日米同盟って何?

2017年11月05日 16:00

首相官邸サイト:編集部

アメリカのトランプ大統領がやってきました。安倍首相は一緒にゴルフをして「同盟をもっと偉大にしよう」(Make Alliance Even Greater)と書いた帽子を贈ったそうです。この同盟というのは日米同盟、具体的には日米安全保障条約のことですが、普通の同盟とはちがいます。軍事同盟はお互いの国を守る約束ですが、安保条約にはそれが書いてないのです。

1951年に結ばれた安保条約の第1条は「アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍を日本国内及びその附近に配備する権利を、日本国は、許与し、アメリカ合衆国は、これを受諾する」と定めているだけで、アメリカが日本を守る義務も、日本がアメリカを守る義務も書いてありません。

アメリカは台湾や韓国などとは相互防衛条約(Mutual Defense Treaty)を結んでいますが、日本は憲法9条で戦力をもてないので、相互に防衛する条約が結べず、安全保障条約(Security Treaty)というあいまいな名前になりました。これは日本が戦争でボロ負けして占領されたあとだったので、最初はしょうがなかったともいえます。

これを対等な相互防衛条約に変えようとしたのが、安倍さんのおじいさんの岸信介首相でした。しかし当時のマスコミや大学の先生が「安保反対」の運動をしたので、1960年に改正された条約は、相互協力および安全保障条約(Treaty of Mutual Cooperation and Security)という中途半端な名前になりました。

第5条にはアメリカが日本を守る規定が入りましたが、それは義務ではなく「いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認める」というあいまいな表現でした。岸首相は義務を明文化したかったようですが、日本がアメリカを守れないので、アメリカは拒否したのです。

その結果、アメリカは日本のどこにでも基地を置けるが日本を守る義務はなく、日本は基地を提供するだけでアメリカを守らない変な軍事同盟ができ、それが定着してしまいました。これを「対米追従」と批判する人がいますが、日本は軍事的なリスクを負わないでアメリカの「核の傘」に入って得したのです。

アメリカから見ると日米同盟は、米軍が一方的に防衛義務を負う不平等条約なので、日本にもっと責任をもってほしいという話が根強くあります。トランプさんも大統領選挙のときは「日本は核武装してもいいから米軍は撤退する」などと乱暴なことをいっていましたが、大統領になってからはいわなくなりました。

それは在日米軍基地が安上がりだからです。日本政府は米軍の駐留経費を「思いやり予算」6000億円として負担していますが、これは駐留経費の70%です。米軍はヨーロッパなど他の国にも配備されていますが、こんなに負担している国はありません。他の国では相互防衛だからです。

日本は軍事的な「血」の代わりに財政の「金」で安全を買っているわけですが、これは軍事同盟としては変則的で、いざというときアメリカが守ってくれるかどうかあやふやです。たとえば尖閣諸島が攻撃されたら、米軍が助けてくれるのか、よくわかりません。

そういう問題をはっきりさせて集団的自衛権が使えるようにし、日米同盟を相互防衛条約に近づけようとしたのが安保法制ですが、また「安保反対」の人々がじゃまして、ますますややこしくなりました。それが憲法違反かどうかなどという論争には意味がありません。大事なのは、みなさんの命を守るにはどうすればいいかということです。

日米同盟が変な形になっている原因は憲法9条なので、安倍さんはそれを改正しようとしていますが、条約のゆがみを憲法で直すことはできません。逆にいうと「解釈改憲」で間に合うなら、憲法を改正しなくてもいいのですが、日米同盟の意味がわからない野党やマスコミが「安保法制は憲法違反だ」と騒ぐので、これをすっきりさせるには改正したほうがいいでしょう。

それより日米同盟がちゃんと機能するためには、制限の多い今の安保法制を改正して相互防衛に近づける必要があります。現代のミサイル戦は早ければ数日で終わるので、武力行使に「国会の事前同意」が必要な法律は、日本国民を危険にさらすのです。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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