この郷原節は参考にはなるが、鵜呑みにはしない方がよさそうだ
あの郷原さんがまた吠えているぞ、と思って記事を読んだのだが、郷原さん、これで本当に大丈夫なのかなあ、と思ってしまった。
こんなことを書くと特捜部の皆さんは、ますます後に引けなくなる。
何だか郷原さんは特捜を煽っているように見えて仕方がない。
多分、捜査対象となっている企業や弁護団の方々も、困ったなあ、と頭を抱えているところだろう。
捜査が進行中の件についてはあれこれ言わないのが普通の弁護士なのだが、郷原流はどうも違う。
郷原さんの指摘が的を射ているのか、についてはあえて言及しないが、捜査をどこまで拡げるか、証拠をどこまで集めるか、どういう法律構成にするのが妥当か、などという判断の権限はとりあえずは検察当局にあるのだから、普通の場合は検察当局を依怙地にさせるような物言いはしない。
郷原さんはまるで司法ジャーナリストのようである。
ジャーナリストであれば、自分の知見に基づいてそれなりの見立てを書けるだろうが、それでもこういう物言いは出来るだけ避けるはずだ。
郷原さん、本当に大丈夫?と申し上げたいところである。
郷原さんの記事のタイトルは、
「“逆らう者は逮捕する”「権力ヤクザ」の特捜部」である。
転載先の方でそういうタイトルを付けたのかしら、と思ったが、元々の郷原さんの記事のタイトルがそうだった。
これは、ちょっと危ない。
大丈夫かな?
リニア談合事件から何を学ぶか
産経新聞によるとゼネコン関係者から、何でこの程度のことで逮捕になるのか、という声が上がっているようである。
これでは何の意見交換もできない、仕事にならない、という担当者の方々の悲鳴だと思うが、これからはあらゆる企業活動に司法のメスが入る、と思っておかれた方がよさそうである。
コンプライアンスを求める声はこれから益々強くなっていくのだろうと思う。
郷原さんのように、この程度のことでは起訴は出来ないはずだ、独占禁止法違反には当たらないはずだ、などと言っても、現職の検察官が独占禁止法違反で立件しているのだから、元検事の方がいくらそれは間違いだ、などと主張されても、裁判所がそれを認めない限り殆ど何の役にも立たない。
大成建設にも鹿島にも立派な弁護団が付いているはずだが、それでも担当者の逮捕を回避できなかった、ということを肝に銘じておかれた方がいい。
裁判官出身の弁護士や検察官出身の弁護士は、つい自分が裁判官や検察官のような気になってしまって断定的な物言いをしがちになるが、所詮決めるのは事件を担当する検察官や裁判官だから、事件を担当する弁護士は担当検察官や担当裁判官をもっと恐れた方がいい。
逮捕許可令状や強制捜査許可令状は裁判官が発布しているのだから、一応は裁判所のチェックが入っている。
まあ、検察官の令状請求をほぼ無条件で認めてしまう未熟な裁判官がまったくいないとまでは言えないが、令状が発布されている、というのは、一応、裁判官の目から見て令状発布の要件が整っているのだと考えておいた方がいい。
郷原さんの所論が正しいのかも知れないが、あまり性急に結論を出されない方がいい。
ひょっとしたら限界事例かも知れないな、と思いながら、リニア談合事件の推移を見守っているところである。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年3月3日のリニア談合事件関連の記事をまとめて転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。