東京医大ってどうして女性合格者を減らしたいの?と思ったときに読む話

城 繁幸

東京医大公式サイトより:編集部

今週のメルマガ前半部の紹介です。東京医大が、女性の受験生に一律で減点処理をすることで合格数を3割未満に抑えていたと読売新聞がすっぱぬき、騒動になっています。

【参考リンク】東京医科大による得点操作 前理事長ら3人のみ知るマニュアル存在

ちなみに医師国家試験の合格率は女性の方が3%程度は高いそうです。

ということはあれですか、女性の方が医者の適性があるってことですかね(棒読み)
それとも、ほかの医大も女性だけなんらかのフィルターかけて少数精鋭に絞ってるってことですかね。だとしたら闇が深すぎて死人も出そうな話なのでこれ以上突っ込むのはやめときます、はい。

さて、問題の東京医大ですが、そもそもなぜ女性の合格者が増えるとまずいと考えたんでしょうか。そこには日本企業にも共通のある問題が関係しています。女性と雇用を考えるうえで避けては通れないテーマとして、今回は正面から取り上げましょう。

医大が女性を敬遠する理由

医大というのは高等教育機関であるとともに、系列病院に医者を配属する人材採用&育成機関でもあります。となると、入試=採用活動に際して現場のニーズを完全無視というわけにはいきません。

一般的に言って、女性は結婚や出産を機に退職することが珍しくありません。本人がまだまだ頑張りたいと思っても、夫が全国転勤ありのフルタイム総合職なために仕方なく退職せざるを得ない女性も多いでしょう。

また、女性はハードな外科を避けて皮膚科や眼科を選ぶ傾向が強いとも言われています。「タフで徹夜もばんばんこなせる外科や内科をどんどん送り込んでくれ」という現場のニーズを満たすため、女性の合格者を抑制した、というのが大学側の本音でしょう。

でも、職場の事情で学ぶ機会に性差をもうけるなんて、やっぱりおかしいと感じる人は多いでしょう。意識高い系やフェミニストの皆さんの中からは「女性が働きやすい環境を作るのが筋だ!」という声が上がっています。筆者も同感です。筆者は皆さんと共に歩む仲間です。というわけで「女性の働きやすい職場」を考えてみました。

1.年俸制にして外科の年俸を上げ、皮膚科や眼科の年俸は抑える

横並び基本給だったら、そりゃ誰でも仕事が楽な方に行くでしょう。市場原理を導入してサラリーにメリハリをつければ「外科のなり手がいない」なんてことにはならないはず。実際そうやっている米国で医師の偏在なんて聞いたことがありません。

2.業務範囲を明確にしたうえで、短時間勤務の人のお給料をカットして、その人の仕事を代わりにこなす人の給料を上げる

短時間勤務等にブーブー文句言う人がいるのは、横並びの年功賃金のままで誰かの仕事減らしたり増やしたりするからなんですね。だから実際に担当する業務に応じて賃金を柔軟に上げ下げして、仕事減った人の賃金を下げて増えた人に回せば、だれも文句は言いません。

3.退職した女医の代わりに中途採用する

当たり前ですけど、だれか退職したら中途採用すればいいんです。生え抜きじゃないと通用しないなんてぬかす職場があったらそっちの責任者クビにして慣行を改めるべきです。

4.育休取った女医の代わりに中途採用し、復職時に誰かを解雇する

同様に、誰かが育休を取得して人手不足になったんなら新規に中途採用すればいいだけです。育休取っていた人が復職したら?その時点で誰かを選んで解雇すればいいでしょう。

5.残業ではなく人員増で対応する

日本企業全般に言えることですが、日本型組織は少数精鋭で残業で対応する傾向が強いものです。そこで人員を増やし、残業は抑制させます。仕事が減ったら誰かを解雇することになりますが、女性の働きやすい職場を作るためなんだから我慢しましょう。

要するに、横並びの基本給をベースに勤続年数で評価するなんてことはやめて、実際の担当業務に応じた職務給にして、中途採用をばんばん行う流動的な人事制度に切り替えるということです。この辺の処方箋は中高年フリーターが正社員採用されない問題への処方箋と同じですね。

【参考リンク】なんで中高年フリーターって正社員採用されないの?と思った時に読む話

〇〇流医術とかやってた時代と違い、医者なんて本来ポータブルな専門職のはずですから、一般企業よりはるかに流動化に馴染みやすいはずですけどね。

でも、たぶん中にはこんな風に考える人もいるでしょうね。
「そんなのは嫌だ、自分たちの年功賃金は手放したくないし、クビになるリスクとか絶対に受け入れられない、今のままがいい」

そういう困った中高年が少なくないから、医大の入り口段階で、女性だけしこしこ減点するなんてことになったんじゃないでしょうか。

それから「勤務医は徹夜や力仕事があるから現場は男性を欲しがるのだ」といった意見には、筆者はあまり賛成できません。というのも後述するように、徹夜や力仕事と縁のない大企業も、やっぱり女性は敬遠してますから。女性が日本型組織から敬遠されるのは、上記のように硬直した労働市場が一番の原因でしょう。

さて、上記のように終身雇用というのは超がつくほどの男社会なのが現実です。ちなみに東大の上野千鶴子センセイなどは「専業主婦は社畜の専属家政婦」などと命名しておられます(筆者が言ったんじゃないですよ!上野センセイですよ!)。

でも、労働組合や左派のお友達の中には少なくない数の女性がいて「終身雇用ばんざーい!」と叫んでおられます。そういう女性たちは今回のような騒動を見て、なんとも思わないんですかね。まあ「市場原理を受け入れるくらいなら女性の学ぶ権利を制限すべき」って言うんなら話は別ですが。

そうそう、ちょうど今、「LGBTは生産性が云々」とか言って絶賛炎上中の某女性議員がいますね。過去には「女性は家庭に入るのが日本の伝統」なんて発言もあった人です。そうしたスタンスに対し、上記のようなリベラルな女性陣は「女性でありながら男社会におもねって出世する女性の敵」みたいな感じでこれでもかってほどに叩きまくってますよね。

でもはっきり言って、筆者のような立場の人間から見れば、某議員も皆さんも「男社会におもねって男社会に囲われてる同じ穴のムジナ」にしか見えませんよという点は、最後に申し述べておこうと思います。

以降、
企業も新卒採用で女性と3浪以上にばっちり減点かましてます
女性の排除は長い目で見れば大きな社会的損失に

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Q:「処遇について会社と個別交渉は出来ますか?」
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Q:「休職歴はその後の人事にどう影響する?」
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2018年8月9日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。