国際水素・燃料電池展「FCエクスポ2019」:中国が特に進化

2018年03月06日 11:30

「世界中も進化している。特に中国が・・・」

今年も「FCエクスポ」の季節になりました。毎年恒例で東京ビックサイトに世界の水素エネルギー関係者が集まります。僕も「FCV(燃料電池)を中心とした水素社会実現を促進する研究会(事務局長:福田峰之)」を立ち上げて以来、毎年視察に訪れています。毎年来ることによって、企業の技術的進化、特徴、各国の取り組み状況をリアルタイムでチェックでき、比較することが出来るようになります。

FCエキスポに集まるのは出展者だけではなく、世界中の水素関係省庁、自治体、水素ビジネスを営む企業も来日しています。米国、ドイツ、フランスの官僚や研究者等、僕がフランスのグルノーブルで参加した「国際水素燃料電池パートナーシップ会議(IPHE)」のメンバーも来日しています。一昨年は、このメンバーと藤沢市にある世界で1つしかない水素料理店「リべロ」に食事に行き、正に国際水素会議そのものでした。リベロは特別な調理機材で水素を燃焼させ、肉などを焼いて食べさせてくれるレストランです。燃焼時に水素と空気中の酸素が結合し、周辺部の湿度が上がることによって、肉が外がカリカリ、中がジューシーという焼き具合になり、とても美味しいのです。

今年のエキスポの特徴は、中国企業の参加数と技術進化です。中国という国単位のブースではなく、単体の企業として多くが参加しています。一方でカナダ、ドイツ等は、例年通り、国のブースに数社の企業が出店しているスタイルで、特に驚くような進化が見て取れたということはありません。中国の特徴は、水素貯蔵用カーボンタンク、燃料電池スタッグ(FCスタッグ)、燃料電池と自社での製造が増えていることです。これまでは、燃料電池を海外から輸入して製品をつくっているケースが多かったですが、自社での製造、そしてメイドイン中国製品での組み合わせが増えているようです。

日本企業の取り組みは、もちろん進化しています。パナソニックの純水素型エネファーム、ホンダの70mps対応スマート水素ステーション(SHS)、川崎重工の液化水素船等、毎年進化して、水素エネルギーロードマップの実現に貢献しています。

多くの国内企業や団体、自治体、外国企業ブース等がある中で、僕が特に興味を持ったブースは2つ。フランス企業のFC自転車、シンガポールの大学ベンチャー発、小型FCドローンです。残念ながら、FC自転車は混んでいて乗車出来ませんでしたが、見た目もファッショナブルで、アシストでの走行距離も長いのです。残念ながら日本の規制が厳しく、現況では日本での販売は未定のようです。

また、FCドローンに搭載されているFCスタッグはもちろん軽くて小さい。「販売しているのか」と聞くと「来年は完成品を持ってくるよ」と話していました。ドローンの課題は飛行時間です。電気の充電では30分くらいが限界で、燃料電池を使うことによって飛行時間を延ばすことが出来るのです。利活用を想定した技術開発の原点はこうしたところにあるのです。

FCエクスポに毎年来て感じることは、技術的な進化は見て取れるけれども、製品の利活用を掲げているブースが少ないという点です。特に日本企業の水素エネルギー技術は、これまで世界の先頭を走ってきました。しかし、その優位性が落ちている原因は、新たな利活用が明示されていないことです。ドイツでの燃料電池電車(フランス製)、中国での燃料電池路面電車、この分野は1番になれませでした。

水素エネルギーのインフラ基盤は極めて重要であるけれど、生活基盤に近づいていないのです。山梨大学が中心となり研究開発をサポートした、燃料電池ワインセラーを始めてみた時は衝撃を受けましたが、今は進化のプロセスを見ているに過ぎません。ワインセラーのような生活に近いところに、水素技術を使う製品が生じてこないと、国民理解につながりません。FCエクスポ来場者に女性が限りなく少ないのは、それが原因でもあります。インフラは大企業でないと先行投資が難しいので、ここに中小企業が参戦するのは困難と思います。しかし、細かな利活用シーンではアイデアと技術で、中小企業が新たなビジネスを作り上げる可能性を秘めている領域なのです。水素調理器具も正にその領域です。

日本企業では、ブラザー工業が燃料電池を使って、工事現場の投光器の試作品を作っていました。夜間の工事現場には必ず投光器があります。化石燃料を燃焼させて電気をつくっているためにCO2を発生させる、騒音がある、排気ガスが出るというマイナス面を持っています。燃料電池投光器なら、全てが解決出来るのです。正に生活に近い現場での水素技術による、社会課題の解決に繋がる製品です。

LUNASEAのSUGIZOと共に「世界初!燃料電池コンサート」を企画したのも利活用に新たな視点を入れたかったからです。政府も「水素基本戦略」をつくり水素エネルギー社会実現に本気で取り組んでいます。しかし、水素関係者による、水素関係者のための水素エネルギ―社会としてはいけません。現況のフェーズでは、国民理解が増すことが重要なのです。政策としての優先順位が上がり、政府の予算も確保でき、企業の技術進化が続く。持続力を持って、これから先に進むには、国民理解が不可欠と言うことです。過去にも何度か水素ブームが起きています。継続出来なかったのは政治家が本気にならなかったこと、そして国民理解が進まなかったことです。政治の本気は解決済みなので、次は・・・ということです。

驚きはFCエクスポにテスラ―のEV車が出展していたことです。関係者に「水素と何の関係があるの」と聞くと、「特になく、ブーストして出展しています」と。FCVに否定的な見解を持ってるイーロンマスクが挑戦状を突き付けてきたのか・・・。僕らが想定しているのは、水素エネルギー社会であって、FCVはあくまでそのパーツの1つにすぎません。トヨタもホンダも単にFCVが売れれば良いと考えているわけではありません。テスラ―自体は環境に適した車両でも、米国のように化石燃料中心で電気をつくっていたのではEV車の意味はないのです。資源の無い日本の政治家と化石燃料が豊富にある米国の起業家の考えの違いなのかもしれません。イーロンマスクに、水素社会の意味を直接伝える機会を得れたらと思っています。

再生可能エネルギーの欠点でもある、「貯める」、「運ぶ」を水素に置き換えて対応することによって、再エネも力を増すことになるのです。置き換えられた水素を燃料電池による化学変化で電気に戻す、水素発電で水素を燃焼させて電気に戻す。火力発電や原子力発電に頼らない、水素エネルギー社会へのロードマップは現在進行中です。

水素社会とはどのような社会なのかを詳しく知りたい方は「水素たちよ電気になぁーれ!」(著:福田峰之)を一読下さい。


編集部より:この記事は元内閣府副大臣、前衆議院議員、福田峰之氏のブログ 2018年3月6日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。

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福田 峰之
前内閣府副大臣、前衆議院議員

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