5Gの電波はプラチナバンドに空いている

池田 信夫

第5世代移動通信システム(5G)の電波割り当てについての比較審査(美人投票)の結果が出た。きょう政策カフェでその話をしたが、その結果がちょっとおもしろい。NTTドコモとKDDIが1位と2位で3.7/4.5GHz帯では2枠取ったが、ソフトバンクは最下位で1枠しか取れなかったのだ。その点数は4.7点と、楽天より少ない。

美人投票の審査結果によると、楽天の5G基地局の数がソフトバンクより多かったことが原因のようだが、こんなものは何とでも書ける。サービスを開始してから、予定より基地局を減らしても罰則はない。

3.7GHz以上の帯域で、携帯電話のサービスを展開することは困難である。既存3社は4Gと共用の端末にするだろうが、楽天は今は1.7GHz帯しかもっていない。5Gの基地局は半径100m以内に設置しなければならないので、すべてのビルの屋上に基地局を置く必要がある。大都市でしか5Gの移動通信サービスはできないだろう。

そんな高い周波数を使わなくても、今のスマホが使っているプラチナバンドと呼ばれる使いやすい帯域(電波は半径2~3km届く)が世界的に空いている。アメリカではT-Mobileが今年600MHz帯で5Gのサービスを開始する予定だ。この帯域ではITU(国際電気通信連合)の標準が決まっていないが、アメリカがデファクト標準をつくる可能性もある。

日本でも、全国でプラチナバンドが192MHz(32チャンネル)も空いているので、親局と子局が同じ周波数で放送すれば電波を区画整理できる。これは今の中継局のチャンネルを変更するだけなので、電波を取り上げる必要はない。テレビ局は今とまったく同じ放送を続けることができる。

次の図は茨城県の例で、たとえば水戸ではNHK教育(E)が13チャンネルを使っているが、隣の高萩では39チャンネルになっている。これは13チャンネルの放送波で水戸から高萩への局間伝送もやっているので、高萩でも13チャンネルで放送すると、水戸と高萩の中間の地域で干渉が起こる可能性があるためだ。

しかし局間伝送を放送波ではなく光ファイバーでやると干渉は起こらないので、図の下のように水戸と高萩は同じチャンネルで放送できる。同様に関東でも、東京スカイツリーと同じチャンネルで、すべての中継局が放送できる。これが地デジのSFNという技術だ。日本の地デジはSFNを想定してつくられたので、干渉は起こらない。

原英史氏によると、総務省も「SFNに変えるのは不可能ではない」と認めたようだが、「コストがかかる」という。これは間違いではない。放送波で局間伝送するのをやめて光ファイバーにするコストがかかるが、電波の価値に比べるとわずかなものだ。神奈川県では、すでに97%がSFNになっている。

そのコストは、この電波を新たに使う業者(携帯キャリア)に払わせればいい。地デジが始まったときのように、地デジは電波を浪費したが、この区画整理では電波が有効利用できるので、インセンティブをつけてもいい。

この配分はオークションでやることが望ましいが、美人投票でやっても結果はほとんど変わらないだろう。大事なことは配分方法より、浪費されている電波を用途変更して有効利用することだ。その最大の障害になっているのは、訳もわからず「電波を取り上げられる」と思い込んでいるテレビ業界である。