新年に放送されるテレビ番組の収録で、これからの日本にとっての最大の課題は何かと聞かれて、「欧米を中心とする世界から日本は中国と違って自分たちと価値観を共通する文明国だと評価され続けること」「それを国粋主義的に欲を出して中国のほうがベターだと思われたのが太平洋戦争の敗戦だ」といっておいた。
このところ、左翼的な人でないのに、欧米と対抗して日本の独自性を守ることに快感を求めて、あとさきを考えない人が多すぎる。
ゴーン事件では、検察を使って外国人取締役を二人も超法規的に捕まえて、その間にクーデターを起こして、多数派の外国系株主を追い出して、企業の主導権を取り戻すことが、あたかも素晴らしいことのように盛り上がっているそれなりの社会的地位の人が多いのに、愕然としている。
この欧米に挑戦して彼らの正義と思う者を打ち砕いてやれという誘惑は、戦前の日本人がとりつかれて大怪我をしたのと同じだ。
ただ、あのときよりはるかに質が悪い。戦前の国粋主義は欧米の植民地主義からのアジア諸国の解放を願うといういちおうまっとうな大義名分があった。
また、そういう役割を果たせるのが日本しかないのも、いちおう、真実だった。そして、軍事力でも経済力でも、その新しいアジアで主導権をとれることは夢ではなかった。
しかし、現在はどうなのか。いま、アジアではアメリカと中国が覇権を争っている。そのときに、中国と一緒に反欧米でタッグを組むというほどの覚悟があれば、それはそれでひとつの考え方だ。
いまや中国は日本の2倍を超す経済力を誇り、先端技術でもひけをとらないし、軍事力では日本をはるかにしのぐ。世界外交の場での力も、いまはたまたま安倍首相という傑出した指導者の力で健闘しているのは確かだが、基本的には到底適わない。
しかし、その中国は世界でもっとも民主主義や人権がないがしろにされている国だ。そういうなかで、保守国粋主義者は中国の腰巾着になって民主主義陣営と戦うつもりなのだろうか。
中国の繁栄が一世紀後に続いているかどうかは分からない。それでも、あと何十年かは続くだろう。そのなかで、中国が欧米的な価値観に対抗して戦う走狗となりたい、あるいは、欧米が現実的対応で中国と妥協してつくる世界秩序の受け身のプレイヤーに保守派の国主義者はなる覚悟があるのだろうか。
【おしらせ】八幡さんが1月2日、BS朝日「新春討論 4時間スペシャル いま、日本を考える2019」に出演します。詳しくは番組サイトで。