戦闘機・戦車など導入4割遅れる 有事対応に影(日本経済新聞)
2014~18年度の中期防衛力整備計画(中期防)で導入を明記した主な防衛装備品のうちC2輸送機など全体の4割の項目で予算計上が遅れていることがわかった。予算計上した項目でも17年度末に発足する水陸機動団の水陸両用車など配備が遅れているものもある。
18年度予算案を踏まえて防衛省が現中期防の達成状況をまとめたところ、主要装備品23項目のうち目標値を100%達成できたのはイージス艦(2隻)や最新鋭ステルス戦闘機F35A(28機)など13項目。10項目は100%に満たなかった。
いつも申し上げてておりますように、防衛省自衛隊には時間とお金という概念が希薄です。
まず、装備調達に関して、何故必用かどのように使うかということを政治家含めて納税者に説明していない。しかも、F-35Aのような例外はありますが、基本何を全部でいくつ、いつまでに調達して戦力化するのか、そしてそのために総額いくら掛かるのか、というお話が政治家含めて納税者にありません。これは開発費も同じです。いくつ調達するのか、開発費を含めた総経費はいくらかが示されないで計画案だけが出されます。
こんな胡乱なことをやっている軍隊はありません。
先日も永田町の防衛問題に関心のある先生方の前でお話する機会があったのですが、そのときにこの中で10式戦車や89式小銃が全部でいくつ、いつまでに調達され、総額いくらかご存じの方がいたら挙手をお願いします。と言ったら誰も手が上がりませんでした。
つまり政治も当事者意識がなく、それで毎年防衛予算を通してしているわけです。つまりはめくら判を押しているだけ。これが民主国家の文民統制ですか。
自衛隊の装備調達には締め切りがない。だから輸入にしろ、国産にしろ細々と長期に渡って調達する。軍隊の買い方じゃありません。当然単価は高騰します。100円のカップ麺を500円で買うようなことをしているわけです。そりゃ、短期に数を揃えるなんてできないでしょう。
しかも空自の救難ヘリみたいに、調達単価が23.75億円のはずが、実際は50億円で空幕長みずから、「劇的に値下げをする手段はありません」と会見で明言して恥じない。常識的に考えれば、官製談合やっているしかありえなでしょう。
こういうことが長期に渡って放置されてきた背景には防衛記者クラブの存在があります。防衛省の情報を独占して握り混んでいるだけではなく、こういう問題を報じてこなかった。それでスキャンダルが起きると大騒ぎをする。
率直に申し上げて防衛記者クラブの存在が、このようなルーズな調達を許してきたといっても過言ではありません。
■本日の市ヶ谷の噂■
「日本の河川は流れが急だから、装輪装甲車に水上渡渉能力はいりませんよ」というコマツの設計者の言葉を間に受けた陸自は、本当にそうか検証もせず、水上航行能力不要としたので陸自の装輪装甲車には水上航行能力が無く、島嶼防衛作戦でも問題となっているとの噂。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年1月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。