「ゴーン逮捕と解任は日本の司法制度の自殺行為か」なる一文を拝見したが、これはどうやら一言申し上げておいた方がよさそうである。
単なる不記載であれば、何かの手違いだろうぐらいに見做して慎重に捜査すればいいのだが、日産の内部調査で、悪質な隠蔽・仮装工作が行われていたという事実が具体的な証拠をもって確認されていた、ということであれば、殆ど日本の国外にあってその所在を掴み難い外国人について証拠隠滅の虞や海外逃亡の虞があると司法当局が認定しても何の不思議もない。
20億円の報酬を受けるのが当然だと認識していた被疑者が、配下の腹心に具体的に当該報酬の支払いを合法化するための工作を指示していたという証拠が確保されていたのだとしたら、その証拠が破棄されたり、関係者の間で口裏工作がなされないように強制捜査の手続きを踏むことには何の不審もない。
検察当局は、あくまで法と証拠に基づいてカルロス・ゴーン氏の逮捕に踏み切ったに過ぎず、この手続き自体には何の瑕疵もない。
日産の経営陣と検察当局が結託してカルロス・ゴーン氏を逮捕したのではないか、というのはかなり筋の悪い憶測以外のものでなく、まして、カルロス・ゴーン氏の解任は逮捕された2人の取締役を除く取締役全員一致での解任なので、あたかも検察当局がカルロス・ゴーン氏解任の筋書きを描いたかのように言うのは、明らかに間違いである。
この事件でもって、日本の司法制度の自殺か?などと煽り立てるのは、どう見ても失当である。
結構社会に影響力のある方の論評なので、あえて苦言を呈しておく。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年11月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。