イランで今、何が起きているのか

2018年01月05日 11:30

イランで昨年12月28日、同国北東部のマシュハドで反政府デモが起きてから1週間が過ぎたが、その抗議デモは今、イラン全土に波及し、デモ参加者と治安当局は各地で衝突し、これまで20人以上が死去したという情報が流れている。しかし、政情が比較的安定していると受け取られてきたイランでなぜ、反政府デモが生じてきたのかについて信頼できる情報は少ない。

▲イラン最高指導者ハメネイ師(ウィキぺディアから)

▲イラン最高指導者ハメネイ師(ウィキぺディアから)

独週刊誌シュピーゲル(電子版)は「イランは昨年、軍事的に成功した年だった。イラク、シリア、レバノン、イエメンなどでイランは軍事的支援を展開し、イランの最大ライバル、スンニ派の盟主サウジアラビアを守勢に追い込んだ。そのイランで今年に入り、情勢が悪化してきたのだ。地域紛争の状況が悪くなったのではない。イラン国内で反政府デモが発生してきたからだ。イラン当局は抗議デモがなぜ全土に拡大してきたのか、その原因、動機を掴み切れていない。外国のイラン問題専門家も同様だ」と報じている。

イランで2009年、同じように反政府デモがあったが、その原因ははっきりしていた。マフムード・アフマディーネジャード大統領(任期2005~13年)の不正疑惑に抗議するデモだった。100万人以上のイラン国民が路上に出て抗議した。

2009年の時は中産階級からエリート階級の国民がデモに加わったが、今回は貧困な国民が路上に出てきたという。イラン当局はデモ集会関連の報道を制限し、インターネットの接続や動画放映を禁止しているという。

反政府デモが始まって1週間が過ぎたが、どれだけの国民が参加しているかはまだ掌握できない状況だ。インターネットのビデオを見る限りでは数百人、多くて数千人と推定される。明らかに2009年の時より少ない。2009年の反政府デモは首都テヘランを中心に行われたが、今回は学生の抗議デモを除けば、テヘランは依然落ち着いている一方、地方都市で不穏なデモ抗議が続いている。

今回の反政府デモの特長は、2016年以降の国民経済の発展、制裁解除の恩恵を受けている中産階級や上層階級に属する国民は抗議デモに距離を置く一方、女性たちの姿が多く見られる。彼女たちはヒジャブ着用やスカーフの強制に抗議しているという。

抗議デモでは、「独裁者に死を」、「われわれはイスラム共和国を願わない」といった過激な政治的スローガンが聞かれるという。ホメイニ師主導のイラン革命(1979年)から約40年が経過したが、大多数の国民が政治的、経済的な恩恵を受ける改革はこれまで実施されてこなかった。

イラン政府は反政府デモの拡大に神経質となり、治安部隊はデモに武力を行使して取締り、反政府デモが首都テヘランまで拡大することを阻止している。2009年のデモは首都テヘランで発生し、当時、多くの外国人ジャーナリストが大統領選を取材していたため、デモの状況は即、世界に発信されたが、今回は地方都市で起きているため、国際報道機関は不在だ。これが1週間の反政府デモで20人以上の犠牲者が出た主因と考えられる。それだけではない。「デモ参加者は2009年の時に比べ、攻撃的だ。多くの都市で国家関連施設、警察署、消防署、銀行などを襲撃している。彼らの多くはもはや失うものがない人々だ」(シュピーゲル誌)という。

イラン当局は1990年代の学生デモや2009年の抗議デモの時と同様、今回のデモは外国勢力によって操られていると批判している。トランプ大統領はツイッターで「イラン国民は自由を求めている」としてイランに政権交代を要求している。

米国が今回の反政府デモの背後で暗躍しているかは不明だが、イスラム共和国打倒のチャンスは大きくない。その理由は、デモ参加者の目的がばらばらである一方、イラン当局は依然強力だからだ。治安部隊もイラクやシリアで戦争を体験してきたベテランが多い。同国の軍事は、イスラム共和国軍が約35万人、それとは別に、「イスラム革命防衛隊」(パースダ―ラ―ン、12万5000人)、その管理を受けるバスィージ(民兵部隊)は100万人と推定されている。

最高指導者であり、イスラム共和国軍の最高司令官ハメネイ師を筆頭に、監督者評議会(12人)、専門家会議(86人、任期8年)、「公益判別会議」(35人)など国家の重要機関は聖職者、イスラム教法学者や知識人によってほぼ独占されている。国民の選挙で選出される政治機関は大統領(任期4年、2期まで)とマジュレス(議会、定数290)、それに「専門家会議」だが、終身制の最高指導者ハメネイ師の意向に左右される点では他の政治機関と同様だ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年1月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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