「ブランド」を誤解する人たち:南青山児童相談所建設騒動

2018年10月20日 06:00

港区南青山に児童相談所を含む「子ども家庭総合支援センター」を開設する計画が騒動になっている。

交流のための子ども家庭支援センター、児童相談所、虐待にあった子どもの保護施設、DV被害者を一時保護する母子生活支援施設を含めた多機能施設を建設する計画、事業費約100億円、

特に、住民が建設に反対している。なぜ南青山なのか?という立地への反対、治安悪化からの反対、街の価値が下がる、ブランドが下がるなどの感情的反対、説明不足・建設費の多額さなど手続きへの反対などなど。

これに対して、ネットが大反発。「プライド持ちすぎ」「一部のセレブが価値を下げている」などの痛烈な批判が殺到。

手元にある青山通り周辺地区まちづくりガイドラインには「未来に受け継ぐ気品とにぎわいのまち 青山」とある。

しかし、気品どころか、セレブな空間に住む方々の余裕すら感じられない反対論に個人的にとっても悲しくなった。特に、南青山のようなところに住む、センスの高い、洗練された方々が、社会の包摂性への賛同を示さないこと、社会問題への関心の低さを示すところに、日本のセレブやエリートの残念さを感じるのだ。

地域のブランド価値を誤解するかわいそうな人たち?

平穏な街並みに少しでも変化がある訳で、反対住民の言い分もわかる。また、ネットの批判も当然である(個人的にはこちらに私も近い)。

しかし「世界的なブランドが集まる青山に…」という反対住民の言い分にこの日本社会の「勝ち組」がはらむ問題を感じる。建前は「必要だけど」、本音は「自分の近くに作ってほしくない」というもの。自分だけがよければよい、社会の一員であることを忘れた姿勢には、(南青山に住めるような)資本主義の勝者になるためにはそういうマインドになることが必要なのか、と皮肉を言いたくなる。

反対住民はブランド価値を誤解しているという意味で、とっても、かわいそうな存在だ。煌びやかさ、ゴージャスさ、洗練された美しさ、着飾った裕福な金持ちだけが居住し、闊歩する街が理想なのだろうか。

かっこいい建築、心躍るデザイン、しゃれた社交場やレストランなど、お金の匂いとクリエイティブの香りの奇妙な同居する街が好きなのだろうか。

苦しむ人がまだ多くいる世界において、しゃれたブランドを着飾った人々だけが自信満々に闊歩し、きらびやかなものに囲まれて自分だけが心を満足させるだけの街が「ブランド」なのだろうか。

たぶん、それが彼ら・彼女らが求めるものなのかもしれない。

厳しい言い方をすれば、うすっぺらいセレブ感であり、心の貧困さを表している。恵まれない人への関心も少なく、難しい社会問題の担い手との意欲すらないし、引き受けることすら拒絶しているようにも思えてしまう。心から同情する。

問題は高所得層の社会問題への理解の低さ

国際的な商業地であり、ブランドが集まる街なのに!にという方々は、南青山に店舗を構える世界的なブランドのCSR・サスティナビリティ報告書を読まれたことがあるかを聞いてみたい。

例えば、プラダ。

そこには、恵まれない人への優しいまなざし、何かで貢献できないかを考える視座、社会問題への関心・コミットメントが言及されている。

そう、もう時代は変わっているのだ。高級ブランドも社会問題に関心を寄せているのだ。

確かに、身を粉にして一生懸命働き(先代かもしれないが)、仕事で成功するなどして、南青山に住める「資格」を持つに至ったことは尊敬に値する。

一方で、自分のプライドの置き場を「南青山に住む自分」に置くかわいそうな人たちなのだとも思える。南青山のようなかっこいい場所に住んでいる自分を愛し、自分をよく見せる「成功者」が自分たちに酔っている間に、時代は先に向かっていることに気付いてほしい。

自分たち家族、関係する人がお世話に可能性もあることへの想像ができない人たちが住む町とみなされたら、中長期的なブランド価値は棄損するかもしれませんね。

今後の可能性も

カリフォルニア大学アーバイン校の研究チームによる調査によると「高所得層は自己中心」「金持ちは、「自分は自立していて他人とは違う」と感じさせる感情を重視する傾向がある」とのこと。まさに今回感じるのはこういうことである。

以上、かなり、かなり厳しい意見になったが、自分の周りにも一定数いる人たちへ直接言いずらいのでこうして文章にして勇気を出してアドバイスを送ることにしました(気分を害したらごめんなさい)。

ただし、今回、大変な騒動になってしまったが、ピンチはチャンスでもある。住民の方も、少しは反省している、反省しなくても何とも言えない違和感を感じているだろう。

こうした方には、そもそも、南青山に住めるだけのお金持ちになれたというのはどういうことなのか?社会において恵まれた人の責任って何なのか?を考えて欲しい。

港区は勉強会を進めていく方向性だそうで、心から期待したい。「まちづくり」とは何かを基本から学ぶのはもちろん、深刻な社会問題を皆で一緒に考えていく契機になるワークショップなどを積み重ねて欲しい。

反対住民にも、港区や日本社会が抱える問題を知り、学び、区と協働するなど、日本を代表する素敵な街の住民としてのシビックプライドを見せて欲しい。

反対住民がこの施設の意味、児童虐待問題の本質を理解することこそ、ソーシャルイノベーションへの一歩である。

港区と反対住民に期待したい。

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西村 健
日本公共利益研究所 代表・主席研究員

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