猛暑でジャーナリズムも脳死した夏

2018年08月22日 06:00

異常気象でニュースが埋まる

連日、テレビや新聞は異常気象の報道に集中し、政治、経済、国際問題は片隅に追いやられてきました。自民党総裁選挙が近づき、安倍政権は下げ止まりかけた支持率に影響を与える政治、経済報道が少なくほっとしていたでしょう。

モリカケ学園問題に世論に飽きがきたところへ、東京医大の不正入試、ボクシング連盟の助成金流用、不正審判問題が浮上し矛先が変わりました。これで政治問題の追及への関心がそらされました。偶然にしてはよくできた流れです。タイミングよく新たな不祥事が浮上してくるものです。

首相官邸サイトより:編集部

明らかに偶然なのは、豪雨災害です。西日本豪雨災害の時、政府は特定非常災害に指定し、自衛隊を含め、全省挙げて対策に取り組みました。世界で猛威をふるった異常気象は、地球温暖化に大きな原因があり、日本ばかりの責任ではありません。ですから首相は会議を開き、現地を視察し、なにやら指示している様子をテレビで流せば、現場に出かけよくやっているという印象を世論に与え、政権支持率を稼げます。

政権にとって空白の時間

テレビは豪雨、台風、洪水、被災地の様子を映像にして流せば、視聴率はある程度、稼げますし、発生したことを報道すればいいのです。政治スキャンダルのように、神経を遣わずに済みます。取材陣をあちこちの各本社、支社、支局から総動員しますから、他の取材は二の次になります。政権にとっては、ラッキーな空白の時間を与えられたということになるのです。

総裁選に出馬を表明している石破氏が「これだけ自然災害が多くなると、米国のような災害庁を創設すべきだ」と、提言しました。これはタイミングのいい提案です。本来なら、無策で批判を受けている野党も率先して声を上げるべきテーマです。それに対し、首相官邸は乗り気を見せていません。

脳死していない米メディア

安倍首相側には、総裁選のライバルに先を越されたという意識があるのかもしれません。災害襲来の度に、官邸で大会議を開き、四方八方に指示をだす姿を放映させたいのでしょうか。本来なら、2020年の東京五輪に間に合うように、災害対策専門の部署を作っておくべきです。テレビ、新聞は米国の連邦緊急事態管理庁(FEMA)を取材して、報告すべきです。日本のメディアは政策論に弱いのです。

地球規模の自然災害には、自然界の周期もあるにせよ、地球温暖化が大きな要因でしょう。トランプ氏は地球環境の保全には後ろ向きで、環境保護局の研究員や職員に「研究成果を一切、外部に公表するなとの命令をだしている」そうです。人事まで自分の色で染めようとしています。

環境問題に限らず、何かにつけトランプ氏は、メディアは嘘をつく国民の敵と攻撃しています。それに対し、全米の300紙以上が一斉に社説を掲載し、大統領を批判しました。これだけの数の新聞社が団結するのは異例です。米国も猛暑なのに、脳死状態ではないようです。

日本では、温暖化を抑止するには、原発(新増設、建て替え、再稼働)と、再生可能エネルギーの推進(エネルギーミックス)が不可欠です。それなのに、どの程度の比率でエネルギー基本計画をつくるのか、あいまいです。政府は原発の将来は先細りが必至だし、再生可能エネルギーは目標値を作っても自信が持てないとみて、「なるようにしかならない」が本音でしょう。

最後は、サマータイムの導入です。猛暑に驚き、大会組織委員会の森会長が安倍首相と会談し、五輪の屋外競技のために、日本の標準時間を2時間早め、マラソンは午前5時の開始とするという算段です。どこか変なのは、マラソンのスタート時間だけを午前5時にすれば解決する話なのに、なぜサマータイムを持ち出すのか。

国民を早起きさせ、テレビを見てもらえば、視聴率が上がる。テレビの視聴率対策でしょうか。テレビ、新聞社は開催者側なので、こういう問題には批判的な態度はとらず、どこか遠慮がちなのです。それにしても、東京五輪が決まった時にすぐ検討開始すべきなのに、なぜ今ごろになってからなのでしょうか。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2018年8月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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