オープンデータから始まる行政改革

先の記事『行政は無能なのか』に書いたように、数値に基づいて事業の必要性・有効性・効率性を評価して不足点を自己改善していくのが、行政事業レビューの特徴である。レビューによって行政の透明性が増すとともに説明責任が果たされていく。

透明性を増すことで行政の高度化・効率化を図ろうというのは『オープンデータ戦略』でも同様である。『官民データ活用推進基本法』第十一条は「国及び地方公共団体は、自らが保有する官民データについて、個人及び法人の権利利益、国の安全等が害されることのないようにしつつ、国民がインターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて容易に利用できるよう、必要な措置を講ずるものとする。」と定めている。「自らが保有する官民データを」「容易に利用できるよう」にというのは、すなわちオープンデータ戦略である。

政府はオープンデータのカタログや活用例を特設サイトで公開している。たとえば、メタボリックシンドロームのデータから、該当者割合が岐阜県12.9%に対して、沖縄県17.5%と大きな差があることに気付く。予備群の割合も岐阜県10.5%・沖縄県14.6%と同様である。

この差は食生活が原因なのだろうか。日常生活で自動車を多用するといった生活習慣の問題なのか。それとも単に体のサイズが違うからなのか。メタボリックシンドロームを改善する事業を展開するには、原因を知らなければならない。そのために、メタボリックシンドロームのデータと食生活や生活習慣のデータとが相関しているか、まず分析することになる。

しかし、相関はあっても原因がそこにあるとは限らない。岩手県は県民の健康寿命延伸のために減塩を訴えている。しかし、減塩の是非については,医学界でも問題提起されているのが現状だそうだ。因果関係がないのであれば、あるいは高血圧予防には有効だが他には悪影響を及ぼすようであれば、岩手県の減塩推進事業に疑問符がつく。

各種データがオープンデータとして公開され、かつ、オープンデータ同士を結び付けられるようになっていると、上に説明した分析を民間でも行えるようになる。これをLinked Open Data(LOD)と総称する。それによって行政事業の立案や実施の過程に民間の知恵が取り入れられるようになり、事業の有効化・効率化、ひいては行政改革に結びついていく。オープンデータから行政改革をスタートさせることができる。

11月28日のICPFでは、LODを用いて健康医療介護事業を解析した結果について講演いただく。どうぞ、皆さんご参加ください。