愛子天皇待望論の裏事情と皇室の重大危機

2019年04月22日 06:01

このところ愛子様を天皇にという主張があちこちから出ている。週刊新潮などが盛んに書いているし、「天皇の憂鬱」(奥野修司)は今上陛下がそういう希望をもっておられると伝聞を書いて波紋を拡げている。

宮内庁サイトより:編集部

こういう馬鹿らしい議論を放置しておくと皇室制度を危機に陥れかねないと憂慮するので、回りくどい書き方をせずに問題の本質について書きたいと思う。

そもそも、世襲の君主制度は、その支配の正統性への信頼性を維持しやすいのが長所だ。誰が君主のあとを継ぐかについて明確なルールがあるからだが、それが崩れるきっかけなりがちなのが、従来の継承ルールを反故にしてその時の君主の子孫に継承をさせようとしたときだ。

それは、君主自身によって行われることもあるが、佞臣が君主におもねるためによることが多い。しかし、これは、本質的に危険なことだ。そもそも、優れた指導者が欲しいなら、世襲による君主制などもっとも馬鹿げた制度だ。

もちろん、従来のルールによる継承者が君主の子や孫としているときは、そんなことは起きない。起きるのは、いないときだ。

そういう事態がまさに平成の世では起きた。とはいっても、旧宮家には多くの男子がいたし、そのうち北白川、朝香、竹田、東久邇の四旧宮家はこういう事態に備えるために明治天皇が皇女を降嫁させていた。さらに、東久邇宮家は昭和天皇の血も引いていた。

従来のルールからすれば、こうした男系子孫のなかから将来の皇位継承候補をみつけ、時間をかけて準備することを平成のはじめから計画すべきだった。たとえ、東宮家や秋篠宮家に男子が生まれたとしても、継承候補の不足は明らかだったからだ。

秋篠宮家が眞子様、佳子様で打ち止めかとみられ、東宮家は愛子様誕生のあと雅子妃殿下が健康を害されて望み薄になったとき、今上陛下の佞臣たちが女系天皇論を言い出した。そこでは、旧宮家等に男系男子を求める可能性はまじめに議論さえされなかった。

しかも、それだけでなく、あのときは、愛子さまの皇位継承を確定させたいと思う人たちが動いた。「皇室典範に関する有識者会議」には、小和田恆氏に近いメンバーが多かった。とくにひどかったのは、弟がいても姉優先ということにしたのだが、具体的にそれが意味を持つのは、離婚などの結果、皇太子殿下に男子が生まれた場合のみだったから用意周到だった(当時は雅子妃殿下の不調からそういう可能性も密かに取り沙汰されていた)。

ところが、奇跡的に秋篠宮家に悠仁親王が誕生した。そのとたんに、愛子様を天皇にという議論は勢いを失った。もともと女系論は今上陛下の子孫に皇位を継承させたいというだけのことだったし、男女同権的な言辞は、それを正当化するためのものに過ぎなかったからだ。

そして、むしろ、将来の皇統が受け継いでいくと予想された秋篠宮家の人気が高まり、東宮家への風当たりも強くなった。

女性宮家の創設という提案もあった。これは、悠仁様の皇位継承は前提としつつ、もし、悠仁様の先において男系が続かなかったときの備えをする意味と、公務の担い手確保、そして、悠仁天皇を姉たちが支えることを期待するもので陛下や秋篠宮様がこの案に好意的でないかと憶測する人もいる一方、東宮家の周辺はさほど熱心とも思えなかった。

そもそも、悠仁天皇に子がない場合には、継承順位の決め方にもよるが、愛子様の子孫よりは眞子さまや佳子さまの子孫が優先されることになるとみるのが普通だ。

また、三笠宮家や高円宮家を女王さまたちに継承させるという議論は注意深く排除された。

ところが、いま、再び、愛子様を天皇にという意見が勢いを増している。なぜか。それは、眞子さまと小室圭氏のいささか困った問題もあるし、秋篠宮殿下の大嘗祭についての不規則発言、佳子様の眞子様の結婚をめぐる軽率な発言への反発もある。

しかし、私のみたところ、代替わりにともなって、新しい陛下にへつらいたいという輩が蠢いているだけだ。

もっとも、新しい両陛下もはいまのところそれを望んでおられないように見える。それを望んでいるのでないかといわれた小和田夫妻も高齢のために皇室の問題に希望をのべる状況ではなくなっている(小和田氏の影響力が小さくなったことで東宮家へのネガティブな評価の原因が除去されたのは事実だ)。

私はもういい加減に、その時々の陛下や皇族、姻戚に諂うために皇位継承を論じるのは止めて欲しいと思う。日本にとって大事なのは、その時々の陛下や皇族でなく、長い伝統をしっかり守り日本の独立と統一の象徴としてふさわしい皇室なのである。

そのときどきの天皇や皇族を喜ばすことが皇室を大事にすることでは断固ない。

そして、これから悠仁殿下の帝王教育も妃さがしも論じなければならない。それについては、また、論じるが、これは国家的な問題であるということをはっきりさせておきたいと思う。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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