1月3日のニューヨーク原油先物市場でウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は大幅反発となり、中心限月の2月限は前日比1.26ドル高の1バレル61.63ドルで引けた。中心限月ベースでは2014年12月初旬以来、約3年1か月ぶりの高値を付けた。この水準は新たなシェール掘削が正当化されるために必要とされる水準の61ドルを上回っているとされる。
ここにきての原油価格の上昇は、米北東部を寒波が襲っているためにヒーティングオイルの需要が高まったことなどによる短期的な要因も背景にあるものの、世界的な景気拡大による需要増加などが大きな要因である。
それだけでなく過剰供給の緩和も当然ながら背景にある。石油輸出国機構(OPEC)とOPEC非加盟国のロシアなどの主要産油国による協調減産の効果が出ている。また、イラクのルアイビ石油相が、世界の原油在庫が減少している一方で、中国とインドの需要が増加していることから、2018年に原油価格が上昇すると楽観視していると述べていた(ブルームバーグ)。
WTI先物のチャートをみるとすでに4日に62ドル台を付けて、節目とされる2015年につけたの目先の高値を抜けてきた。ただし、原油の需要が急激に増加したわけではなく、ここにきてややショートカバー的な動きも出たとみられ、いったんはこの水準が目先高値となる可能性も高いとみている。
それでも、もしこのまま原油先物の上昇基調が止まらないとなれば、次の節目は100ドルあたりまで特にない。チャートを見る限りにおいてWTIの100ドル台回復は十分ありうる。ただし、シェールオイルとの兼ね合いなどもあり、WTIが100ドル台を回復する理由はいまのところ見い出せない。それでも2017年12月の世界の製造業購買担当者景気指数(PMI)が、約7年ぶりの水準になるなど、さらに世界的に景気が拡大する可能性もあり、WTIの100ドル台回復が絶対にないとも言い切れないことも確かである。
景気の回復とそれに伴う原油価格の上昇となれば、日本の物価にも当然影響が出てくる。日銀の物価目標である消費者物価指数(除く生鮮食料品)は、日銀の金融政策などよりも原油価格の影響を受けやすい。原油価格の上昇などを背景に11月の消費者物価指数(除く生鮮食料品)は、すでに前年比プラス0.9%まで上昇してきている。
ちなみにWTIが100ドルを超えるとなれば2014年7月以来となる。2014年7月の日本の消費者物価指数(除く生鮮食料品)は前年比プラス1.3%、同じ年の4月に直近のピークとなる前年比1.5%をつけていた。これには急激な円安調整、さらにはこの年4月の消費増税を控えての駆け込み需要や便乗値上げなども影響していたことも確かである。
ただし、今回は2017年のような原油価格の高止まり状態継続ではなく、100ドルに向けた上昇基調となれば、消費者物価指数(除く生鮮食料品)の「前年比」への影響はさらに大きくなる。円安などにはあまり期待はできないものの、世界経済の回復により国内景気も好調を持続し、雇用のタイト化などの物価上振れ可能性要因もあり、これによって日銀の物価目標が達成される可能性もないとは言い切れなくなってきている。。
そうは言っても、いまのところWTIの100ドル台を正当化しうる材料も見当たらないため、あくまでこれはいまのところ初夢というか、仮定・想定の話ではある。ただし、この点だけは強調しておきたいが、もし仮に原油価格の上昇を背景に日銀の物価目標が達成されたとしても、日銀の異次元緩和が主要因ではない。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年1月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。