子を虐待死させた親は死刑に相当

2018年06月08日 06:00

亡くなった船戸結愛ちゃん(母親の優里容疑者のFacebookより:編集部)

鬼も泣く事件再び

「鬼も泣く」という表現が決して大げさでない虐待死事件が東京・目黒区で起きました。そのせいか、3年半前に書いた私のブログ「子の虐待死に親は死刑か終身刑」(2015年10月11日)にアクセス件数が急に増えています。前文を添えて、改めて私の考えをお伝えしたく、再録します。

(前文)

5歳の女児が死亡した事件で、保護責任者遺棄致死容疑で父親とその妻が逮捕されました。人の心を失った犯行なら、殺人罪を適用すべきでしょう。児童虐待はすでに年間12万件という多さなのに、増える一方です。事件報道をテレビ、新聞で読もうとしても、あまりにも残忍で途中で目を背けてしまいます。

絶句するのは、死亡した5歳児の名前が「結愛」で、恐らく生まれた時は、「両親の愛が結びついた赤ちゃん」という意味を込めたのかもしれません。父親の名前は「雄大」、母親の名前は「優里」で、「スケールの大きな立派な男の子になってほしい」、「子や人々に優しい女の子になってほしい」という両親の願いが込められていたのでしょう。

結愛ちゃんは優里容疑者と別の男性の間に生まれ、その後、船戸容疑者と結婚したそうです。こういうケースでは、児童虐待が起きやすいにしても、これほどまで児童を虐待する悪魔の心を人間が持つなんて信じられません。

目を覆いたくなるのは、結愛ちゃんがノートに「もうおねがい、ゆるしてゆるしてください」と、許しを請う言葉をつづっていたことです。毎朝午前4時に一人で起床し、ひら仮名の練習とさせられていたと、新聞記事にあります。ノートには「いわれなくても、しっかりじぶんから、きょうよりももっともっとできるようにするから、もうお願い、ゆるしてください」と。

真冬はベランダに放置し、朝食はスープ一杯、昼食は味噌汁をかけた茶わん3分の1の米、夜は茶わん半分の米だけとあります。鬼でもこのような行いはできないでしょう。

児童虐待には、「身体虐待、刑法上の暴行罪や傷害罪」、「倫理的虐待、障害罪や脅迫罪」、「ネグレクト、保護者責任遺棄罪」などがあるそうです。今回の場合、「殺人罪相当。死刑などの極刑」とだれもが思います。「殺人罪は殺意の認定が微妙。裁判で殺すつもりはなかったと、殺意を否定されると、殺人罪の立件が難しくなる」という弁護士の解説がありました。

これまで殺人罪で懲役30年(大阪、平成24年)あたりが最高刑なのでしょうか。保護責任者遺棄致死では懲役12年(札幌、平成28年)など除けば、これこそ人道に背く犯罪なのに、適用される刑があまりにも軽いといえましょう。

極刑だけで鬼のような犯行を防げるとは思いません。経済的な困窮、育児による精神的不調、夫婦間のいさかい、自治体、児童相談所、警察の支援不足も原因でしょう。政府は少子化対策の充実、女性が輝く社会、一億総活躍社会など、スローガンばかり並べるのでなく、かけがえのない幼い命を守る社会政策を考えてほしいですね。

児童虐待防止法の再点検が必要です。育児、養育を断念したい場合は、特別養子縁組制度を生かし、赤ちゃんを引き取って育てたい夫婦とマッチングするなどの方法もあるでしょう。

(以下は3年半前ブログです)

急増する悲劇への歯止め

1億総活躍社会だの、国内総生産(GDP)600兆円目標だのと、安倍政権から華々しいアドバルーンが次々にあがっています。そんな時、目が釘付けになったのは「児童虐待が最悪の8万9000件」(昨年度)という厚生労働省発表の報道(10月8日)でした。

児童に対する親の虐待は2014年度、前の年度に比べ20%も増えました。全国の児童相談所が対応した件数のことで、13年度までは10%前後の増加だったのに、急増したのです。「全国津々浦々にアベノミクスの効果を波及させる」というスローガンとは裏腹に、日本の社会に深い谷間が広がっているのでしょう。

虐待死は10年間で580人も

13年度まで10年間の虐待死は580人との発表です。賃金格差の拡大、十分な収入が得られない非正規雇用の拡大による経済的な困窮、増える通報に対する対応の遅れ、望まない妊娠や10代での妊娠増加、母性喪失という社会的病理など、背景はいろいろあるでしょう。

新聞記事などを読んでいて気になるのは、こうした親たちがどの程度の刑罰を受けたかの説明です。厚労省の発表ですから、虐待の集計、その社会的背景、関係機関の対応などが中心になっています。メディアはそれに沿った報道をしており、親がどのような処罰を受けたか、受けるべきかを独自の視点で問題を提起していないように見受けられます。

「4歳児をウサギ用のケージに監禁し、タオルで口をふさぐなどして窒息死させた」、「3歳児の手足を縛り、口に粘着テープを貼った。体を布団でぐるぐる巻きにして窒息死」、「浴槽内で出産した子供を水中に放置して死に追いやった」など、テレビニュース見るたびに、目を背け、耳をふさぎ、チャンネルを切り換えたくなります。

「死刑だ」と叫ぶ声が聞こえる

厚労省の発表に対して、刑罰について、新聞記事などは「殺人罪で起訴」、「保護責任者遺棄致死罪で起訴」、「監禁致死罪で起訴」、「傷害致死罪で一審実刑」など、抽象的な説明にとどまっています。

あまりにむごい仕打ちで死に追いやった事件では、「ひどい。ひどすぎる。死刑だ」と、叫ぶ人は多いでしょう。ネットでチェックすると、「10年の求刑に15年の判決」、「懲役30年の判決」など、厳罰化の傾向はあるようではあります。厳罰化に対し、「まだまだ甘い」という声は強いのではないでしょうか。

複数の子供を虐待死させた場合は死刑、目にあまるひどい殺人行為をした場合は終身刑など、もっと極刑を考ほうがいいのではないしょうか。大阪・寝屋川の事件では、懲役15年の判決に不服の父親が抗議し、裁判長に「ばか。ちょっと待って」と叫んだとか。

母性や父性の喪失、人間に値しない行為に対し、「残忍な虐待には極刑が待っている」と、知らしめておくべきではないでしょうか。そうでもしないと、死んだ子が浮かばれません。もちろん、通報体制の強化、指導の徹底、望まない妊娠に対する社会的な救済措置が必要なことはいうまでもありません。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2018年6月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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