬剤師に持たすべきだ」。傾聴に値するコメントですね。

結論として使えるコメントは「医薬分業にしろ、医療行政は国民に向いていない。ジャーナリストなら問題の本質に切り込め」でした。「もっともこの程度のブログを書いているようでは、とても無理だろう」との、おまけついていました。御意、御意です。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2017年11月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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