仮想通貨とブロックチェーン、そのリスクは?

2018年10月25日 11:30

ぼくが理事長を務める社団法人ニューメディアリスク協会の主催で「仮想通貨・ブロックチェーンフォーラム2018」を開催しました。
仮想通貨やブロックチェーン、ICOのリスクについて議論するという実に硬いテーマでありながら、さほど宣伝をしていないのに700名の会場がまたたく間に満席となり、この分野への関心の高さを認識しました。

村井英樹内閣府大臣政務官がごあいさつ。
「仮想通貨、ICO、ブロックチェーンといったフィンテック分野が発展する一方、リスクも高まっている。政府は未来投資戦略でIoT、ビッグデータ、AI、シェアリングエコノミー、そしてフィンテックに着目している。
仮想通貨交換事業者の登録制を世界に先駆けて実施したが、ブロックチェーン技術の発展とリスクのバランスを取ることが重要だ。」
政府としての力こぶを示しました。

フィンテック、仮想通貨、ICO、ブロックチェーン、スマートコントラクト、情報銀行に関し、それぞれ専門家から解説いただいた後、パネルディスカッション「仮想通貨・ICOにおけるリスクとは?」を行いました。
パネラーは金融庁の水口純審議官、ビットポイントジャパン小田玄紀さん、Aerial Partners 沼澤健人さん、AnyPay山田悠太郎さん、アンダーソン・毛利・友常法律事務所 河合健さん。ぼくがモデレーターを務めました。

まず、仮想通貨について。
ビットコインは2017年の取引額が10兆円に達する成長を見せています。2017年4月には改正資金決済法が施行され、制度も整備されました。
2014年にMt.Goxが閉鎖されるなどの出来事を背景に、仮想通貨や取引所への対応の議論が始まり、法制定に至ったものです。仮想通貨が定義され、取引所の登録制が敷かれました。

こういう制度を持つのは日本のみ(河合さん)。その後、仮想通貨の口座開設数が増加しましたが、その背景は法制度の整備をきっかけにマスコミでも話題が高まったから(小田さん)とのことです。

同時に、価格変動リスクだけでなく、サギ、マネロンなどのリスクも高まりました。金融庁は専門家を集めモニタリング30人チームを立ち上げました(水口さん)。30人は政府のチームとしては大きく、本気度が伺えます。一方、交換所など民間も証券会社並みのリスク対応策が求められる(小田さん)との指摘も。

ただ、仮想通貨は主に投機目的で使われています。どうすれば支払手段に使われるのか。
そこで議論になったのが税制。仮想通貨に関する税処理や申告が大変(沼澤・河合さん)という指摘です。国税庁もQ&Aで方針を発出していますが、わかりやすくすること、税制を整備することが大きなポイントです。

1月にはコインチェック社のNEM流出事件が発生、取引所での流出リスクが議論になりました。ウォレットアプリが増えてきており、手元のアプリに入れておくと安心という風潮もあります。でも銀行(取引所)に預けるのとタンス預金の関係であり、安全性については一長一短という議論がありました。

後半はICO、イニシャル・コイン・オファリング。
仮想通貨(トークン)による起業・IPOです。
世界で4500億円ほどの投資がなされ、すばやく巨額なリスクマネーが集まることで注目されています。
孫泰蔵さんは「ICOやクラウドファンディングが発達すればVCは要らなくなる」と言い切ります。

ただ、日本ではICOの位置づけがまだ不明確であり、議論されている段階。案件も玉石混交(河合さん)という状況です。
権利が明確でなく、投資が無価値となる可能性が大きいことや、資金洗浄やサギの恐れも指摘されています。

小田さんは、サギ、プロジェクトの失敗を懸念事項として掲げます。
小田さんの発言で気になったのは、ICOに関し「日本への不信感」が高まっているということ。ジャパン・パッシングが起きているという指摘です。先駆的な法律を作ったものの、結局しばりが強く動かない、と。
山田さんも呼応し、日本は結局手を出しにくい市場とみなされていると言います。

でも、ICO件の数は増えていて、いい案件も増えている(山田さん)。つまり地合いはいい。これを伸ばすには、明確なルールの設定とベストプラクティスの共有が大事とみなさん指摘します。
国に期待することもありながら、ブロックチェーン企業が積極的に開示するなど自ら範を示すべき(沼澤さん)、いけてるビジネスを作ろう(山田さん)、フォワードルッキングで民間がしっかりしよう(河合さん)。民間の対応が重要という認識も一致しました。

これに対し金融庁水口さんは、ICOや仮想通貨の研究会を設けたので、実態を踏まえ方向性を見極めたく、自主規制など民間の動きも期待する、とのことです。

期待・成長するが課題も多い。事業者、資金の出し手・使い手も気をつけることが多い。政府も力を入れており、官民連携も重要。議論を通じ、そうした実態が共有できました。
この1年で大きく動いた市場ですが、1年後はもっと大きく変化しているでしょう。
またこんな座組でやりましょう。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2018年10月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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