裁判所が検察当局の言いなりになっていないことが確認できたのは、よかった。
これで、検察当局の捜査の在り方も大分変ってくると思う。
裁判所が検察の捜査を厳しくチェックするはずだ、という意識が広く共有されるようになれば、検察は、自分たちの捜査は本当に適正か、と自分たちの捜査の在り方を見直すようになる。
裁判所の令状審査が甘かったから、逮捕令状や勾留許可状の発布が安易に行われ易かった、という側面がないではなかった。
日産ゴーン氏の事件は、検察の実務を大きく変えそうである。
多分、特捜も変わる。
裁判所が、日産とゴーン氏、ケリー氏の公判を分離しないことにしたのは結構なことである。
刑事手続きの違いで日産の有罪判決だけ先に出て、ゴーン氏、ケリー氏の裁判だけ延々と続き、場合によってはゴーン氏とケリー氏については無罪の判決が出る、などといった事態は、日本の刑事裁判の信頼性を大きく損ねることになってしまうだろうから、日産とゴーン氏、ケリー氏についての判決が同時に出されるように裁判の足並みを揃えることは悪いことではない。
検察請求の各種供述証拠について、日産、ゴーン氏、ケリー氏のいずれかが不同意にした証拠は裁判所として採用しないことにした、というのは、これまでの刑事裁判手続きでは少々異例な措置のように思われるが、公正な裁判を実現する、裁判の公正さを知らしめるという趣旨では理に適っているだろう。
検察当局は、証人尋問で堂々たる立証を行うことである。
供述調書は、とかく検察官の作文でしかない、という批判がある。
供述調書だけ読むと如何にも事実が明確に証明されているような気になるが、供述者の供述と微妙にニュアンスが異なることが多い。
こんなことをやると証人尋問が延々と続き、判決がいつ下されるのか見当も付かないことになってしまうだろうが、日産の事件はそうなっても仕方がないくらいに複雑で、かつ重大な事件だろうと思う。
検察当局も弁護団も、腹を括って公判に臨まれるのがいい。
まあ、日産としては一日も早くケリをつけたいところだろうが、ゴーン氏の一連の行為について取締役等が適時適切に対処してこなかったのだから、これは仕方がない。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2019年4月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。