「国有地売却」その種類と問題提起されるべきもの

2018年01月15日 06:00

元国有地を含む日本航空高校の敷地(Wikipedia:編集部)

またもや「国有地格安売却疑惑」がマスコミを賑わしている。

山梨県甲斐市の国有地売却について、1月8日付の毎日新聞によると、

…日本航空学園に売られた土地は評価額の8分の1にまで割り引かれ、値引き幅は森友学園にも匹敵する。…

とのことだ。

個別取引の内容について適正かどうかを言及するつもりは無いが、「一般的」には国有地がその評価額から減額されて売却に至ったとしても即座に「格安」であるとは言い切れない。

国有地の売払い方法には二つの種類がある。ひとつは「一般競争入札」で、もうひとつは「随意契約」である。

財務省によると、原則的に国有地は一般競争入札で少しでも高額で売却することとされている。ただし、売却される国有地の全てを一般競争入札にしてしまうと数多くの弊害を招くことになる。

なぜなら売却される国有地には「単独利用可能なもの」と「単独利用できないもの」があるためだ。

例えば、自宅の裏庭に面している土地で、国が所有しているが既に使われていない廃道となった「農道」があるとしよう。そしてこの「農道」は狭小で尚且つ自分以外の第三者が通行したり他の利活用が困難な囲繞地であるような場合、これを一般競争入札とするのは合理性に欠けるし、何よりその土地が第三者の手に渡ってしまうと隣接している自分自身に不利益が生じる可能性もある。

財務局のホームページではこの様な状況を想定した随意契約の詳しい説明がなされている。以下は近畿財務局のHPから引用したものだ。

「随意契約」で一般の方に売払いする普通財産のうち多くは、「旧法定外公共物」です。「旧法定外公共物」とは、かつては田畑や山林はもとより住宅等の中を走る農道、里道、水路・堤塘等の公共的用途に供されていた財産で、現在ではその本来の公共的な機能を失った財産の総称です。これらの財産を隣接土地所有者に売払いするときが「随意契約」となります。これは、このような財産のほとんどが地形狭長で単独利用困難な土地であり、隣接土地所有者しか利用できないことから「随意契約」によることとされています。

この様に「旧法定外公共物」である国有地売却の随意契約には一定の合理性とその必要性が認められている。

では、今回問題の国有地の場合はどうだろうか。冒頭の毎日新聞の同記事内に旧国有地が赤い線で示されている図がある。これを見ると前述の「旧法定外公共物」のいずれかに該当するように見えるし、同記事中に「農道や水路…」との記述もある。だとすればこの国有地売払いが随意契約によってなされたのは妥当だといえるのではないだろうか。

また、特定の国有地売却の価格決定に際しては財務局の「裁量」が働く場合がある。

以下がその根拠となるものだ。

評価財産が、貸付中の財産等、単独利用困難な土地及び堂宇敷地等であって、財務局長が、当該財産の特性を考慮して処分の促進を図る必要があると認める場合には、国の職員が…中略…簡易な評価方法により評定価格を求めることを妨げない。※財務省「財産評価基準 評価の特例」より

この様に一定の条件下であれば、単独利用困難な土地等について「評価の特例」が規定されている。実際の評価の算定については別途(減額譲渡や優遇措置の取扱い等)で詳細に規定されているのだが、この「評価の特例」こそが財務局の裁量範囲を広げすぎていると言われており、これに対する非難の声も高まっている。もちろんその行政担当者の裁量権に「際限」や「監視の目」が必要であることは言うまでもない。ただし、前述したように「旧法定外公共物」の売払いについてはその個別事情と必要性に応じた随意契約や所轄官庁の一定程度の裁量は今後も必要だと思われる。

国有地は国民の財産だ。その売却手続きや売却額には常に「適正さ」が求められる。今後、国有地の適正な売却の為に求められるのは「随意契約や裁量への問題提起」だけではなく、その取引の中身を「可視化」することにこそあるのではないだろうか。「見えること」は疑惑を見つけることも出来るし、疑惑を打ち消すことも出来るのだ。

「ブラックボックス」の中身は思いのほか混沌としたものかもしれないが、逆に案外健全なものかもしれないのである。

高幡 和也    宅地建物取引士

※参考資料 財務省・通達「国有財産評価基準」、同「国有財産特別措置法の規定により普通財産の減額譲渡又は減額貸付けをする場合の取扱いについて」、同「優遇措置の取扱いについて」

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