昨日、一時Twitterでトレンド入りまでした、フジテレビ「バイキング」で、ピエール瀧さんを扱った番組、皆さんご覧になりましたでしょうか?
今回、私たち「依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク」が提出した、
電気グルーヴ ピエール瀧氏の出演作品に対する撤収・放映及び公開自粛・撮り直し等の措置の撤回を求める要望書
が取り上げられたのですが、取材依頼があったのが、おとといの夜のことでした。
電話で取材したいとのことでOKしたのですが、内容としては「要望書の提出先から連絡はありました?」とか「主旨をお聞かせ頂けますか?」と、他のメディアから頂いたご質問とそれほど変わりなく、しかも先方も「そうですよね~」「最近特にこういういきすぎた傾向がありますよねぇ」といった相槌を打ちながら話し、その後音声録音となったので、私としては、当然のごとく「いきすぎた自粛に対し一石を投じる番組」となると思っていました。
ところが番組は完全に、「ピエール瀧の応援をするような奴らは血祭りにあげる」と言わんばかりの勢いで、徹底的に叩きまくり、しかもその叩き方の論点が完全に的はずれといった状態だったんです。
まず、私たちを「謎の市民団体」風に仕立て上げ、「この市民団体に直撃しました!」という入り方にも驚きました。
我々は市民団体というより、長年この問題に関わってきた、斎藤環先生、松本俊彦先生、森田展彰先生、信田さよ子先生といった、「日本で最も有名な」と言っても過言ではない、精神科医と公認心理士の先生も加わった専門家のネットワークです。
そして、私たちが世界的な潮流、研究データ、調査結果を踏まえたうえで、
「こういったいきすぎた自粛という名の私的な制裁は、薬物問題の軽減にはつながらず、むしろ有名人に対する見せしめで、薬物問題を抱えた人が怯え孤立化につながり、ますます相談できなくなり、問題を悪化させる」
と要望書で伝えたわけですが、
電気グルーヴ ピエール瀧氏の出演作品に対する撤収・放映及び公開自粛・撮り直し等の措置の撤回を求める要望書
意図を全く理解していないどころか、皆さん内容を読んですらいなかったようです。
会場にいらしたコメンテーターは、
・布施博さん
・森公美子さん
・薬丸裕英さん
・岩尾望さん
・横澤夏子さん
そしてMCは坂上忍さん、サブに後藤輝基さんという面々でした。
で、まずMCの坂上さんが、我々の趣旨説明を聞いたのち「説得力がない」と、バッサリ切り捨てたのち、布施博さんらコメンテーターにふったんですね。
布施博さん
一般の人で薬物やっている人と明らかに立場が違うんで、自粛することで、
『自分は社会的に抹殺されてしまうんだ』と言う風に思ったりしない。」
→いや、みんなそう思ってしまうという現実があり、実際に苦しむ当事者・家族を見ているから支援団体である我々が要望書出したんです。
森公美子さん
本当にその通り。薬物に手を出した一般の方をバイキングで取り上げたりしないので、立場が違いますよね?
→意味不明。一般人を取り上げるな!という要望など一言も申し上げておりません。
薬丸裕英さん
まず手を出すことがいけないのに、その罪をつぐなわずに更生の方にと言っているように聞こえた。
→『罪を裁くのは司法だけで良いはず』と申しており、罪を償わないなどと申し上げておりません。
岩尾望さん
薬物依存症の人を治療や社会が支えてということを訴えたいのは分かるんですけど、だからといって「あまちゃん」流して!は、なんの繋がりもない(会場から小馬鹿にした笑いあり)
→逆ですよね?社会は過去の作品に罪はない、自粛はファンの気持ちを無視しているし、オンデマンドは観たい人がお金を払って観るものなので、自粛する必要がないと言われています。
こういうことで、この活動に目を向けて欲しいと思っているんだろう。
→この後、DOMMUNEさんへのコメントで大問題になった『売名』呼ばわりがここでもありました。
横澤夏子さん
抑止力にもなっているし、手を出してしまう人は仕方ないんですよという言い方をされちゃうとあきらめ半分というか…
→抑止力になっていません。手を出す人は仕方ないとも言っていません。どんなに厳罰化してもなくすことはできないし、害しかないと言っています。
そして、もう一人番組のゲスト(?)でしょうか弁護士の清原博さんという人も含め、番組では「こう言った自粛が抑止力なっている」のオンパレードだったんですが、一体どこに「抑止力になっている」というデータがでているのでしょうか?
