情報通信政策フォーラム(ICPF)では、調査研究レポート「プログラミング教育の進め方:教員の指導力向上を中心に」をサイトに公開しました。レポートの要点は次の通りです。
学習指導要領が改訂され、2020年から小学校においてプログラミング教育が必修化されました。この動きは中学校・高等学校でのプログラミング教育の充実にもつながっていくと期待されます。この施策が成功する鍵は、プログラミング教育への理解醸成と、それに基づく教員の指導力向上にあると調査研究チームは考えました。
プログラミング教育は、論理的思考(力)の育成・コンピュータプログラムとは何かを理解させる・プログラマーを育てるの三段階から構成されますが、義務教育段階では第一・第二段階に力点を置くのが適切です。第一段階ではコンピュータは不要で、どのような教科でも実施できるため、また、小学校教員は基本的に全科目を担当することから、研修は全現職教員を対象に必修として課すのが適切です。
プログラミング教育を速やかに地域に定着させるため、教育事例の交換や教材の流通を行う、インターネットを活用した教員ネットワークを構築する必要があります。現職教員の大半の知識が少ない状況で、学習指導案を作成し教材を用意するのは大きな負担です。授業を終えた後に子どもたちの様子や自分自身の指示や発問などの指導を振り返って成果や課題を明記したうえで、当初の指導案と共に他の教員と共有すれば、それをもとに他の教員はより効果が上がる指導案を開発できます。
教員の新陳代謝が退職と採用によって進む中で教員の指導力を高めていくには、教員養成課程に在籍するすべての学生にプログラミング教育に関する教育方法を必修科目として提供する必要があります。また、各地方公共団体における採用試験の際にはプログラミング教育への指導力を含めた採用基準を設けるのが適切です。
通常学級にいる小中学生1046万人のうち68万人には発達障害の可能性があり、同様に、日本語指導が必要な児童生徒の数は外国籍・日本籍合計で4万人を超えます。これらの子供たちも包摂して、多様な子どもたちがそれぞれの得意分野を中心に個性を発揮しながら協力する協働学習がプログラミング教育の形態として適しています。
全国レベルでこれらの提言を実現するのがもちろん好ましいことですが、教員採用の基準を設けるといった形で、地方公共団体には主導性を発揮できる可能性があります。