小池百合子、ついに降伏か。都民ファーストの会の動揺必至

新田 哲史

東京都の小池百合子知事は5日、2年前の都知事選以来、激しく対立してきた都議会自民党の高島直樹幹事長らと会談し、都の減収につながる地方法人税見直しに対抗すべく協力を要請した。この日の会談は、同席した自民党の二階幹事長の仲介で実現したとされるが、産経新聞が5日夜、小池知事が高島都議との会談の際に「一連の自民党都連批判について陳謝」したと報じたことで都民ファーストの会内部に動揺が走っている。

官邸サイト、高島氏FBより

「小池・高島」会談はNHKの夕刻の首都圏ニュースでも報道されたが、陳謝には触れていない。この陳謝がどのようなレベルだったか、会談のやりとりを産経新聞に漏らした「関係者」が都議会自民党サイドで、小池氏が頭を下げたことを強調する思惑があった可能性は当然考えられる。ニュアンスの違いもありうるので小池氏側がきょう6日以降、ぶら下がり会見などで「火消し」に走るかもしれない。

しかし、そもそも会談を仲介した二階氏は和歌山県選出の自民党最大の実力者であり、「ザ・地方の声」そのもののような存在だ。地方への税源移譲に歯止めをかけたい東京都政のために積極的に便宜をはかるとも思えず、この会談は、どちらかといえば、崖っぷちの小池氏の面目を立てるための政治的な儀式だった意味合いが非常に強い。

逆に小池氏としては、もし陳謝したのであれば、「負けるが勝ち」の思いでここは頭を下げ、オリンピック開幕直前の都知事選の任期特例扱いなど、政治的な「実」を取りに行くための布石のつもりなのかもしれない。しかし、それであったとしても、衆院選の折に、希望の党を結党して安倍政権に取って代わろうとした「全面対決」の頃のような政治的主導権をもはや有していないのは確かだ。

いずれにしろ、外形的な事実だけを見れば、小池氏の「政治的保身」の意味合いが強く印象として残りかねない構図だった。

気の毒なのは総大将が先に白旗を掲げたとも言える都民ファーストの都議たちだ。会談のニュースが流れた5日夜、党内では「(自民党と全面対決した)都議選は一体何だったのだろうか」などと動揺が大きく走っていた模様だ。

大河ドラマ「西郷どん」を毎週見ている筆者には、彼らの姿が、鳥羽伏見の戦いから大阪城に敗走し、総大将の徳川慶喜に夜逃げされた幕府軍と重なってみえてしまった。

以前も書いたように、内紛で亀裂が深まる都民ファーストの会は現在、次の4つのグループがある。

①荒木執行部グループ(荒木千陽代表、増子博樹幹事長など)

②反執行部グループ穏健派(党内残留、代表交代して都民ファーストを実現)

③反執行部グループ強硬派(会派離脱も辞さず)

④抗争に距離を置く、中立 or 冷ややかにみているグループ

ハシゴを外された格好の①の執行部周辺は言葉尻だけの火消しに走るだろうが、実効性のある対応は何もできまい。今回の混乱に乗じて②や③が具体的にどう行動するかに焦点が移ろうとしている。そして、人数で特に多いと見られる④についても、総大将が先に屈服となれば、さすがにいつまでも無関心ではいられまい。

熱狂に包まれた都知事選から827日。深まる晩秋の落日を思わせる2018年11月5日は、あとになってみて、小池都政の対決路線が事実上、終焉した節目の日として刻まれるかもしれない。