買春スキャンダルに揺れた慈善団体:本来の英国の慈善活動事情は?

2018年04月21日 06:00

(「英国ニュースダイジェスト」の筆者コラム「英国メディアを読み解く」に補足しました。)

「オックスファム」といえば、英国では大変なじみがある非営利組織・慈善(チャリティー)団体の一つです。街角のあちこちにはオックスファムが運営するチャリティー・ショップがありますし、貧困撲滅を掲げて世界各国で人道支援活動に取り組んでいることもよく知られています。

そんなオックスファムは今年2月、スキャンダルに大揺れとなりました。ほかの慈善団体も批判の的になりました。

でも、慈善団体の意義が減じたわけではありません。英国で慈善団体が立ちあがっていった経緯を振り返りましょう。

スキャンダル、発覚

2月9日、オックスファムの職員の一部が、2010年に大地震に見舞われたハイチで地元女性らを買春していたと英「タイムズ」紙が暴露報道しました。オックスファムによる内部調査報告書(2011年)によると、性的搾取、ポルノ画像のダウンロード、いじめ、威嚇行為があったとして4人が解雇され、3人が辞職。このとき、オックスファムは英国の慈善組織の活動を監督する「チャリティー委員会」に詳細を報告していませんでした。

タイムズ紙側はオックスファムが事実を「隠ぺいしていた」と主張しました。オックスファムの親善大使として活動をしていた著名人らがその役割を次々と返上していきます。同団体への寄付金登録も7000件以上キャンセルされました。チャリティー委員会も調査を開始しました。

オックスファムは政府から年間3170万ポンド(約48億円)の資金援助を受け、世界各国で人道支援活動を行っていますが、ペニー・モーダント国際開発相は場合によってはこの援助を打ち切る可能性も示しました。

また、ほかの慈善組織「セーブ・ザ・チルドレン」や、パリに本拠を置く「国境なき医師団」も過去に性的不正行為で職員を解任していたことを公表するようになり、慈善活動やその組織自体に疑惑の目が向けられました。

チャリティーの元々は?

「チャリティー(Charity)」は「慈善・博愛・慈愛」などという訳語が当てられますが、慈善行為自体も意味します。

英国(ここでは主としてイングランド地方)では、17世紀まではキリスト教の教区内の互助制度が貧困者を支援。支援の原資は教会、救貧院、富裕層からの寄付金などが賄いました。最古の救貧院は10世紀に英北部ヨークに建設されたそうです。

17世紀後半から18世紀、「啓蒙の時代」と呼ばれるころには、上流階級が貧困層を助ける社会奉仕活動が次第に発展していきます。そんな活動家の1人、トーマス・コーラムがロンドンの孤児のために1739年に設立したのが「ファウンドリング・ホスピタル」という施設でした。「ホスピタル」はここでは「慈善施設」のことです。

19世紀に入って続々と慈善組織が設置されていく中、恵まれない層を支援する社会貢献活動が中流階級の中で1つの流行となっていきます。1853年、慈善組織の監督、支援、助言を行う機関としてチャリティー委員会が設置されました。

20世紀に入って、貧困をなくすための抜本的な改革をしなければと思ったジョーゼフ・ラウントリーは、労働者たちに節酒を勧め、また、低所得者層の住宅問題を解決することまで考えながら、慈善組織を次々と発足させました。しかし、貧困からくる諸問題の解決には至りませんでした。その後、第2次世界大戦後の労働党政権下で、医療費の無料化、雇用保険、救貧制度、公営住宅の建設など「福祉国家」への歩みが始まります。(ラウントリー協会

民間の慈善組織の立ち上げには、信念を持つ個人が存在していました。

先のラウントリーはもともとチョコレート会社の経営者でしたが、資産の半分を使って恵まれない人の支援に乗り出します。また、児童の権利保護のために活動する、セーブ・ザ・チルドレンを築いたのは社会改革家のエグランティン・ジェップでした。第1次大戦後、飢餓状態にある子供たちを救うため、ジェップは妹と一緒に活動を始めました。

チャリティー組織には逆風が吹きましたが、困窮状態にいる人を支援する活動とその意義を忘れないようにしたいものですね。

オックスファム(Oxfam)とは

英国内で4番目に大きな慈善組織です。1942年、イングランド東部オックスフォードで、クエーカー教徒や教育者たちのグループがナチス政権下にあるギリシャの国民を支援するため「オックスフォード飢餓救済委員会」として設置しました。1965年にオックスファムという名称になりました。現在、約1万人が90カ国で活動し、昨年の収入は約4億9000万ポンドに上りました。


編集部より;この記事は、在英ジャーナリスト小林恭子氏のブログ「英国メディア・ウオッチ」2018年4月20日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「英国メディア・ウオッチ」をご覧ください。

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