消費増税対策の自治体ポイント加算には難題が山積

有地 浩

自民党の経済成長戦略本部は、来年10月の消費税率引き上げに伴う経済対策の提言をまとめ、11月22日に安倍首相に提出したが、その中で、マイナンバーカードの取得者に地域の商店街などでの買い物に使える「自治体ポイント」を一定額加算する措置を盛り込んだ。

自治体ポイントは、各自治体の自主財源でボランティアをした人などに与えられるものに加えて、クレジットカードのポイントや航空券のマイレージなどと交換して得ることが出来るが、これにさらにマイナンバーカードの取得に対して一定額を付与しようというものだ。

しかし、自治体ポイント案が消費税増税対策として期待されるような効果を発揮するためには、乗り越えるべき障害は多い。

そもそもマイナンバーカードの発行枚数が、総務省の資料によれば今年7月時点で約1500万枚で、人口比で約12%と少ない。しかしだからこそ今回の措置でマイナンバーカード取得を後押ししようというのだろうが、現状ではお店での利用者が少なく、お店にとってのメリットが小さい。また、自治体ポイント制度に参加している自治体がまだ全国で約70自治体しかなく、自治体ポイントの存在を知らない人が多いことも、この施策の成功に向けてのハードルとなっている。

しかし、自治体ポイントの普及にとって最も大きな障害は、ITに通じた人でさえ煩わしく感じられる、取得までの手続きが煩瑣なことだ。

自治体ポイントを使って買い物をする場合、まず自分のパソコンに所定のソフトウェアをダウンロードした上で、カードリーダーかブルートゥース機能でパソコンに接続したスマホを使って、パソコンにマイナンバーカードを読み込ませ、マイキーIDを作成する必要がある。そして、このマイキーIDとパスワードを使って自治体ポイント等を管理するマイキープラットフォームにログインして、予め自分の持っているクレジットカード等のサイトでポイントやマイレージから変換しておいた地域経済応援ポイントを、自分が使いたい自治体固有のポイントに変換することになる。

多くの人はここまで読んだだけで手続きの面倒さに自治体ポイント獲得の意欲が萎えてしまうのではなかろうか。

しかし、なんとかこうした試練を乗り越えた人にも、さらなる困難が待ち受けている。

自治体ポイントを使ったネットでの商品の購入は、通常のクレジットカードやポイントでの支払いと同様に比較的抵抗なくできると思うが、商店街等のリアルの店舗での商品等の購入のために自治体ポイントを使うとなると、状況は違ってくる。

よく指摘されるマイナンバーカードの最大の欠陥は、カードの券面に個人番号が記載されている一方で、それをみだらに他人に見られないようにしなくてはならないということだ。このために、せっかくマイナンバーを取得してもなかなかそれを使用する気にならず、死蔵している人が多いと思う。

それなのに、自治体ポイントをリアル店舗で利用しようとすると、お店のカードリーダーにマイナンバーカードを差し込んだり、かざしたりしなくてはいけない。これではお店に行くまでにマイナンバーカードを落としたり紛失する危険がある上に、お店で個人番号が記載されたマイナンバーカードを店員さんの目の前でカードリーダーに差し込んだり、かざしたりするとなると、盗撮されないかなど心配になる。

はっきり言って、マイナンバーカードを使った自治体ポイント制度はまだまだ発展途上で改良の余地が大きいと言わざるを得ない。

今後の改良の方向としては、もっと利用者目線に立って手続きを簡素化し、例えば、マイキーIDを取得するのにスマホにアプリをダウンロードして、そのスマホに自分のマイナンバーカードをかざせばマイキー作成が済むようにしたり、お店に行くときはマイナンバーカードではなく、マイキーIDを入れたスマホを持って、お店のタブレット(これもアプリをダウンロードするだけで済むようにする)にスマホのQRコードを読み取らせるだけで済むようにするといったことをする必要がある。もちろん不正を防ぐために、そのQRコードには暗号化などの不正防止策を講じておくことは言うまでもない。

報道によれば、マイナンバーカード取得者に自治体ポイントを付与する施策は2020年4月より実施される見込みだ。それまでに残された時間は少ないが、こうした欠点を克服することができるかどうかが、自治体ポイントによる地域経済応援策の成否のカギとなるだろう。