オリンピック後の朝鮮半島は?

昨年7月から医療保険を変えたため、スポーツジムの特典が無くなり、水泳する機会が減っていた。しかし、最近、あまりにも身体がだるく、重く、頭もすっきりしないので、思い切ってスポーツクラブに再入会し、泳ぎに行ってきた。久しぶりに700メートルほど泳いだので、疲労感は残ったが、頭はすっきりした。寒さで歩いて通勤できないことも重なって、ずいぶんと運動不足だったが、やはり、頭をすっきりと働かせるには適度の運動が必要だと改めて思った。

そして、いつの間にか、冬季オリンピックも終わってしまった。羽生選手の金メダルは、シカゴに戻る機内のテレビにテロップで流されて知った。ケガで練習できない状況を乗り越え、プレッシャーの中で勝ったのは素晴らしいと思う。

そして、小平選手が韓国の李選手に駆け寄ってお互いを称えあう姿は感動的だった。個人レベルでは、友情を築き上げることができるのに、国レベルになると嫌韓、反日が高まってきているのは寂しいものだ。研究者間の交流では、日本と中国、台湾、韓国にはまったく違いがないが、国と国の関係では全く異なってくる。政治は厄介だ。

また、北朝鮮のスケート選手が2度にわたって、日本選手を妨害する姿には反吐がでるような不快さと、不気味さを覚えた。自分が転んだ時に、日本選手のスケートの刃をつかみ、転ばそうとした場面など「醜悪」以外の言葉が思い浮かばない。海外のメディアも報じていたようだが、北朝鮮は異質な国だと改めて思った。

しかし、韓国政府があまりにも北朝鮮にのめりこみすぎなのが不安だ。今の状況では、米国は韓国政府を信用せず、機密情報を韓国と共有しないと思う。どう考えても、情報は北朝鮮に筒抜けになりそうだ。

その米国では国内の対立が激しくなって、差別を露骨に表現する人が増えてきていると報じられていたが、オリンピックが終われば、韓国内の左右の対立も大きくなるだろう。3月以降、北朝鮮問題から目が離せない。日本では、戦争が起こらないと信じている人が圧倒的に多いようだが、米国内で北朝鮮を危険視する人の割合は増えてきており、もし、核実験やミサイル発射実験をした時には、何かが起こる、そんな気がしてならない。

あの国に何十年も騙され続け、多くの拉致被害者は帰ってこない。被害者の親族が、だんだんと年老いてきている姿を目にするたびに、被害者と家族の失われた時間の重さを感じてならない。あんな卑劣な行為をするスケート選手があの国を象徴しているのだ。


編集部より:この記事は、シカゴ大学医学部内科教授・外科教授、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のシカゴ便り」2018年2月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。