消費税還元ポイント制度はどんどん複雑怪奇になっている

2019年03月04日 06:01

消費税還元ポイントの複雑化が止まらない。そもそも消費税増税対策とキャッシュレス化促進と中小企業対策と、三つの政策目的をいっぺんにやろうと言うものだから、わけの分からないものとなって来ている。

ポイント還元率について言えば、中小企業は5%、フランチャイズチェーン店は2%、大企業は対象外とされているが、なぜこうなるのか理由がよくわからない。

このまま増税なら現場の混乱は必至か(写真AC:編集部)

消費税増税対策なら、企業規模に関わらず同じ還元率となるべきだが、中小企業対策という別の政策目的を重ねたものだから、同じものでもデパートで買うか、コンビニやホームセンターで買うか、町の商店で買うかで還元率が違う。コンビニなどの大規模チェーン店では、直営店とフランチャイズ店が混在しており、フランチャイズ店は中小企業なので2%還元を受けられ、直営店は対象外だ。

しかし、なぜ同じ中小企業でもフランチャイズ店なら2%で一般の中小企業なら5%なのか理由がわからない。さらにチェーン店網を運営する側としては、同じチェーン内で還元したりしなかったりはできないので、結局運営企業が直営店については自腹で2%還元する羽目になっている。

また、最近表面化した問題では、5%還元の対象となる中小企業の範囲がよくわからないことも問題だ。

中小企業基本法によれば、小売業なら資本金5000万円以下または常時使用する従業員の数が50人以下であれば中小企業とされている。このため、例えばヨドバシカメラのように7000億円近い売上高の企業であっても資本金が3000万円なので5%ポイント還元の恩恵を受けられることになる。このことが指摘されると急遽経産省は単純に資本金だけでは5%還元対象となるかどうかは決められないと言いだした。

しかし、そうするとかなりの企業が新たに対象外となるのではないか。例えばカルディコーヒーファームの株式会社キャメルは資本金5000万円なので現状5%還元の対象となっているが、ドトールは資本金が大きいため対象外となっている。また、書籍等販売の文教堂は資本金が大きいため対象外だが、それより売り上げがずっと大きい紀伊国屋書店は資本金が3600万円なので現状では5%還元となっている。

これらを全て一律に対象外とするのだろうか。仮に売上高で対象範囲を決めるとすると、業種によって売上高による大企業と中小企業の境目の感覚が異なるが、どこで線引きをするのだろうか。また、こうした企業間の不公平だけなく、消費者もどこへ行けば何%の還元が受けられるのか混乱することは必至だ。

さらにこれとは逆に、不振にあえいでいる地方デパートは歴史のあるものが多く、大きな資本金を持っている会社が多いことから、当然5%還元の対象外となるが、そのすぐ近くでスーパー、ドラッグストアー、コンビニなどのチェーン店が2%還元をしたら、不振の中でも競争上自腹で2%還元をせざるを得なくならないか。このあたりは地方創生担当大臣の片山さつき先生に見解をお聞きしたいものだ。

ポイント還元制度の複雑化は、これだけではない。先週の報道によれば経産省はポイント還元のほかに店頭での値引きも認めることとするそうだ。ポイントは使われずに失効する割合が結構高いため、消費者が店頭で直接値引きを受ければポイントを失効させることが無くなるメリットがあるとのことだが、もともとポイントシステムを持たないJ-デビット等をこの制度に取り込むための施策でもあるようだ。

しかしこれは旅行や買い物に使う目的でポイントやマイレージを貯めている人にしてみれば、大きなお世話であって、キャッシュレス決済をしたのでポイントがもらえると思ったら、商品の値引きになってがっかりすることになる。また、会社によっては値引き対応をするために、レジのシステムを改変する必要が出て来よう。

この他に、既にマスコミ等で騒がれているが、例えば3つの商店が悪だくみをして、同じ商品をぐるぐると3者間で売買すれば、無限にポイントを取得できるという不正が懸念される。これに対して政府は、しかるべき不正対策を取ると言っているが、本当にできるのだろうか。

一つのクレジットカード会社だけを使ってこの不正取引をするのであれば、あるいは不正を発見できるかもしれない。しかしこれが3つの商店がそれぞれ別々のクレジットカード会社を使った場合、クレジットカード会社間でそこまで細かく情報連携してチェックができるだろうか。もっと言えば、不正な取引を行うA商店はクレジットカード決済、B商店はQRコード決済、C商店はJ-デビット決済をした場合、これらの間の情報連携はまずできない。

消費税還元ポイント制度は、次々に現れるほころびにパッチを当てることを繰り返して制度がどんどん複雑化して来ているが、まだまだこれからも穴が開いていることが見つかる可能性は高いのではないか。

有地 浩(ありち ひろし)株式会社日本決済情報センター顧問、人間経済科学研究所 代表パートナー(財務省OB)
岡山県倉敷市出身。東京大学法学部を経て1975年大蔵省(現、財務省)入省。その後、官費留学生としてフランス国立行政学院(ENA)留学。財務省大臣官房審議官、世界銀行グループの国際金融公社東京駐在特別代表などを歴任し、2008年退官。 輸出入・港湾関連情報処理センター株式会社専務取締役、株式会社日本決済情報センター代表取締役社長を経て、2018年6月より同社顧問。著書に「フランス人の流儀」(大修館)(共著)。人間経済科学研究所サイト

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