アメリカ人、トランプ大統領の経済政策にイエス

トランプ大統領の通商政策が世界中で物議を醸しているものの、支持率は鉄壁の40%を死守する状況に変わりありません。

力強い経済成長が一因を担っていることでしょう。CNBCが実施した世論調査では、「経済政策」への支持が前回3月から6ポイント上昇し、トランプ政権発足以来初めて50%を超え51%でした。不支持は35%と、前回から6ポイント低下しています。米経済について「良好、素晴らしい」と回答したアメリカ人も54%と10年ぶりの高水準だったと同時に、「普通、弱い」との回答は43%と調査開始以来で最低でした。米5月雇用統計が文句なしの好結果だった上、アトランタ地区連銀の予測では米4〜6月期実質GDP成長率がまさかの4%超えを達成する見通しでは、米経済に強気になるというものです。

支持率そのものはというと、前回から2ポイント上昇の41%でした。ところが不支持に異変が生じ47%と、前回から10ポイントも急低下しているではありませんか。調査時期が6月16〜19日と不法入国した親子を引き離す移民政策がメディアで総攻撃された時期だというのに、不支持の回答はトランプ大統領就任以来で最低を更新しています。問題の移民政策でも、不支持は51%にとどまっていました。

今回の世論調査結果に、税制改革法案に署名した時のような笑顔が飛び出した?

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(出所:The White House/Flickr)

気になる通商政策はというと、45%が「関税賦課」に支持を表明しており、不支持の38%を上回っています。トランプ大統領が中間選挙をにらみ、保護主義へ軸足を移すわけですね。ちなみに、「北朝鮮の対応」には58%と過半数が支持していました。

ここまでの結果をみると、トランプ大統領に追い風が吹いているように見えます。しかし、中間選挙になると必ずしもそうとは言い切れません。「どちらの党が両議会で多数派を獲得すべきか」との回答では、共和党が34%と民主党の32%を僅かに上回った程度です。しかも、残りの34%は「どちらでもない、無回答」でした。共和党に優勢と言えないまでも、6月12日の予備選では現職で鉄鋼・アルミ関税導入に反対した共和党のマーク・サンフォード下院議員(サウスカロライナ州)が新人の女性候補に敗北し、同じく現職でトランプ大統領に批判的だった共和党のマーサ・ロビー下院議員が決戦投票に持ち込まれてしまいました(注:決戦投票を控えトランプ大統領が支持を表明)。トランプ大統領への不支持表明は、必ずしも共和党候補にとって自身の首をつなぐ決断とは言えない状況です。

CNBCの世論調査結果は800人のアメリカ人を対象に行われましたが、投資に積極的な高所得者層が多く、どちらかというと共和党支持者が優勢と考えられます。では、トランプ大統領が「フェイクニュース」と非難するCNNの世論調査はどうでしょうか?

6月14〜17日に1,017人を対象に実施した世論調査では、「外交政策」の支持率は39%と前回5月の42%以下に終わり3月の水準へ戻しました。「通商政策」の支持率も39%と、3月の38%に近い水準です。通商政策に絡み「貿易相手国と良い関係を築くべきか、関税で対応すべきか」との質問には、「良い関係を築くべき」が63%と、「関税で対応すべき」の25%を大幅に上回りました

トランプ大統領自身への支持率そのものは40%と、前回5月の42%を下回ったものの3月の水準へ戻した程度。政権発足後の最低である36%(2017年12月)を超えた水準を維持していました。ただし、トルドー加首相の49%には届いていません。

注目の質問は、「トランプ大統領が海外の首脳に尊敬されていると思うか」。CNNらしい質問には、26%がイエスと回答するのみ。オバマ前大統領やブッシュ元大統領と比較して低空飛行にとどまっています(以下のチャート内の数字は過去の回答の平均値)。

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(作成:CNNよりMy Big Apple NY)

しかし「経済」となれば話は変わり、64%が「経済は良好」と回答、「1年先も良好な状態を維持している」との回答も59%と過半数を占めました。CNN、両者に広がる7ポイントの回答差に注目。過去57回に及ぶ世論調査で現況と見通しの間でここまで乖離が開いた実績は2回しかないと指摘し、特に年収5万ドル以下(17ポイント差)、そのほか学生の間(16ポイント差)で目立ったと分析しています。6月FOMCの経済見通しを踏まえると、2019年の景気見通しから多少楽観が後退しても不思議ではないでしょう。

(カバー写真:The White House/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年6月25日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。