矢沢永吉「私設応援団」禁止を改めて宣言 NGTも永ちゃんから学べ

常見 陽平

矢沢永吉のファンである。ライブに通うようになってから、今年で20年だ。日常的にライダースジャケットを着ているのも、キャロル時代の矢沢永吉を意識しているからである。先日、娘とスカイツリーに行った。オープンしたての時期に、矢沢永吉が歌った聖地である。ソラマチのDIESELで買ったライダースジャケットで参戦した。キャロル時代の永ちゃんを意識している。遠く及ばないが、矢沢に少しだけ近づけたような気がする。

矢沢永吉公式インスタグラムより:編集部

それはそうと、矢沢永吉が「私設応援団」禁止を改めて宣言した。ある雑誌に、A氏(仮称)が結成し総会長を務める団体に関する記事の掲載があったそうで、問い合わせが多数きたため、宣言したそうだ。公式サイトのこのエントリーを読んでほしい。

私設応援団お断りについて

この手の話については、「ファンの勝手では?」「楽しみ方は自由では?」という意見もあることだろう。ただ、私はファンを悪徳商法リスクから守るためという点と、アーチストの権利の保護という観点からこの動きを支持する。

これだけではなく、矢沢永吉はライブなどに関するルールを決め、ファンに協力を求めてきた。2000年代に入り、飲酒入場が禁止となった。特攻服での入場禁止、バラードでの永ちゃんコールの禁止、ネットオークションでの転売禁止など、ライブ鑑賞のルールを明確化してきた。「矢沢永吉のライブは怖い」「永ちゃんファンは怖い」という悪評を断つ意味もある。このあたりの取り組みについては、前出のURLにも記載されているので、ご一読頂きたい。

矢沢永吉のライブに行くと、相変わらず白い上下、革ジャン、リーゼントなどの人が散見される。ただ、以前のように「怖い」「マナーが悪い」という印象ではなくなってきた。ファン層も幅広くなったと感じる。結果として、チケットは争奪戦で、行きたくても取れない年もあるのだが。

堅苦しいことを言っているようで、結果、これはファンとアーチストを守っている。永ちゃんファンの与太話にしかなっていないようで、この視点は大切だ。消費者と労働者をいかに保護するか。この観点が企業には必要ではないか。

先日、UAゼンセン千葉支部、JP労組千葉支部の春闘に向けた集会でそれぞれ講演を行ったが(アジ演説だという説もある)、その際も「モンスター消費者」「カスタマーによるハラスメント」から労働者をいかに守るかということについて、参加者に訴えかけた。モンスター消費者に対応してしまうことは、他の消費者に対する不利益になることもある。何より労働者が疲弊するのだ。

労働者にとっても学ぶべき点が多いが、まずは芸能・スポーツ界が学ぶべきではないか。NGTの問題が話題となっているが、アーチストを守るという発想、さらにはそれが善良なファンを守るという発想が希薄だったのではないか。この場合は、アーチストの権利の話ではあるが、彼ら・彼女たちはファンに迎合しすぎてもいけないし、何より様々なリスクから守られなくてはならないのだ。

消費者、労働者を守るこの闘いの先頭にたて。闘争の大爆発をきりひらこうではないか。一億総安心労働社会の実現という旗高く、一部の企業やアイドルグループ運営者の腐敗と堕落を弾劾しつつ、闘いの戦闘的高揚のために一市民として奮闘した次第である。矢沢永吉から学び、闘う隊列を打ち固めよ。


なお、過剰なサービスレベル問題については、この本にまとめてあるので、ご一読頂きたい。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2019年1月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。