速報オピニオン:“小泉流”国会改革提言のカギは事前審査制の見直し

2018年06月27日 17:30

ニコニコ生放送より

きょう(27日)は仙台で講演があったため、残念ながら永田町の記者会見に行けなかったのだが、小泉進次郎氏ら若手議員たちでつくる「2020年以降の経済社会構想会議」の有志が17時すぎ、国会改革の提言を発表した。(執筆時点ではまだ小泉氏は提言を読み上げている)

ここまでに至る経緯は、事務局長代理を務める小林史明さんのエントリーに詳しいが、「ポスト平成」の政権与党を担う次代の主力が思い描く統治システムだけに、遅かれ早かれ部分的にでも実現する可能性はある。それだけに私も注目していたので、ひとまず関係者にお願いして取り寄せた提言集(公表資料)をさっそく読んでみた。今夜以降、全文が報じられるだろうから、皆さんも各自でチェックいただければと思う。

野党を「無能」にする日本の国会のメカニズム

予算委で予算と関係性の薄いスキャンダル追及がみられるのは、日本の国会の奇異な特徴だが、前述の小林さんの記事でも取り上げられているように、この背景には野党を「無能」にしてしまう仕組みの問題がある。公民の教科書には国会は立法府であり、議員は“ローメーカー”だと位置付けられているが、日本の統治構造の実相は違う。日本では与党が提出した法案に、野党側の申し入れは原則反映されない。

安保法制のときに当時存在した少数野党3党が与党側と取り交わした「付帯決議」で、集団的自衛権行使に一定の制限を加えたが、付帯決議には法的拘束力はない。決議通りに運用されるかは政権側の良心に任されている。

そうした仕組みになっていれば野党側は本質的に政策議論をするよりも、特に選挙が近い時期などは支持層向けにパフォーマンスでアピールしたくなるというものだ。

野党が無能にならざるを得ない仕組みの要因は、与党側が法案提出段階ですべてを決めてしまう「事前審査制」の慣行にある。

提言は事前審査制をどう見ているのか?

事前審査制の成り立ちについては、宇佐美くんが近著『逃げられない世代』で解説しているが、1950年代から形成されはじめ、1962年に当時の赤城宗徳総務会長から官房長官に送った「赤城文書」で完成したとされる。同書によれば、事前審査制ができた経緯には、戦後からまもない時期に、選挙区への利益誘導がひどい法案が成立するなど、国会側にも問題があったようで、当時の行政府なりに国会を無力化するための“知恵”だったようだが、国会審議の形式化を著しく進めてしまった。

というわけで、こうした経緯からして小泉氏らの国会改革は事前審査制をどうするか必ず直面する課題だ。

さきほど発表された提言では、

同じく二大政党が政策を競い合う議院内閣制 である英国においては、政策決定は内閣に一元化しており、与党の事前審査制度は存在しない。また、行政府の官僚は政治的中立性が徹底されており、与野党を問わず、内閣に入っていない国会議員と官僚の接触は禁止されている。一方、我が国では、与党が内閣の法案や予算案を事前に審査する制度が確立しており、日常的に官僚と国会議員が接触している。政策決定は一元化されておらず、官民接触も自由になっており、英国型とは大きく異なる。

などと、日英の制度をわかりやすくも言及しているものの、比較にとどめている。その上で

今後、ポスト平成時代に、与党の役割は何か、政権公約のあるべき形は何か、事前審査制度の役割は何か、官僚人事のあり方も含めて政と官の仕切り線をどこにひくのか、国民的な議論が必要である。

というかたちでまとめに入っており、今回はあくまで議論のスタートという位置付けなのだろう。

真の「討論のアリーナ」を実現できるのか?

しかし、提言がぶちあげるような「討論のアリーナ」を目指すのであれば、つまり与野党の議員が互いに法案づくりにコミットし、喧々諤々の論戦なり、提案、交渉、調整などを通じて成立させる仕組みに変えるのであれば、事前審査制をはじめとする与党側のシステムの見直しは避けられない。

全会一致で党の投票行動を決める事前審査制は、ときに国論を二分したり、既得権を壊したりするアジェンダを推進する上でもハードルになっている。小泉さんのご尊父が進めた郵政民営化法案は、史上初めて党の事前審査をすっ飛ばして直接国会に提出するという離れ業があったことを考えれば、明らかなわけだが。

どちらにしろ、このあと党執行部や上の世代の議員たちに賛同者が増えるのかどうか。数年たってみて、結局は衆議院への押しボタン導入や書類のペーパーレス化といった物理的なものの実現に終わったりはしないか。小泉氏や若手議員たちが真価が試されるのはこれからといえる。

P.S ついでに宣伝をしておくと、「ポスト平成の民主主義」が議題のアゴラ夏合宿セミナーでは、当然のことながら今回の提言も取り上げることになるだろう。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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