薬局はいらない

井上 晃宏

先日、家庭に往診して、処方箋を交付し、「これを薬局に持っていって、医薬品を買ってください」と言ったが、家族は何のことだかわからないようだった。

写真AC:編集部

薬は医師が渡すものだと思っている。

患者とその家族は、これまでずっと病院内薬局や診療所で薬を渡されてきた。自宅まで往診に来た医師が、薬を渡さず、処方箋という紙切れだけを置いて帰るとは、何と不親切なことだと思っただろう。

患者や家族の無知を笑うことはできない。往診や外来で直接薬を渡さない、医薬分業制度の方がおかしいのだ。

外来患者に薬を渡さず、処方箋だけを渡して、外部の薬局で薬を買わせる、いわゆる「医薬分業」制度は、最近30年ほどで急速に普及したが、コストを削減するものでもなければ、医療水準を上げるものでもない。

小規模薬局が乱立する今の医薬分業体制は、昔の個人商店が立ち並ぶ商店街のようなものだ。

私の体験でも、外来で処方された薬が最寄りの薬局になく、宅配便で後から届くということがあった。医薬品在庫は小規模薬局に分散されているので、近所の病院や診療所に対応する在庫しか置くことができない。少し離れた病院や診療所から処方箋がくると、すぐに在庫切れになる。

要処方箋医薬品も、ネット販売を認めるべきだ。

Amazonのウェブで、医師が発注すれば、患者宅に即日か、悪くても翌日には届くだろう。集中在庫だから、在庫切れはほとんどない。医薬品の自己負担金は、診療報酬の一部として、外来受診時に、一緒に請求すればいい。

薬局は、かつての個人商店と同様に消滅する。

井上 晃宏(医師、薬剤師)