消費増税対策のポイント還元はPayPayの二の舞にならないか?

2018年12月23日 06:00

燃料税増税反対から始まったフランスの黄色いベスト運動は、10日にマクロン大統領がテレビを通じて、最低賃金の月約1万円の引上げ等の懐柔策を発表した結果、クリスマス休暇が近いことも重なって、ようやく下火に向かっている。

17世紀後半に太陽王ルイ14世の財務大臣をしたコルベールは、「税金を取る技術は、ガチョウができるだけ鳴き声を立てないようにして、できるだけたくさんの羽をむしることにある」と言ったが、マクロン大統領に求められるのはまさにこうした一種の手練手管だろう。

PayPay公式サイト(キャンペーンは現在終了)、経済産業省サイトより:編集部

増税が政権にとって慎重に行うべき政策課題であるのは、フランスだけに限ったことではなく、日本でも同じだ。

日本は来年10月1日に消費税の増税を控えている。今回は8%から10%への2%の引き上げと前回より上げ幅が小さいが、それでも慎重に対応していくことが重要であることに変わりはない。

政府は前回の消費税増税が、せっかくデフレ脱却に向かっていた景気の足を大きく引っ張ったという批判が多かったことに鑑みて、今回はプレミアム商品券や省エネ住宅購入へのポイント還元など、様々な衝撃緩和策を繰り出して国民の批判を和らげようとしている。

その政策対応の意図は、コルベールでなくても理解できるが、今回の増税対策のラインナップを見ると効果が少ないだけでなく、むしろ国民の反発を招いて逆効果になりそうなものもある。

その一つが、中小の店でのキャッシュレス決済に対して、政府が5%のポイント還元をするという措置だ。マスコミでもよく報じられているが、消費者から見てどの店が、そしてどのカードがポイント還元をしてくれるものか、現状では分かりづらく、適切な施策を講じないと消費者は大きな不満を持つこととなる。

また、これもよくマスコミで言われていることだが、地方ではクレジットカードの使える店が少ないため、ポイント還元を受けたいと思ってもそれができず、大都市の住民との間で不公平が生じるという問題もある。

さらに、この施策が中小の店でのキャッシュレス支払いのみを対象としていて、大規模スーパーやドラッグストア―などは対象外とすることから公正な競争という点でも問題がある。実際、今月20日、日本チェーンストア協会、日本スーパーマーケット協会、日本チェーンドラッグストア協会の流通3団体が、政府のポイント還元策が消費者の利便性と公正な競争の確保といった観点から強い懸念があるという内容の書簡を経産大臣宛に郵送している。

しかし、こうした問題以上に、大きな懸念材料と思われるのが、政府のポイント還元用の予算が、すぐに底をつく可能性があることだ。政府は来年10月以降東京オリンピックまで9か月間のポイント還元のために約2800億円の資金を来年度予算に計上したと報じられているが、クレジットカードだけで年間60兆円以上、1日では1600億円以上の決済が行われている市場規模からすれば、中小の店(小売店、飲食店、宿泊施設等、多岐にわたる)でのキャッシュレス決済だけにポイントを付与するといっても、ごく短期間のうちに予算を使い果たしてしまう懸念がある。

先日のPayPayの20%ポイント還元キャンペーンでは、100億円相当のポイント原資が10日間で底をついた。今回の措置でも、例えば、中小の電気屋に行って10万円の冷蔵庫をクレジットカードで買えば、クレジットカードの本来のポイントが5%だとすると、政府還元ポイント5%との合計10%、すなわち1万円相当のポイント還元を受けられるのだから、消費者が殺到しないだろうか。

もしそうした事態が生じた場合、政府が追加で予算を付けることはなかなかできないし、たとえ追加で予算が付いたとしても、またすぐに蒸発してしまうだろう。

仮にそうした事態が生じると、消費者がありがたみを感じる期間はほんの一時となってしまい、後にはむしろ消費者の不完全燃焼感が残るだけになるだろう。

心配は尽きない。

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有地 浩
株式会社日本決済情報センター顧問、人間経済科学研究所 代表パートナー(財務省OB)

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