町田総合高校の暴力事案:体罰禁止で終わらせないために

2019年01月21日 06:00

こんにちは、東京都議会議員(町田市選出) おくざわ高広です。

先日SNSで拡散し、ニュースにもなりました「町田総合高校の暴力事案」について書きます。

都立町田総合高校で教員が体罰 ネットで動画拡散(2019.1.18産経新聞)

東京都町田市の都立町田総合高校で、生活指導担当の50代の男性教諭が、高校1年の男子生徒(16)の顔を殴るなどの体罰を加えていたことが18日、都教育委員会への取材で分かった。暴行の場面を撮影したとみられる動画が無料動画サイト「ユーチューブ」に投稿され会員制交流サイト「ツイッター」で拡散。生徒が教諭に「ツイッターで炎上させるぞ」「小さい脳みそでよく考えろよ」などの暴言を浴びせた後、教諭が暴行する様子が収められていた。都教委は処分を検討している。

拡散された動画のノーカット版がこちら。

ニュースを見て、当初は体罰事案と考えましたが、この動画をみて、生徒側からも生徒の権利を濫用した言葉の暴力があったと捉え直し、(双方の)暴力事案と書くことにいたしました。

皆さんは、どう感じましたでしょうか?
「体罰は禁止!手を挙げた時点で先生が悪い。」
「教師が体罰をふるうなどもってのほか。厳正な処分を。」
といった意見もあれば、
「親のしつけがなっていない。社会に出る前に殴ってくれた先生に感謝すべき。」
「学校のルールが守れないなら、退学にすればいい。」
「先生を守ってあげないと、これからの学校は崩壊する。」
といった意見もありました。どれも大切な意見ですが、一番大事なことは、安易な答えを出して思考停止しないことです。

現場となった都立町田総合高校(Wikipedia:編集部)

ポイント① これは、氷山の一角に過ぎない

平成29年度における児童・生徒の問題行動・不登校等の実態について(東京都教育庁)」によると、都内公立学校では、一年間に2,217件の暴力行為が発生しています。ここでいう暴力行為とは、「対教師暴力」、「生徒間暴力」、「対人暴力」、「器物損壊」が含まれ、昨年度に比べれば減少しましたが、全体として変化していないことがグラフから見て取れます。

また、「平成29年度に発生した都内公立学校における体罰の実態把握(東京都教育庁)」によると、体罰や不適切な行為を行った教師の数は減少傾向にあり、体罰については、調査を開始した平成24年度(2012年度)の182人から、平成29年度(2017年度)は22人にまで減少しています。 

加えて、もう一つ注目すべき数字をご紹介します。「平成28年度公立学校教職員の人事行政状況調査(文部科学省)」によると、東京都の教育職員のうち、精神疾患による病気休職者数は、平成24年度の466名から平成28年度には560名に急増しています。

ポイント② 社会と学校の不一致

学校での生徒による暴力行為は変わらず、教師の体罰は減り、精神疾患で病気休職する教師が増えている、この事象から導かれる答えは、生徒(保護者)が学校に求めるものと教師(学校)が生徒に提供できるもの不一致です。

そもそも生徒が学校に通いたくて通い、先生が生徒の求める学びを提供できているなら、このような調査結果は出てきません。生徒が学校に来る意味をもてず、先生に無茶な要求を出し、先生は対応に苦慮、(以前であれば怖い体育教師のゲンコツで済ませていたが)ゲンコツに代わる対応が分からず、先生側が精神的に追い詰められていることが、この調査結果から読み取ることができます。

1998年に、脱「詰め込み教育」を図る学習指導要領の改訂(いわゆる「ゆとり教育」)が行われ、学力低下が問題となると、2011年には、脱「ゆとり教育」を図る学習指導要領の改訂が行われました。2006年度に教育基本法が改正されたものの、学校現場においては、教育の目的や目標ではなく、手段の変更に翻弄された平成だったことを窺い知ることができます。生徒の身に着けるべき能力が激しく変化する中で、先生は生徒に向き合う武器を失ったと捉えてもいいかもしれません。

教育基本法を読み直すと、生徒が「知識と教養、善悪の判断を身に着け、社会で自律していける人間に成長する」後押しをするのが、学校の存在意義というのが、私の考えです。社会で自律していくために必要な知識や教養は、皆さんのお子さんの教科書の中に入っていますでしょうか?一日中一斉授業を受け、たくさんの宿題を持ち帰ってくるお子さんに自律した心が育まれるでしょうか?本件で暴言を浴びせていた生徒や周囲で茶化していた生徒に善悪の判断は身についていたのでしょうか?考えれば考えるほど、学校が社会の求めとかい離していると思わされます。

一方、教師側はどうでしょうか。先述のように学習指導要領(手段)に翻弄され、学校という閉鎖的な環境の中で社会の変化を捉えることに苦労しているのが現実かと思います。一生懸命やっているのに、生徒や保護者から厳しい態度をつきつけられ、対抗する手段も持たず、どうすれば良いのか分からず、結果心身ともに追い込まれてしまう方も数多くいらっしゃいます。教師を守る、あるいは教師が逃げ込む場所も必要です。

ポイント③ 解決のカギは民間活用にあり

町田総合高校の暴力事案をもとに、学校の置かれている現状を述べてきました。生徒が社会でより豊かに生きていけるように成長すること、教師が追い込まれることなく生徒の成長を後押しすること、この両立には、学校のことを学校の中だけで考えないことが重要です。20日、教員支援を目的とした人材バンク機能をもつ「東京都教育財団」の創設が明らかになりました。

これは、長時間労働が問題になっている教員の働き方改革を進めるため、部活動や課外授業などの業務を代行する教員OOBや地域の高齢者らを各校に派遣するもので、全国初の組織となります。空いた時間を活用して、先生はより魅力的な学びを与える準備をしたり、生徒一人一人に向き合える時間を創れるようになるだろうということで、大きな期待が寄せられています。また、本件のような状況に陥りそうなときに第三者が介入することも可能になるかもしれません。

一方で、教職員OBや地域の高齢者では、上述のような社会と学校のかい離を埋めることはできないだろうというのが私の見解です。小中学校のときから、民間の協力を得たキャリア教育を実施し、あるいは大学と連携した多様で深い学びに触れる機会をつくるなど、子どもの知的好奇心や夢を育むことが、学校に通う意欲を強くしますし、自律心を育むことに繋がります。

また、スポーツや音楽などを教えることのできる人材は地域に沢山おり(私もその一人。野球教えたいと常々思っています)、勉強以外の学びの中で、道徳心が育まれ、また情緒の安定がもたらされるケースも多いはずです。子ども達は、生まれながらに一人一人ちがいがあります。そのちがいを力に変えていく、ダイバーシティの実現こそがこれからの日本には必要であり、学校がちがいを認め、ちがいを育み、生徒自身がその力の活かし方を学ぶことのできる環境にならなければなりません。そのためには、学校自身が多様な主体と混ざり合うことを恐れずに改革しなければならないというのが、私の考えです。

もちろん体罰を容認するわけではありませんし、生徒の態度を許すものでもありません。起きてしまったことを取り返すことはできません。しかし、起きたことから深く考察し、本質的な改善策を考え続けることで、本件に関わった生徒や先生の想いに応えていきたいと思います。


編集部より:この記事は、東京都議会議員、奥澤高広氏(町田市選出、無所属・東京みらい)のブログ2019年1月20日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおくざわ高広 公式ブログ『「聴く」から始まる「東京大改革」』をご覧ください。

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奥澤 高広
東京都議会議員(町田市選出、無所属 東京みらい)

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