大阪メトロ:誤訳「Sakai muscle line」はだれの責任か

山田 肇

大阪メトロ(地下鉄)の外国語サイトで堺筋線が「Sakai muscle line」と翻訳された。天下茶屋が「World Teahouse」というように他にも誤訳があり、ネットで話題を集めている。大阪メトロは外国語サイトを閉鎖し修理を進めている。

大阪メトロの日本語トップページ

最近多くつかわれるようになった自動翻訳の誤りはどうしたら防げるのだろうか。

解決策の一つとして提案されているのが「やさしい日本語」である。「やさしい日本語」は定住外国人や知的障害者など多くの人々に役立つとして、すでに横浜市や豊橋市が採用している。

横浜市のマニュアルでは「漢字にはルビを振る」ことが推奨されている。元になった大阪メトロの日本語サイトで「堺筋線」に「さかいすじせん」とルビが付いていれば、自動翻訳の際にも間違わなかったかもしれない。

しかし、これだけでは十分ではない。大阪メトロでは中国語・韓国語・タイ語でも情報提供している。日本語からこれらの言語に直接翻訳するのではなくて英語を介して翻訳した場合には、英語化での誤訳と、他の言語化する際の誤訳が積み重なる恐れがあるからだ。研究者の多くは自国語と英語の間での自動翻訳について研究しており、英語以外の言語間の自動翻訳の研究は少ないので、誤訳が積み重なる可能性は高い。

大阪メトロに推奨されるのは、「やさしい英語」でサイトを構築し、それを自動翻訳にかけて中国語・韓国語・タイ語でも情報提供するという方法である。翻訳は1回しか行われないので、誤訳が積み重なることはない。

米国には「The Plain Writing Act of 2010(平易記載法)」という法律があり、連邦政府が情報発信する際には中学生レベルの平易な英語を用いることが義務付けられている。これは、米国にはスペイン系など英語が苦手な国民もいるからである。大阪メトロも平易記載法を基準に「やさしい英語」でサイトを作るべきだ。

大阪メトロが使ったのはMicrosoftの自動翻訳である。この自動翻訳の性能の低さを批判したり、Google翻訳でも同じような誤訳が出ると笑ったりする意見もネット上にある。しかし今回の誤訳の責任は大阪メトロにある。