災害復旧への広島市の姿勢は大問題だ

河井 あんり

広島県内の復旧作業の様子(NHKニュースより:編集部)

環境省の補助金で、広島市の被災地においては、民有地内土砂を被災者自身が撤去した場合でも、その費用は被災者に全額還付されることがようやく決まった。これは基礎自治体(市町村のこと)から国へ制度申請をする仕組みの制度だ。

この制度は、4年前の広島土砂災害のとき、私が被災地全貌を確認するために安佐南区被災地のマツダオートザム屋上で、たまたま広島県の対策本部に常駐していた環境省の職員と出会い、東日本大震災で使ったこの制度を広島土砂災でも流用できるのでは、と教えて頂いたことからスタートした。その後私は広島市本庁に局長、部長以下を訪ね、この制度を採用することを強く要望したし、国からも半分脅しをかけながら制度導入を促してもらった。前回4年前も今回も、広島市はこの制度を国に申請することに全く前向きでなかった。4年前の広島土砂災害のときは、いくら国から働きかけてもらっても、とうとう制度は導入されなかった。

災害復旧で最も大切なのは、迅速性と、被災者間の公平性だ。4年前も今回も、広島市は、市が調査に入り、公道内も民地内も市が土砂撤去費用を負担する、とアナウンスしていた。しかし、膨大な数に上る宅地で、被災者は市が調査に入るのを待ってなどいられない。結局、市が公費で負担をしてあげた宅地もあれば、自費で重機を持ち込んで土砂撤去を行った被災者も出てしまう。これでは公平性という、復旧の大原則は守れない。

今回の発災後、4年前の教訓があって、私たちはすぐに環境省に働きかけた。環境省はこの制度を導入することで被災者を救済したくてたまらない。環境省と私の夫で話を詰めて、広島市に制度申請を促した。しかし、広島市は、「市が指定した業者を使わない場合には公費負担を認められない」と言って、制度申請を断ってきた。

この広島市の姿勢が、本当に被災者に寄り添っていると言えるのか。

結局、環境省事務次官に話をし、もう一度事務方から広島市に訴えたがそれでも動かない。とうとう、問題は、首相官邸にまで持ち込まれた。

菅官房長官に直接お願いし、国と市でこの制度導入に向け協議するよう強い指示をだして頂いた。それでようやく国の制度を市が受け入れたのである。

国は制度を用意して、いつでも使ってもらえるように準備をしていた。それが、たった一つの基礎自治体のために、本省の事務次官まで動き、果ては官邸まで動かなければ制度申請しないなど、前代未聞だ。広島市の凄まじいセクショナリズムを見た気がした。

広島市がこうした国の制度を受け入れることに消極的なのには様々な理由があるのだろう。これからマスコミを中心に検証を行っていただきたいが、最も被災者に寄り添うべき基礎自治体の態度としては大問題だ。広島市は何か勘違いをしているのではないか。

今回の災害は広島県内でも広範囲にわたっている。私は、他の基礎自治体にも制度周知を徹底し、なるべく迅速に、制度導入が実現するよう、昨夜のうちに県の環境県民局長にお願いしたところである。

一日も早く、なるべく被災者の負担を減らすために、これからも頑張っていきたい。