少し前の日経に「公務員、60歳から賃金7割 定年延長で法案」と大きく報じられていました。賃金の話があるというこの記事は公務員も定年が延長になるという前提の話です。これは2021年に定年を61歳とし、以降3年毎に1年ずつ引き上げ2033年には65歳になる、というシナリオが背景にあります。
役所が65歳定年を確定させてくると民間企業もどうしても同調せざるを得ません。現時点で民間企業で65歳定年を採っているのは全体の16%弱程度とみられますが、この比率は一気に上昇する可能性が高いとみています。
もともと日本は定年が55歳でした。かつてある某大手企業の担当と酒席の際、「私はもうすぐ55歳の定年なんですよ。だから今後は関連会社の方でお世話になります。」とご挨拶されたのが強烈な印象でした。担当者はまだ若々しく、頭もシャープなのに55歳定年なんてありえん、と強く違和感を持ちました。さすが、その会社はその後、定年が60歳になったようですが、給与水準がガクッと落ち、第一線からはずれるというルールは今でも健在のようで55歳はジジババ扱いの境界線かもしれません。
日本で60歳定年が確定的になったのは1998年に施行された改正高年齢者雇用安定法でこれにより強制的に55歳から60歳定年への移行が進みました。それからジワリと65歳定年への段階的縛りが出てきます。2013年に施行された改正同法では「希望者全員の65歳までの雇用を義務化」としています。つまり、やる気さえあれば65歳まで働けるルールが整備され、今回は公務員にその明白なルールが適用となるのです。
高年齢まで働く理由は主に2つに分かれると思います。多くは老後生活への不安感からなるべく働き続け、蓄財したいという気持ち、もう一つは働くことが好きとかそれが生きがいだ、という方でしょうか?大手企業は押し並べて賃金カーブが50歳代から下向きになり、60歳を超えたところで6-7割に落ちるケースが多いようです。冒頭の公務員の場合ではこのままいけば賃金カーブがいびつで60になると急激なダウンを強いることになりますが、時間をかけて50歳代からスムーズなカーブに修正していくようです。
では50歳代で給与が頭打ちになり、下落していくことに働く方々からなぜ、「反対!」のボイスが出ないでしょうか?一般的モデル家庭では30-35歳ぐらいまでに結婚し、その子供達は親が55歳になる頃までに高校生から大学生となり、徐々に教育費がかからなくなることはあるでしょう。住宅ローンはまだ残っている可能性が高いですが、一般家庭のキャッシュフローは改善します。となれば、働く側からすればもう少し長くこの会社に居させてもらえるなら多少の給与ダウンは甘んじるということでしょうか。
長くなってきたのでそろそろ止めますが、これらストーリーは勤め人の方の話。自営の方の話はかなり違ってきます。国民年金では暮らせず、平均余命は伸び、医療はより進歩するとなれば何歳まで生きるか分からない世の中。働くしかないのです。また、事業が軌道に乗っている方にとっては「定年?そんなものはない」という方は珍しくありません。死ぬその日まで働く人も驚く話ではありません。
お金のために働くにしろ、生きがいのために働くにしろ、私は75歳ぐらいまでは皆さん、働けると思っています。いや、そうして健康年齢を長く保つことで国家財政にも外国人労働者の増大阻止にも優しいと言えるのかもしれません。
どうですか、もう一度、やる気を出して頑張ってみますか?
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年1月20日の記事より転載させていただきました。