最近、インターネットラジオが注目されているようだ。プロトコルを通じて、音声で番組を配信するのでバリエーションも多く、なにより規制がない。さらに、電波ではなくインターネット上にて配信されるため電波法にも抵触しない。主にパソコンやスマートフォンを利用して聴取するので、イマドキのメディアと考えることもできる。
今回、ホンマルラジオの『引出し茂ちゃんの、突っ込み☆ラジオ!』に出演する機会があった。パーソナリティは、河野茂伸さん。他の出演者は、税理士の石川和男さん、女性護身術師の大類織絵さん。石川さんは、新刊「人生逆転! 1日30分勉強法」の紹介、私は、新刊「あなたの文章が劇的に変わる5つの方法」の紹介をした。
石川さん、大類さんに関しては、これまでもインタビュー記事をアゴラで紹介している。また、石川さんは、セミナーのゲストで登壇いただいたこともある。本記事では、今回の番組の様子を簡単にお伝えしたい。
情報源の信憑性とニュース性
リスナーの関心が高いようで、アゴラに投稿しているニュースに話が及んだ。2年ほど前に「足なめ男にご用心!その時あなたはなにを考えるか」を投稿したことがある。
これは、嫌がる女性の足を約35分間なめ続けたなどとして、京都府警生活安全対策課などが、強制わいせつ容疑で、京都市伏見区の配送業アルバイトの男(56)を逮捕した事件である。特異な事件であったことから、お昼のワイドショーや、一部のニュースで大きく扱われた。私は、番組を見ながら少々違和感を感じていた。
テレビのご意見番と言われる方々が、「女性はなぜ逃げなかったのか」「スマホで犯人を撮る時間があれば逃げられた」など、被害者である女性の行動に疑いの目を向けていたのである。「女性はなぜ逃げなかったのか」という点に関して、大類さんは、護身術の専門家として、「ワイドショーなどのテレビ番組は核心を突いていない」と主張した。
逃げなかったのではなく「逃げられなかった」。なぜスマホで撮ることはできたのか。この点は、「恐怖で逃げられなかった。不意の事故や災害に見舞われた場合、70~75%の人が何もできない状況になる」と説明した。私は、イギリスの査読誌『Aviation,Space, and Environmental Medicine』に発表された論文に該当箇所を見つけた。
これは、イギリスの心理学者ジョン・リーチ博士の研究になるが、次のように記されていた。人が不意の災害に見舞われた時、取る行動は次の3つにカテゴライズされる。
(1)落ち着いて行動できる人=10~15%
(2)我を失って泣き叫ぶ人=15%以下
(3)ショック状態になり呆然として何もできない=70~75%
一次情報源の研究論文であることから信憑性が高いと判断し、大類さんのインタビューコメントを採用した。「多くの番組では正しい報道がなされていない可能性がある」「女性は逃げなかったのではなく、逃げられなかった可能性が高い」、この2点を中心にまとめた。結果的にアゴラを含め、転載先のYAHOO!ニュースなどでも読まれた。
その後、「女性はなぜ逃げなかったのか」「スマホで撮る時間があれば逃げられた」という報道が収束したので、それなりの影響力はあったように感じている。アゴラは、ニュースサイトになるので、一次情報源の信憑性とニュース性を重視している。
インターネットラジオの将来性
実は、河野さんは、現役の会社員でもある。どのような理由から、インターネットラジオをはじめようと思ったのか聞いてみたい。
「日々の仕事や、プライベートで知り合った方、ご縁をいただいた方の中で『この人かっこいいな~』『この人の本音を聞いてみたいな~』と思った方にゲストに来ていただきます。生き方、こだわり、『本気』の部分や、普段聞くことが出来ない素顔を引き出して、リスナーに伝える番組をつくりたいなと思ったのです。」(河野さん)
『普段は話さないようなことを、伝えていく番組。異業種交流会みたいな堅苦しいものではなく、どこからでも聞けるようなカジュアルな内容にしようと思いました。ゲストの本音が聞けるまで、掘り下げていきますから大変なときもあります。」(同)
あえて、映像のないラジオにこだわった点は?
「動画TVが流行っていますが、映像がないためラジオは本音が話しやすいという声があります。反響のあったテーマのシリーズ化や、ゲストとゲストをコラボして広がりを持たせることで、面白いことができるのではと思っています。インターネットラジオはまだ未開拓な領域なのでいろいろとチャレンジしてみたいですね。」(河野さん)
既に、インターネットラジオが盛んな米国では、広告市場が1兆円を突破し巨大なマーケットを形成している。日本のインターネットラジオはまさに、夜明けの黎明期といったところだろうか。マーケットの将来展望はどうなるのか?今後の動きに注目してみたい。
尾藤克之
コラムニスト