半歩前進した、政府調達での情報アクセシビリティ対応

総務省と厚生労働省が共宰する「デジタル活用共生社会創造会議」の下に置かれた「ICTアクセシビリティ確保部会」が今日19日に最終回を迎えた。情報アクセシビリティに対応した機器・サービスの調達を政府に義務付けるべきと僕は主張してきたが、最終報告にこの意見が反映された。

企業等が開発する機器・サービスが法令や標準に規定される情報アクセシビリティ基準を満たしているかどうかを自己申告する仕組みを導入する、という方針が打ち出された点が最終報告のポイントである。

米国では情報アクセシビリティに対応している機器・サービスの調達を連邦政府に義務付けている。各企業は自社の機器・サービスがどのように対応しているかをVPAT(Voluntary Product Accessibility Template)という書式上に記載し、それを公開している。これにならって日本版VPATを作成するという方針が出た。

米国連邦政府は調達の際にVPATを利用している。各府省は「デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン」に基づいて政府情報システムを調達しているが、今後は調達の際に日本版VPATを活用するという方針も書き込まれた。

日本版VPATの作成にはJBMIA(ビジネス機械・情報システム産業協会)、JEITA(電子情報技術産業協会)、JISA(情報サービス産業協会)、CIAJ(情報通信ネットワーク産業協会)といった業界団体の協力が欠かせない。そのためには、まずは経済産業省の賛同を得る必要がある。上記ガイドラインは内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室の所掌であり、改正には各府省の同意が必要になる。

最終報告の内容は総務省と厚生労働省だけでは実現できず、他府省の理解と協力を得なければならない。それゆえ、最終報告は日本版VPATについては「導入」となっているが、ガイドラインは「政府全体として取り組むことを提言」という弱い書き振りになっている。日本版VPATが公共調達で活用されるようになるまでには紆余曲折があるだろうが、この仕組みが最終報告に書き込まれたことは半歩前進である。

政府はデジタルファースト法案(デジタル手続き法案)を閣議決定し、国会で審議されることになっている。この法律が施行されても、政府情報システムが情報アクセシビリティに対応していなければ、障害者・高齢者はデジタル手続きの利便を味わえない。公共調達での情報アクセシビリティ対応はデジタルファーストにとっても重要な要素であり、この契機を捉えて総務省・厚生労働省が最終報告に沿って他府省への働きかけを強めるように期待する。

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