ツイッターといえば、米トランプ大統領を直ぐに思い出す。同大統領はホワイトハウス入りする前から小まめにツイッターを発信してきたその世界のベテランだ。トランプ氏ほどツイッターを重要な政治メッセージの発信手段として利用している米大統領は過去いなかった。
ところで、140字の文字を駆使しているのは米大統領だけではない。バチカン放送独語電子版によると、世界に12億人以上の信者を有するローマ・カトリック教会の最高指導者、ペテロの後継者ローマ法王もツイッターを自身のメッセージやイエスの福音を配信する手段に利用し出してきた。今年12月12日でちょうど5年目になる。バチカンのツイッター時代の到来だ。そのパイオニアは前法王のドイツ人ベネディクト16世だ。
同16世が初めてツイターを利用し、最初のメッセージを配信する瞬間の写真が世界に流れた。世界の信者たちはその写真をみて時代の変化を感じただろう。宣教師が長い船旅でイエスの福音を携え、異国の地で宣教した時代があった。今は、宣教のために外地に赴かなくても自身の書斎からメッセージを送ることができる。よい時代を迎えているわけだ。
ベネディクト16世の退位後、南米出身のフランシスコ法王もその伝統を継続し、頻繁にツイッターを配信してきた。バチカン関係者によると、ベネディクト16世の場合、実験的な試みといった感じが強かったが、フランシスコ法王は140字のツイッターの世界を福音発信の手段と積極的に考えている最初の法王だという。
ローマ法王のツイッターのフォロワー(閲覧者)数は現在、9カ国言語のアカウントの合計が4000万人にもなる。フランシスコ法王は、ツイッターだけではなく、Instagram(インスタグラム)、フェイスブック、ユーチューブなども積極的に利用している。政治家のトランプ氏と共に、フランシスコ法王はツイッターの職人となっているわけだ。もちろん、米大統領やローマ法王だけではない。ソーシャル・メディアは今日、誰も無視して通れない世界だろう。
ソーシャル・メディアに理解がある法王が先月8日、スマートフォンを礼拝中に使用する信者の姿に我慢が出来なくなったのか、異例とも思えるほど厳しい口調で不満を吐露している。信者だけではない。神父や司教すらそのような“悪なる習慣”に染まっている姿が見られたからだ。外電は「フランシスコは礼拝中の携帯電話、スマートフォンの使用禁止を要求」と報じたほどだ。
フランシスコ法王は「モダンな通信機材を悪用してはならない。そられのネット手段を他者への攻撃や議論のために使用するのではなく、コミュニケーションの相互理解を促進するために利用すべきだ。そして霊的、文化的に成長する手段とすべきだ」と諭している。
全ての科学的・技術的発展はそれを享受する人間自身が規律と秩序を有していないとかえってマイナスとなる。モダンな通信手段もそうだ。フランシスコ法王はそういいたかったのだろう。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年12月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。