スペインで、病気の子供たちが政治家のイデオロギーの犠牲に

州議会のイデオロギーで犠牲になる男児の母親(EL MONDOより引用)

以下に挙げる7人の子供がそれぞれ抱えている病気を治療する医師が誰もいない!

州議会議員の政治イデオロギーが邪魔して小児科の患者がその犠牲になっているのである。問題の根底にあるのはスペイン・バレアレス諸島自治州の公立病院で働く医師そして看護師はカタラン語を習得することが州の条例で義務となっているからである。医師の場合はカタラン語の初歩B1、看護師は基礎A2のレベルの取得を義務づけている

カタラン語が治療に必要なのであろうか? スペインでは共通の言語スペイン語でだれとも意思疎通ができるはず。しかし、一部の政治家にはそれが理解できないようである。そしてその犠牲になっているのが子供を含め病人である。

カルラ:自閉症、マルク:アスペルガー症候群、アリアナ:アスペルガー症候群、

ペドロ:てんかん、ロベルト:脳機能障害、ラウラ:自閉症、カルロス:広汎性発達障害

イビサ島の512人の子供が特別治療を必要としている。

上述した7人の子供はバレアレス諸島自治州を構成する5島のひとつイビサ島にある公立カン・ミセス病院に通院している。この病院で神経小児科医はひとりしかいなかった。アルゼンチン出身のイレアナ・アントン女医(46歳)である。ところが、彼女は州の条例で規定しているレベルのカタラン語を習得していない。だから州の公立病院で勤務することがいずれできなくなる。この自治州行政の姿勢に対して、彼女は自分の医師としての能力を評価するのではなく、カタラン語を理解するかしないかで勤務評価をしよとしていることに賛成できないとして病院を去ることを決めていた。それがバルトロメー・ボネー小児科部長に伝えられていた。

彼女はこれまで神経小児科医として15年の経験を持ち、イビサのカン・ミセス病院には4年に勤務していた。しかし、州の行政ではそれだけでは不足のようで、彼女が指摘しているように、州が医師に要求しているカタラン語の習得レベルはドクターのタイトルを得ることに匹敵するほどだという。結局、彼女は州政府の姿勢に反対して最近島を去った。

ロベルト7歳とラウラ5歳の母親によると、アントン先生が二人を6か月毎に一緒に診療していたそうだ。いつも二人を一緒に診療しているのは診察日が来るまで長い日数を待たなくて済むようにするためだったという。しかし、もう14か月診察を受けていないと語った。昨年12月が診察日に当たっていたが、クリスマス前に病院の方から連絡があって2月に変更するという通知があった。そのあと、診察日は未定という通知を受けたそうだ。理由はアントン先生がイビサを去って後任の医師がいないからだという。

カルロス7歳半の母親は子供の脳のラジオ測定が常に必要で、私立の病院に行くだけの生活の余裕はあるが、公立病院で診療を受けて見ることにしたという。昨年8月28日を診察日として希望したが、病院から今年6月8日の診察を変更するという通知があったそうだ。ところが、3月になって病院から診察日の取り消しの通知を受けたという。

アントン先生のことは紙面から知っていたが、彼女は指摘し、「私には全く許しがたい無知に思える。州の公共衛生は彼らのイデオロギーでやっていて、患者のことを考えていない」と述べてカタラン語は問題ではないとした。

5月に入って病院の方から診察日を通知してきたが、神経小児科医ではないという回答なので、医師の名前を尋ねたところ赤ん坊を担当する彼女も知っている小児科医であった。そこで彼女はその小児科医に尋ねたところ、アントン先生が担当していた患者は全員その医師に回されたことが伝えられたそうだ。

問題の子供を抱えた親たちはアントン先生がカタラン語を充分に理解していたと語っている。

ペドロ7歳の父親は子どもが良く意識喪失になってしまうことがあり、アントン先生はそれを良くコントロールしてくれていたと語った。母親が指摘するに、もう1年アントン先生の診察を受けておらず、服用する薬の量も変えなくてはならないのだがそれが分からないと言っている。私立の病院の神経科で診てもらったが、薬の量などは神経小児科医に診てもらう必要があると指摘されたそうだ。(参照:EL MUNDO

カン・ミセス病院の小児科部長バルトロメー・ボネー先生の主要な仕事はイビサで勤務してくれる小児科医を見つけることだという。現在、6人の小児科医が不足しているそうだ。イレアナ・アントン先生も島から去って神経小児科医は誰もいない。カタラン語を習得していることが採用に必須となっていることから後任の医師を見つけることは容易ではないと述べている。それと同じように問題は、現在診療している小児科医が島を去ることも懸念しているという。

イビサが国際的に著名な観光の島となってから、狭い島で物価が急騰しており、住むマンションやアパートメントでも家賃は非常に高くなっているため、勤務する医師は誰かとシェアして住むと言った不便さも受け入れる必要が迫られている。

バレアレス自治州5島で5月に発表された公示によると、公立病院での勤務採用者は1776人の応募者の内631人で、1145人が採用の枠から外れたことが明らかになった。採用されなかった一番の要因は勿論カタラン語を習得していないからである。

今、スペインのどの病院でも不足しているレントゲン技師に至っては166人が応募して、採用者は僅か18人だったという。