海賊版対策検討会議第3回@霞が関。
アジェンダは、正規版流通とこれまでの対策の検証、諸外国の対策についての2点です。
訴訟、警察の取締り、削除要請、ドメイン停止要請、広告対策、フィルタリング、教育・啓発など既存の取組状況がまず共有されました。
4/13の政府・緊急対策決定後の動きとしては、
○漫画村・Anitubeが閉鎖され、広告出稿抑止の取組も本格化して正規版の売上が回復していること
○人々の海賊版への意識が向上し、他の海賊版サイトへのアクセスも激減していること
が報告されました。対策の効果はあったと言ってよいでしょう。
ドワンゴが行ったアンケートでは、法制度の整備によるアクセス遮断(ブロッキング)が必要と考える62%、考えない20%。ネット民でもブロッキング肯定派が多数という結果です。
これをどう受け止めるか。
同アンケートでは、アクセス遮断以外の対策として、広告対策61%、検索表示削除49%、正規版強化47%。重層的な手を打つ総合対策が必要ということでしょうが、これと比べてもブロッキング肯定の意見の多さが目を引きます。
アニメ海賊版対策に力を入れてきたテレビ東京川崎さんは、元来マンガは有料でTVアニメは無料、モデルが違うと指摘したことに関し、講談社野間さんは、出版社は今Amazon型のつど課金、有料サブスクリプション、無料広告の3モデルを使い分けていると解説しました。
野間さんによれば、マンガはデジタルの売上が4割、点数も紙よりうんと多く、正規版は機能しているとのこと。講談社・集英社・小学館ら11社が出資した出版デジタル機構も順調でエグジットしたとのこと。
ネット資源を管理するJPNICが49か国向けアンケートを行ったところ、ブロッキングを71%が導入し、うち著作権侵害を対象とするのは45%の回答。ポルノ37%、犯罪・薬物33%より多いんですね。
文化庁が米英仏独加などの制度について報告。海賊版コンテンツの削除は全ての国に法的措置がある一方、ブロッキングは欧州には制度があるが米・加にはない。米にはドメイン差押えや個人のネット接続禁止があるが英仏独加えにはない。
制度はさまざまという状況です。
オーストラリアの制度について、慶應・奥邨さんが報告。著作権法にブロッキング制度を設け、裁判所による差止命令で発令する。国外のサイトのみを対象とし、ブロッキングのコスト負担は裁判所が決める仕組み。日本で著作権法で導入する場合の論点を提示。
議論が核心に入ってきました。
韓国は獨協大学の張さんが報告。文化体育観光部が放送通信委員会に要求して、情報通信網法に基づいて接続遮断できる制度。日本では文化庁が総務省に要求し、電気通信事業法で措置するイメージですね。韓国では違憲訴訟が起きたが退けられたとのことです。
さて、議論です。
気温35度の中、会議室のエアコンが故障していることもあり、ヒートアップしました。
まず川上量生さんが、インターネットの専門家はブロッキングの効果がないと考えているのか?と問うのに対し、前村さん立石さん村井純さんが効果薄/効果なしと答え、効果があるとする見方と対立しました。
続いて、森亮二さんから4/13緊急対策は現時点では当てはまらないことを決議すべきと提起しました。そうせねばNTTの現場が困っているとの意見もありました。
一方、悪質サイトは3つ以外にも16ほどある、今その旗を下ろす状況にない、啓蒙の効果があり今も重要という意見もありました。これも対立です。
ぼくも4/13当時と状況が変わったと認識しますが、政府が決定した措置であり、解釈を変更するには再度官邸での会合が必要。今それだけを行うのは建設的ではない。この会議は議決機関ではなく、決を取っても効力がない。なので委員みなさんの認識を聞いて、議事録に残すことで引き取りました。
東大・宍戸さんは、フィルタリングの効果の検証、違法ダウンロードを違法化した上での教育の強化など多層的な議論と措置を求めました。村井純共同座長も、ゴールはコンテンツの健全な発展であり、ブロッキングだけではなく総合的な対策の重要性を強調しました。賛成です。
4/13ブロッキングの政府決定は、それ自体によって状況を変えました。そして、それにより、ブロッキングがテーマのワンオブゼムになりました。神経質で重要なテーマではありますが、それだけに引っ張られず、総合的で本格的な枠組みを作ることがミッションです。
議論はいよいよ熱くなってまいります。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2018年8月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。