衝撃AAA逮捕!アルコールは最も被害の大きい薬物

田中 紀子

AAAリーダー浦田直也容疑者がお酒に酔っ払って、コンビニで女性を平手打ちし、逮捕されるという衝撃的な事件が起こりました。

AAA公式サイトより:編集部

AAAのファンを自認する娘など大ショックを受けていますが、スタイリッシュで、優しい恋愛ソングを歌うAAAからは想像もつかない出来事ですよね。

けれどもお酒は最も簡単に手に入り、あっという間に人格を変えてしまう「薬物」です。
日本は、違法薬物に関しては大騒ぎをしますが、アルコールという薬物の害については寛容すぎる国です。
「お酒を飲んでいた」「酒の席のことだから」「酔っていて覚えていない」と言えば、何をしても許されてしまう傾向があります。

だからと言って、私たちも「アルコールを禁止しろ!」と言っているわけではありません。
被害が大きくとも禁酒法を見れば分かる通り「禁止」は失敗に終わります。
無駄に犯罪者を増やし、暴力団など反社会的組織に力を持たせてしまうだけです。
必要なのはお酒に対する啓発や予防教育、年齢制限や飲酒ができる場所などの厳格化、支援体制の強化です。

現在の所、逮捕された浦田さんの事件は、この程度のことしか報道されていないので

「AAA」浦田直也が逮捕 酒に酔い女性に暴行疑い(日刊スポーツ)

原因がどこにあるのかまだ何とも言えないですが、浦田容疑者も「酔っていて覚えていません」と答えておられることから、典型的なお酒の事件であることがわかります。

問題なのは「そこまで酔っぱらってしまう」ということ。
今回の場合、大体以下の3つのパターンのいずれかにあてはまると推察します。

1)ビンジ飲酒だった場合

短時間の多量飲酒のことを「ビンジ飲酒」と呼ぶのですが、
お酒の事件、飲酒運転や今回のような暴力事件の多くは、
この「ビンジ飲酒」によってひきおこされます。

この「ビンジ飲酒」欧米やオーストラリアなどでは注意喚起は盛んに行われていますが、
日本ではまだこの言葉すら知られていません。

昨年、朝日新聞さんが 筑波大学の吉本尚准教授らの研究を大きく取り上げて下さっているので、
是非この記事をお読み頂きたいのですが、

短時間で多量「ビンジ飲酒」けがリスク増大 大学生調査

この研究では、
「2時間に男性なら純アルコール50グラム以上、女性なら同40グラム以上を摂取した場合」を「ビンジ飲酒」と定義しており、なんとこのビンジ飲酒を過去1年間に1回以上経験した人は、男性693人(約57%)、女性458人(約48%)というのです。
このデータだけでも、日本がどれだけ多くのアルコールリスクにさらされているか分かりますよね。

だってお酒を飲む人のおよそ半数が、記憶がなくなるほど飲んでいるんですよ。
そしてその1回が自分と他人の命取りになることがあるのです。
「ビンジ飲酒」は大きな社会問題ですので、日本でもっと啓発していく必要があります。
繰り返しになりますが、短時間で大量に飲むことは大変危険です。

2)いわゆる酒乱だった場合

お酒を飲むと、急に性格が変わる人いますよね。
会社の上司などにこういう人がいると迷惑なことこの上ないです。
私の経験上こういう人はしつこくダラダラ飲み、大声を出したり、暴れたりするので、飲食店で出入り禁止になることもしばしば。

次の日にお酒が抜けるとガラっと変わり、気の小さい礼儀正しい人に戻るので、周囲の人も「まぁまぁお酒の席だから…」と甘い対応をしてしまいますが、飲んで迷惑をかけてしまうことがわかっているなら、きっぱり止めた方がいいです。

3)アルコール依存症だった場合

浦田さんの周囲の人達、特に一緒にお仕事をされてきたメンバーの方が浦田さんのお酒のエピソード、例えば「飲んだ翌日に度々遅刻をしてきた」「昼間から飲んでいた」「仕事中にも飲んでいた」などなどをお持ちでしたら、浦田さんはアルコール依存症の可能性があります。是非とも、専門医の受診と断酒をお勧め下さい。

日本は、依存症者を「酒豪」と誤解し、むしろ豪放磊落な人のように善意に解釈している場合もあります。
また無頼派への憧れを持つ人も多くいて、逆にそういったエピソードを煽る人すらいます。

けれども、依存症は自分の命を他人の命を脅かす「病気」です。
周囲の人が気づいたなら、まず周囲の人が専門機関に相談に行ってみて下さい。
周囲の人達の対応が変われば、当事者も治療に繋がってくる可能性が高まります。

このようにアルコールは当事者だけでなく、事件や事故に頻繁に繋がっている、最も社会に悪影響を与えている「薬物」です。その上、身体に最もダメージを与えるのもアルコールで医療費の増大に繋がっています。
さらには家庭への影響、特に子供達に与える被害は深刻です。

にもかかわらず、日本は被害者のいない違法薬物の自己使用には大騒ぎをし(もちろん仕事や家庭などで迷惑をかける人はいますが、法的な被害者という意味です)、被害者がこれだけ頻出しているアルコール問題に関しては実に寛容で、平気で事件や事故を起こした人たちが再び飲むことを許しています。

お酒で暴力事件を起こし断酒したタレントさんに対し、テレビ番組で執拗にお酒を勧めてみたり、飲酒運転で逮捕歴のあるタレントさんが、今やお酒を飲みながらゲストと語り合う番組にレギュラー出演することに、ご本人たちも、制作者も、スポンサーもそして視聴者すら気がつかないのが日本です。

「禁止」と「啓発や予防教育」は全く違います。

こういった啓発や予防教育をすると、アルコールやギャンブルのファンの中には、我々依存症問題に携わる当事者家族及び支援者への攻撃へと向かう人達がいますが、それは全く真逆の行為で、未来永劫アルコールやギャンブルを安全に楽しむためにも、正しい知識啓発と予防教育は絶対に必要なものなのです。日本では圧倒的に最もリスクの高い合法薬物「アルコール」に対する啓発が足りていません。

私は、こういったアルコールの問題をおこした有名人の方は、もちろん被害者の方に対する謝罪を最優先に済ませ、その人にあった適切な治療やカウンセリングやアドバイスを受けて問題を改善し、今度は有名人の方がアルコール問題に対する啓発活動を行うべきだと思っています。それが真の意味での贖罪ではないでしょうか?

そして日本の社会もアルコール問題をおこした著名人に対して、寛容になりすぎるのも、厳罰主義になりすぎるのもやめて、ご自身のアルコール問題を正面から受け取り、啓発活動を行う人達こそ応援すべきではないでしょうか。

今回の事件をきっかけに、是非とも社会がアルコール問題に向き合って欲しいと思います。
そして、被害者の方も突然の出来事にショックを受けられていると思いますので充分なケアが行われますように。


田中 紀子 公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト