ゴーン逮捕と解任は日本の司法制度の自殺行為か(追記あり)

2018年11月22日 11:30

【文末に追記あり:27日朝】

企業の取締役会での少数派が、司法取引などを利用して、検察に多数派の複数の取締役を告発して逮捕させ、その拘留中に取締役会で多数派を解任するというのはいかがなものか。

Wikipedia:編集部

とくに今回の場合、これまでの常識からして、身柄拘束するようなものでないので、検察が会社乗っ取りに協力したようなイメージがある。日仏間の深刻な国際問題に発展する可能性も強い。22日にパリでルメール経済相と世耕経産相が会談するようだが、厳しい抗議に近いものがされるのではないか。

もともと、日本では逮捕することが、しばしば、罰則同様の効果を生むことが多い。逮捕されたことによる不名誉、拘留中の行動制限の厳しさ、罪状を認めない場合の安易な勾留継続など先進国で異例だ。

もちろん、これは、日本人被疑者に対しても問題で、逮捕されずに有罪で執行猶予になるより、逮捕されて起訴猶予とか不起訴、無罪になるほうがよほどダメージが大きかったりする。日米地位協定の改正の難しさの背景にもこうしたこともある。

しかし、外国の有名人に対して発動したことで、日本の司法制度への批判が高まる可能性が高いがそれは良いことかもしれない。これを機会に検察制度が国際的な常識に沿ったものになればいいことだ。

さらに、今回は、金取法違反で逮捕拘留が異例だということも問題だ。日本ではこういう場合には逮捕されるのが普通だとも説明できず、外資系企業の民族派クーデターに検察が超法規的に協力したと批判されても仕方ない。

しかも、取締役会で5:4で多数派を占める側のうち二人を逮捕して、4:3で取締役会を開き人事を行い、クーデターを行い、新体制で重要な決定を行ったりしたら、検察もグルになった会社乗っ取りだとルノー側から見なされるのも当然だ。

ルノーの場合と同じく、代表取締役の解任は行わず業務停止にとどめ、とりあえず、重要な決定は行うべきでないと思う。

愚かなことをすると日本の会社制度に対する信頼を失わせ、日本経済に甚大な不利益をもたらす可能性がある。とくに、アメリカとヨーロッパとが声を揃えることになると非常にまずい状況になる。アメリカの横暴に対抗するためには、ヨーロッパは味方に付けておくことが日本にとっては生命線なのだ。

いずれにせよ、この問題について、日本政府は民間企業の問題とかいって逃げるべきでない。検察が荷担しているように見えて、政府は知らないではアンフェアとしかみえない。

水道民営化についてもひとこと

それから、フランス企業とのあいだの問題では、水道民営化にたいする批判もしばしば、聞くに堪えないものがある。地方自治体にとっての選択肢として水道事業の一部を民営化するという選択肢を設けることがどうして「命にかかわる」問題なのか説明不能だ。

あくまでも選択肢のひとつにするだけだし、ダメなら再公有化すればいいだけのことだ。水道が特別に命にかかわるわけでない。それなら、医療や介護、保育など多くの分野において私立はすべて否定されるべきだから理屈になっていない。

水道の問題は、すでに40年ほど前から、フランスから、日本はアメリカが強い分野は開放するのに、フランスが強い分野は鎖国しているといわれて、日本に対する敵意の原因になり、それが日本の国益を厳しく害して来た。

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【追記:27日10:00】本投稿に関連して『「ゴーン逮捕と解任は日本の司法制度の自殺行為」などではない』と題する投稿が元官僚・元代議士・現弁護士の方によってなされている。とくに反論などするほどの内容のものでもないので、あらためて反論の投稿はしないが、本稿にリンクが張られているのて、コメントを追記しておく。

そもそも不記載だけで逮捕まで普通しないうえに、記載の必要があったかもアゴラで各氏から出されているように議論がある案件であって、それを「悪質な隠蔽・仮装工作が行われていた」と決めつけるかも疑問だし、「殆ど日本の国外にあってその所在を掴み難い外国人について証拠隠滅の虞や海外逃亡の虞があると司法当局が認定しても何の不思議もない」というが、カルロス・ゴーン氏が、「殆ど日本の国外にあってその所在を掴み難い外国人」とはいえまい。

三重国籍のゴーン氏だから犯罪人引き渡しを要求してもそう簡単ではないこともありうるが、そうなったときにゴーン氏が何も失うものがないような立場でもない。これでは、外国人なら日本人なら逮捕しないケースでも片っ端から逮捕して良いような主張と誤解されかねないので、現在や元のご職業がらも大胆な主張とお見受けする。

証拠隠滅といっても、やりとりされたメールなど逮捕しなくても発見できるし消されても復元出来る性質のもので逮捕が不可欠とも思えない。

「日産の経営陣と検察当局が結託してカルロス・ゴーン氏を逮捕したのではないか、というのはかなり筋の悪い憶測以外のものでなく」というが、「結託」などという表現を私は使っていない。私は弁護士ではないが、法学部でそれなりに良い学生だったし、公務員だったから、そんな粗雑な言葉遣いはしないのであって、そういう言葉ないしそれと同義の言葉を使ったがごとく書かれるのは心外だ。

私が書いているのは、「日産の経営陣が検察当局を動かして、カルロス・ゴーン氏を逮捕するように仕向けたと疑われても仕方ないのでないか」という趣旨から外れるものでなく、とても筋の良い分析といっていただけるはずのものだ。

「あたかも検察当局がカルロス・ゴーン氏解任の筋書きを描いたかのように言うのは、明らかに間違いである」と書かれているが、「検察当局がカルロス・ゴーン氏解任の筋書きを描いた」などといい加減なこと書いてないものを、「かのように」といって妄想で書かれても困る。

「ゴーン氏の解任は逮捕された2人の取締役を除く取締役全員一致での解任なので」、フランス人重役も納得したかのように書いているが、多数派を失ったルノー側が、会長後任選びを遅らせるなどの条件闘争をしたようでもあり、なにも納得したかどうかは分からない。取締役会の議論の報道は西川社長側からリークされているだけなので、信用するに値しないのは、「ゴーン後任はフランス人と仏経済相が言明」でも指摘しているので、あらたに出している視点も含めて、そちらをご覧頂いたらいいと思う。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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