「LIFE SHIFT」(リンダ・グラットン他著)が100年人生を唱えてから、老後の心配をする人たちが増えているように思います。
新聞や雑誌等で、盛んに「100年人生」というタイトルが出ていることも影響しているのでしょう?
しかし、同書では2000年代に生まれた日本人の平均年齢が100歳を超えるという試算を提示しているにすぎず、現在40代や50代の人たちの平均寿命が100歳になるという訳ではありません。
平均余命表(政府統計)を見ればわかるように、40歳男性の平均余命は41.96年で82歳くらいにはめでたく(?)死ぬことができます。
それでも「自分だけは特別」というバイアスが人間にはあるので、安心できない人がたくさんいることでしょう。
「一文無しで平均余命よりも長く生きたらどうしよう?」「公的年金はあてにならないし…」と考えるの、至極もっともなことです。
対策として、一種の「長生き保険」ができないかと私は考えています。
シンプル化するために、10人の40歳の男性がいるとしましょう。
平均余命を42年とすると、10人の男性は平均して82歳まで生きることになります。
もしかしたら、そのうち半分は82歳未満で亡くなり、残りの半分は82歳以上まで生きるかもしれません。
余裕をもたせて、85歳を基準として、10人全員が85歳もしくは死亡時まで毎月5万円の掛け金を支払います。
すると、全員が平均余命の82歳まで掛け金を支払うと合計額が4億9200万円になります。
82歳までに亡くなる人もいるので、とりあえず3億円としておきましょう。
基準年齢である85歳未満で死亡した人にとっては掛け捨てになり、85歳以上を生きた人はプールした掛け金(2億円近くにはなるでしょう)を毎月一定額もらえるという仕組みです。
生き残り組が5人だとすれば、一人あたり4000万円になります。
私は生命保険の知識が乏しいのでよくわかりませんが、大数の法則を適用すれば「平均余命プラス3歳」くらいで設定すれば、保険会社の利益も確保できるのではないでしょうか?掛け金をたくさん払うことのできる人はたくさん払って、長生きした場合の受取額を増やすこともできます。
ここで問題なのは、持病を持っている人たちも統計上の平均余命に含まれており、そういう人たちは決して「長生き保険」に加入しないということです。
健康に自信のある人だけが加入すると、当然平均余命は長くなります。それも加味すれば「平均余命プラス5」くらいに設定する必要があるのかもしれません。
そのあたりの計算は専門家にお任せするとして、「100歳までの準備が必要だ」と考えるのと「87歳までの準備で十分だ」と考えるのとでは「老後の資金」の使途も大幅に変わってくるでしょう。高齢者に偏在している金融資産を消費に振り向けることができれば、経済効果も大きくなるでしょう。
私は、職業柄寝たきりになった高齢者の遺言作成に立ち会ったこともあります。公証人に出張してもらって。
「自分の足で立つこともできないのに、こんなにたくさんの資産を持っているんだ。もっと自分の楽しみに使っておけばよかったのに」と複雑な気持ちになったものでした。
「多額の遺産を残すと、相続人を不仲にして弁護士を儲けさせるだけ」と、私は常日頃から言っています。
寝たきり状態で遺言書を書いた方の相続人たちも、案の定不仲になりました。私も細やかながら弁護士報酬をいただきました。本格的な相続争いを繰り広げれば、時間もかかるし弁護士費用もグンと跳ね上がります。
思いつきばかりの素人考えですが、上記の「長生き保険」。
専門家の方々にご検討いただき、有益なご指摘をただければ幸いです。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年11月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。