なぜ中野サンプラザを建て替える必要があるか? --- 加藤 拓磨

2018年09月13日 06:00

2018年6月10日投票の中野区長選挙では、中野サンプラザの今後のあり方が争点となった。当選した酒井直人区長は6月15日の区長就任記者会見において、区役所・サンプラザ地区の再開発構想は検証委員会を設立し、「今のサンプラザを建て替える、建て替えないを含めて、かつ1万人アリーナ全体について考えてもらえればいい(※1)」と述べ、サンプラザの今後のあり方について区民との対話で議論をする方針を打ち立てた。

そして同年8月21日に既存の区役所・サンプラザ地区再整備推進区民会議のメンバー・内容をマイナーチェンジし、議論が始まった。9月11日の中野区議会本会議において、区長より再整備の方針が打ち出されたとの報道があった(※2)。本会議場で答弁を聞いていると再整備を決定したと明言はしていないものの、多くの人はそう感じるニュアンスの表現だった。検証を始めたばかりにも関わらず、すぐに結論めいた発言があったことに憤りを感じる人もいただろう。

しかし状況を踏まえれば、中野サンプラザは再整備が最も合理的という結論に帰結する。

中野区行政と中野区議会における中野サンプラザ運営のあり方についての議論は16年前に遡る。

中野サンプラザは45年前の1973年に雇用促進事業団の勤労者福祉施設として建設された。正式名称は全国勤労青少年会館で、中野サンプラザは通称であった。

建設当時の中野サンプラザ

2002年には特殊法人等のあり方が問われる中、独立行政法人雇用・能力開発機構が所有し、財団法人勤労者福祉振興財団が運営していた中野サンプラザについて、区に譲渡についての打診があった。

交渉の結果、当時の中野サンプラザ土地・建物の評価額の半額の約53億円で譲渡されることになったが、条件として①取得後、10年間の公共性のある運営の継続②中野サンプラザに勤務している職員の雇用の継続、となった。

半額での譲渡のため、50億円以上の含み益があったが、神山好一区長(1986−2002年)時代に区の貯金は100億円を下回っており、中野区単独で資金調達することが困難であった。そのため地元民間企業等のグループと所有会社を作り、中野サンプラザの経営権を2004年に持つことになった。

そして紆余曲折があり、のちに中野区が所有会社の100%の株を取得をし、完全主導の運営となる。

中野サンプラザの運営の歴史 ※3・4

図 基金残高(区の貯金)の推移 ※6

2011年に財務的な整理をし、中野区は中野サンプラザを所有する株式会社まちづくり中野21の株式100%を取得する。そして同社は48億円程度の長期借入(借金)をし、改めて中野サンプラザを所有し、運営を継続することとなった。それ以来、純利益は黒字で純資産比率は上昇しているが現在築45年の建物を維持するためには長寿命化の工事が必要となる。

図 株式会社まちづくり中野21(中野サンプラザ所有会社)の資産推移
(資料データ※4から著者作成)

区は9月7日の第6回区役所・サンプラザ地区再整備推進区民会議において中野サンプラザを今後15年後の2033年まで長寿命化するためには32.2億円のコストがかかると説明した。上図のように利益が現状ベースである仮定で試算しても、2033年に実質の借金は全く減ることはない。

サンプラザ譲渡の打診があった際、区は区内一等地の権利は欲したが、条件の10年以上の運営をした現在において、これ以上の運営の継続を望むものではない。中野区がリスクを背負って、つまり中野区民の大切な税金を危険に晒してまで、中野サンプラザの経営を維持する必要があるのかが昔から問われている。

図 中野サンプラザの長寿命化を行う場合の検討 ※7

また中野サンプラザの再開発には中野区政において、もうひとつ大きな意味合いがある。現・区役所土地建物(従前評価175億円)と現・サンプラザ土地建物(従前評価275億円)を合わせ、市街地再開発事業における権利変換によって生まれる利益で、築48年の中野区役所を建て替えるための新区役所整備費(221億円)を充当させる計画である。

図 区有地等資産活用のイメージ ※7

図 中野駅周辺各地区事業との関係性について ※7

中野区の一般会計予算は1400億円程度であり、簡単に捻出できる金額ではない。新区役所整備費の捻出のために、再開発事業による利益を最大限にするため、区役所・サンプラザ地区再整備の事業構築に係る民間事業者をコンペで選定し、民間活力を活かすこととした。アリーナありきというわけではなく、民間の知恵として収益を最大限とする施設の一案である。

またJR中野駅西口改札の整備計画があるが、すべての事業が連動しているため、中野サンプラザ再整備がストップすると西口の完成は見られない。都市計画は長期に渡るプロセスがあり、慣性力が強く簡単に変更ができるようなものではない。

図 再整備事業計画策定に向けた検討状況
~都市基盤及び施設配置イメージ~ ※8

そして10月には西口改札の整備に向けて、支障物を撤去するための工事が始まることになっている……。

加藤拓磨
加藤 拓磨(たくま)中野区議会議員
1979年東京都中野区生まれ。中央大学大学院理工学研究科 土木工学専攻、博士(工学)取得。国土交通省国土技術政策総合研究所、一般財団法人国土技術研究センターで気候変動、ゲリラ豪雨、防災・減災の研究に従事。2015年中野区議選で初当選。Facebook Twitter HP

参考資料(※)
1.中野区長就任記者会見動画
2.NHKニュース「「中野サンプラザ」 区長 計画どおり取り壊す方針を示す」
3.目で見る中野区の100年―写真が語る激動のふるさと一世紀,郷土出版社,pp.187
4.中野サンプラザ取得・運営等事業について
5.中野サンプラザ取得・運営等事業の枠組み変更について
6.中野区の財政白書〈概要版〉
7.区役所・サンプラザ地区再整備推進区民会議[第6回資料2]
8.平成30年8月30日建設委員会報告「中野駅新北口駅前エリア再整備の検討状況について」

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