「民間による自粛という名の制裁が横行するようになって、薬物問題が抑止された」
そういう調査や研究がどこにあるのでしょうか?どうかその根拠を示して下さい。
昨日報道もされましたが、ここ数年これだけ厳しい自粛ムードになってきてますが大麻の検挙率増ですからね。
大麻摘発、最多3578人=昨年、中高生1.5倍増-警察庁(時事通信)
と、全く議論は要望書に即してもいないし、内容を理解してもいなかったんですね。
そこで、すぐにバイキングのスタッフさんに電話をかけ、「今日の放送は私たちの要望書がおかしい、理解できないという反対意見を取り上げる番組だったんですね?だとしたら何故昨日そう言って頂けなかったんでしょうか?」と質問したところ、「決してそういう訳では、ただタレントさんの一意見で…」とのこと。
また、「上記のうちの、薬丸さんと、岩尾さんの売名を思わせる発言については、あきらかな事実誤認なので、番組中に訂正を入れて欲しい」と伝えましたが、「協議します」と言っているうちに、結局時間切れ。
さらに「すみません、出演者が要望書の内容を理解されていたとはと思えないんですけれど、タレントさんは要望書を読まれたんですか?電話取材の全てを聞いているんですか?スタッフさんからタレントさんへのレクチャーは何分位だったのでしょうか?」という質問に対しては、要望書の全文は読んでおらず、電話取材の内容を伝えただけ、打合せの時間は、ざっと見積もって20分という答えでした。
そして「こちらの番組の意図ではなく、あくまでもタレントさん個人の発言ですので」を繰り返してこられるので、「わかりました。では番組の責任ではなく、タレントさんのコメントは自己責任と理解して良いんですね?」と聞くと、「いえ、違います。番組の責任です」と慌てて否定。一体どっちなんだ~?
「では、上記に書いたような発言、特に『抑止力になっている』という発言が繰り返されましたが、我々専門家集団の意見に真っ向反論を全員で繰り返したわけですから、その根拠を示して頂きたい」と申し上げました。
そのうち一度「上から、『感情を害してしまったのなら丁重にお詫びしろ』と言われたので、かけたんですけど…」という番組のディレクター?プロデューサー?忘れてしまいましたが電話があり、あきれ果てました。
とにかく、この「抑止力」発言を含め、同調的に取材をしながら、いざ番組本番になったら、真逆の取り上げ方をした意図は何なのか?回答が欲しいと伝えましたが、「今日中に回答する」と答えていらしたのに、回答はありませんでした。
おそらく最初から「ピエール瀧応援団全否定コーナー」という主旨だったんでしょうね。
このあとDOMMUNEさんのこと「番組出演者が全員知らない=売名行為」という、ひどい発言というか、小馬鹿にしたような態度があって、さすがに大炎上となりました。
この番組自分たちが「知らない」「理解できない」ことに対しては、全否定するという主旨の上成り立っているようですが、これでよく「ピエール瀧容疑者の作品は、スポンサーもイメージ気にするでしょうし!」なんて発言できるなぁと思いました。いやバイキングの番組スポンサーさんの意向の方を御心配された方がよろしいかと思います。
すでに「スポンサーに抗議する!」というTweetも出回ってますよ。
それにしても…
飲酒運転で逮捕された経験のある坂上忍さんと、飲んだ席で女性に大けがを負わせ訴訟になった布施博さん、古い話し持ちだして申し訳ないと思いますが、それでよくここまでコカイン使用のピエール瀧さんをこき下ろせるなぁと思うんですよね。
私の個人的見解ですけど、危険度で言ったら坂上さんと布施さんの方が上ではないかと思います。
田中 紀子 公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト