2018年版、ウィーン氏のビックリ10大予想では米国経済に強気維持

あけまして、おめでとうございます。
本年も、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
皆様にとって、2018年に幸多い年となりますことを祈念致します。

ウォール街のヨーダことブラックストーンのバイロン・ウィーン副会長が2日、米国の金融市場が2018年の取引を開始するに合わせ、ビックリ10大予想を発表しました。ウィーン氏にとって33回目となる今回は、以下の10項目を挙げています。一般の投資家が定義する”ビックリ=サプライズ”な出来事は30%の確率で起こること、ウィーン氏の場合は50%以上と定義していますが、さてどうなるのでしょうか?

1.中国が北朝鮮の金正恩委員長による核保有を容認できないとの結論に到達、中国は北朝鮮への燃料と食糧の供給を停止へ。北朝鮮は核開発プログラムの中止に同意するものの、現状の兵器は断念せず。

2.大衆主義、部族主義、政治的無秩序が世界で蔓延へ。英国ではジェレミー・コービン労働党党首が次期首相に就任し、スペインではカタルーニャでの混乱が継続する。一方、BREXITという経済的にマイナスな状況が欧州大陸で協力関係を強化させ、予想外のポジティブな結果をもたらす。

3.漸くドル高の展開へ。トランプ政権のビジネス寄り政策やレパトリを支えに、米国の実質GDP成長率は3%を超え、投資家はドル建て資産への関心を強める。一方、ユーロドルは1.10ドルまでユーロ安・ドル高の展開に。ドル円も、120円までドル高・円安が進行する。

4.米国経済は2017年より拡大するものの、投機マネーによる高騰を受けてS&P500は10%の調整を迎え2,300へ下落へ。高金利も調整の一因となる。ただ、年末には経済成長が4%ヘ向かうにつれて3,000台に乗せる

S&P500、2,300への調整相場入りを経て3,000へ上昇か?

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(作成;My Big Apple NY)

5.WTI原油先物価格は、80ドル台を回復へ。世界成長の加速に加え、エマージング国での予想外に強い需要が背景となる。米国内でのフラッキング(水圧破砕)での生産は失望に終わるほか、在庫が逼迫し、OPEC諸国は産油量を抑制し、ロシアをはじめナイジェリア、ベネズエラ、イラク、イランでの生産量も小幅増加させる程度に終わる。

6.インフレが懸念材料に。経済成長の一段の拡大に加え、商品先物相場の上昇もインフレを押し上げる。先進国での労働市場の逼迫が賃上げペースを加速させ、米国での平均時給は前年比で4%超えに達し、消費者物価指数は同3%を上回る

7.インフレ加速を背景に、政策金利も上昇する。FRBは年内4回の利上げを行い、米10年債利回りは4%ヘ向かう。ただし潜在的な金融市場編影響を懸念し、資産圧縮はごく緩慢なペースで進む。高利回り債のスプレッドが拡大し、株式市場のリスクに。

8.北米自由貿易協定(NAFTA)とイラン核合意は、トランプ大統領の破棄・撤退示唆にも関わらず、存続する。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)離脱をめぐっては世界で中国の影響力が台頭するにあたり失敗とみなすものの、アジア諸国に対する二国間協定の一段と推進させる。

9.共和党は、中間選挙で大敗し上下院での多数派から転落へ。有権者は選挙公約を遵守しないトランプ政権だけでなく、トランプ大統領のツイートに失望するなど、トランプ政権の信任投票と化す。

10.2017年10月に開催された第19回共産党大会で自身の権限拡大に成功した習近平主席は中国の信用問題に注力し、経済並びに雇用の鈍化にも関わらず企業の借入に制限を掛ける。中国の実質成長率は5.5%増へ減速するものの、世界経済の影響は限定的に。習主席は、信用問題の取り組みが持続的成長に必要と主張する。

以下は、ビックリ予想10選から漏れた”ありえそうなこと”6選となります。

1.投資家は欧州、極東、エマージング市場での業績が米国より良好であると認識するほか、米国以外の株価収益率(PER)の低さに注目。機関投資家のポートフォリオは、より国際色を増す

2.モラー特別検察官による2016年米大統領選に関わる捜査は、トランプ一家とロシアとの結託を証明できず失敗に終わる。

3.AIの普及が進む。サービス産業の雇用は自動化し、特に法律と金融の職のほか、ファストフードやヘルスケアで顕著となる。米失業率が4%割れを実現したにも関わらず、失業者や政府補助申請者の増加にエコノミストは頭を抱える。

4.サイバー攻撃が消費者信頼感に悪影響を及ぼし始める。大手銀は、サイバー攻撃により預金引き出しの3日間停止を余儀なくされる。多くの小売業機関が個人情報流出の憂き目に遭うなど、企業はシステム更新の必要に迫られる。

5.欧米の規制当局は、既存の小売業者や伝統的なメディア会社の圧力を受けて、ネット企業ヘの圧力を強める。アマゾン、フェイスブック、グーグルを対象に反競争的なビジネスへの捜査を開始へ。一般市民も、ネット企業ヘの権力集中を懸念し始める。

6.ビットコインの多大なリスクに配慮し、規制当局が取引を制限する。ビットコインには監視当局が存在せず、安全性や健全性に問題があり、償還請求ができず、サイバー攻撃のリスクに常に直面し、預金保険もない。

いかがでしたか?ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェース、ドイツ銀行と同じく、成長加速の側面から年内利上げを4回と予想してきました。インフレ上昇にも言及し、米10年債利回りが4%を超えると大胆な予想を展開しています。利上げペースと共にインフレが加速するなら、S&P500の調整相場入り見通しも、辻褄が合うというもの。ただ、それでも米成長率が3%どころか4%まで視野に入れているというのは、楽観的過ぎな気がしないでもありません。特に、中国も6%半ばの成長から5.5%へ鈍化を予想するとなれば、尚更です。ちなみに、2017年のビックリ10大予想でも米国経済に強気で3%成長、米10年債利回り3%乗せを予想していました。

注目は、米大統領選です。3%超の成長を視野に入れるものの、共和党の完全敗北を予想していました。2017年12月27日時点でのリアルクリアポリティクスでの平均支持率は民主党が49.1%、共和党が36.3%と共和党が後塵を拝するものの、上院の改選は民主党が23議席に対し共和党は8議席。仮に共和党が多数派を奪われれば、歴史的な大敗となること必至です。

さて、2017年の”ビックリ10大予想”の結果を振り返ると・・・1勝6敗3分けといったところでしょうか。少なくとも、2017年版において米国ではトランプ政権下でエネルギー関連規制が撤廃・縮小したほか、イランの産油量は増加傾向にあり、WTI原油先物価格は60ドル割れ維持したと言えます。毎年、果敢にも“ビックリ10大予想”を発表して下さるウィーン氏、今年の予想はどこまで的中するのでしょうか?

(カバー写真:Sam valadi/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年1月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。