会員の貧困を放置する(?)弁護士会と日弁連

荘司 雅彦

直近(2018年2月号)の日本弁護士連合会の機関紙「自由と正義」の広告欄の懲戒処分を見て「???」と思った人もいるのではないでしょうか?

某女性弁護士が「業務停止1年」の懲戒処分を受けました。

ちなみに、世間を騒がせたアディーレ法律事務所の懲戒処分が「業務停止2月」(元代表の弁護士には業務停止3か月)なので、「業務停止1年」というのがいかに重い処分かご理解いただけるでしょう。返還すべき依頼者の預かり金6500万円を返還しなかった弁護士に対してでさえ「業務停止10月」の懲戒処分となっていました。

当該女性弁護士がどんなに悪いことをしたのか「処分の理由の要旨」を見ると、次の通りでした(私が適宜簡略化しています)。

1 2013年12月から2015年8月まで、会費等合計90万8000円を滞納した。

2 2014年11月から同年12月までの間、弁護士会に届け出ることなく営利目的業務の使用人としてアルバイトをした。

3 1の行為は所属弁護士会規則24条1項に、2は弁護士法30条1項2号に違反し、いずれも弁護士法56条1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

この要旨だけを見ると、仕事がなくて困った弁護士が会費を滞納し、食っていくために年末に1か月アルバイトをしたという気の毒な案件のように思えます。

弁護士会と日弁連を合わせると、(地域によって違いますが)月4万〜5万の会費負担になります。

この会費負担の重さは常軌を逸しており、知らない人に話すと「1年の間違いだろう!」と言われます。

もちろん、詳細な事情はわからないので、もしかしたら、会費を支払う十分な余裕のある弁護士が強いて会費支払いを滞納し、遊び金を稼ぐためにバイトをしたのかもしれません。

しかし、もし前者だとしたら、常日頃から、社会の貧困層の味方をし、弁護士費用のない依頼者には「扶助制度」まで整備している弁護士会及び日弁連が、金銭的に困窮した弁護士が会費を滞納し1か月アルバイトをしただけで、極めて重い処分を下したことになります。

社会貢献は、まず自分たちがしっかりとした生活基盤を持ってこそできるものと私は考えています。

身内である会員の貧困を突き放して重い処分を下しておきながら綺麗ごとを並べるのであれば、強制加入団体としての資格などないと考えます。

例えて言えば、自分の子供に満足な食事も与えていない両親が、外でボランティア活動に精を出しているようなものではないでしょうか?

詳細な事情を知らないのでこのくらいで止めますが、”会”というものはまず会員の福祉と利益の充実を図り、それが満たされてはじめて社会貢献をすべきものだと私は考えています。

毎月10~20名近くの人たちが自発的に弁護士バッジを外すのには、このような背景もあるのではないでしょうか?


編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年2月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。